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068_20250206_サターンリターン

基本情報

  • 鳥飼茜さん執筆の、ヒューマンドラマ・推理サスペンスマンガ

  • 小学館「週間ビッグコミックススピリッツ」にて、2019年1月から2022年10月まで連載

  • 全10巻で完結済み

  • 賞レース

    • 2020年の第23回文化庁メディア芸術祭で審査委員会推薦作品の一つに選出

    • 2024年の第28回手塚治虫文化賞にノミネート

大まかな紹介

書けない小説家・加治理津子(かじりつこ)。
ある日、かつて最も心を許した男友達・アオイが夢に現れ、
理津子に問いかけた。

「それ ほんとうに お前の人生?」

電話の着信で目が覚めた理津子は、
アオイが自殺したことを知らされる。

昔輝いていた夢、現在の夫婦生活、大切な人の死…
目を背けていた“喪失”の人生が
動き始めるーー

【サターンリターン/土星回帰】
意味…土星の公転周期が約30年であること。
そのことから占星術では、約30年に一度、人生の大きな転機が訪れると言われる。
土星は「凶」あるいは「試練」などの象徴とされ、
この時期に人は困難な局面に立たされやすいと言われる。

導入

  • 過去回想、夜の高速を車で走ってる男女

    • 運転席の男は運転しながら薄ぼんやりと話しかける

      • なあ、お前なんかキレイな物語書いてよ。書いて。俺が生きてた証拠みたいなやつ。

    • タバコをすいつつ女性が返す

      • はあ?なにそれ急に…びっくりするやん

    • 男が返す

      • だって俺、何も残さないで死ぬから。30になる前に。

  • 教習所で合格を待つ女性、それは前のシーンで車に乗っていた女性

    • 「この人生は、私のものなのだろうか?本当にこれが人続きの『私の人生』なんだろうか?」

  • 場面はかわり、彼女の自宅

    • 「りっちゃん、教習所無事卒業おめでとー!」

    • 同居人の旦那と思しき「史くん」こと野田一史が言う

    • 「りっちゃんが免許取りたいなんて、何事かと思ったよ」

    • りっちゃんと呼ばれる彼女の名前は加治りつ子

    • 「ちょっと人生を変えたかったんだよ。」

  • 過去回想、屋上から飛び降りようとしているりつ子

    • 手をつないで、必死に止めている史くん

    • 「私は救われた」

  • 夜、トイレットペーパーを買いに行くとコンビニに出かけたりつ子

    • 編集者と思しき人から携帯に電話がかかる

      • 「ご無沙汰してすみません、やっぱり今の所私全然…はぁ、気分転換。」

  • レストランで編集者と置落ち合う

    • 榊と呼ばれる編集者は、若手を紹介する

    • 「加治先生はじめまして、小出と申します」

      • 榊いわく、異動になるので新担当に引き継ぎだそう

      • 「先生の代表作「午睡(ひるね)の国」読みました。傑作ですが、次もっと凄いの書ける人だと確信しました。」

      • 「例えばあの生っぽいキャラ、モデル居ます?先生に小説を書かせた男、アオイ!」

    • 気だるそうにりつ子が返す

      • 「アレは架空の人物です…完全に。」

      • 「次回作は先生にああいう生々しい人物描写を…」

    • 「先生は止めてください」

  • 榊がとりなす

    • 「小出は週刊誌から来たもんで、空気感が若干なじまないんですが…なかなかアレで気骨在る男なんですよ。加治さんの言葉に火をつけるんじゃないかと、期待しています」

    • 「5年かかって証明出来たんです。タダの一発屋だって。今は平凡な主婦です」

  • 史くんからスマホにメッセージが入る

    • 「あれ?教習ってまだ在るんだっけ?」

    • 「ううん、病院」

    • 「産婦人科?どうだった?」

  • 行ってないが嘘をついている

    • 電車の赤ん坊に「っるさいなぁ」と悪態をつく

  • 自宅、料理を作ったりつ子と史くんと、夕飯

    • 「お医者さんはなんて?妊娠のこと。僕も治療に参加したほうが良いんじゃ…」

    • 「ううん、生理不順直しましょうて漢方薬もらった」

  • 料理の感想を言う

    • 「トマト煮どうだった?ワインでも用意すればよかったね?」

    • 「俺は麦茶でいいよ」

  • 史くんが捨てに行ったゴミ袋をみるりつ子

    • 「ロング缶が4本…麦茶で良いよは嘘じゃん」

    • 嘘なんか別に大したことじゃない、幸せになるのに邪魔に成ったりもしない

    • と思いつつ、自身は低用量ピルをのんでいる

  • 地下倉庫からワインを取り出しコップ一杯を一気飲みするりつ子

    • ソファーに転がり、いつしか眠りに落ちる

    • 「広い4車線のどこまでも続く吊橋の上で、裸足で居る自分」という夢をみる

    • 「なか…中島?」回想で車を運転していた男だ

    • 「加治、それほんとにお前の人生?」

    • 「わからへん」りつ子は号泣している

  • スマホの振動で目覚めるりつ子、目に大量の涙を貯めている

    • 「安藤?久しぶり…てか、何こんな時間に…」

    • 「あはははは!」徐々に大音量になる笑い声

  • 史くんが起きてくる

    • 「りっちゃん、どしたのこんな朝早く大きな声で」

    • 「中島ホントに死んじゃった…あはははは」

  • 笑いながら涙するりつ子

    • 次から次へと、失い続ける。どこまで失っても、この人生は本当に。

感想

  • サスペンスや推理、ストーリーで魅せて行く「絵のある小説」みたいな作品

    • この手の作品は「どこをどう話してもネタバレ」なので、ストーリーに触れづらい…

    • 触れなきゃ良さがまったく伝えられないので、ネタバレ上等でいきます

  • 最初、難解ではあるものの、構成自体はシンプルな「推理物「サスペンスもの」だと認識して読んでた

    • それはそれで、推論や「どうたたむんやろ?」という興味でグイグイ読めた

  • 「どんでん返し」という言葉が在ると思うけれど…

    • 「どんでん返されすぎ」て、床が床かわからんようなるくらい、「最初、そう思わされてたこと」が全く信じられなくなる

    • 終盤に謎解きの帰結点と「年貢の収め時」みたいな舞台があるのだけれど

      • これを「一話から逆算して書いてた」ならとてつもない構想だし

      • 「アドリブで書いていた」なら、ひっくり返るくらい凄い

  • 登場人物がどんどん増えていく

    • それも「登場人物の主役を中心に」とかではなく「主要キャラと少し」とかどっかのだれかとちょびっとつながってる感じで出てくる

    • 折り紙の連鶴みたいな「ちょびっと触れてる」感じ

  • 「群像劇」といれば群像劇なのだろうけれど

    • 「青春群像劇」みたいなのとは違う

      • 青春群像劇は「つながりはあるが、一人でもストーリーは進行するし、裏でも時間が流れてて、描写されてない別の話も独立で成り立つ」感じがする

    • でもこの作品の「群像劇」は、必ず関係者の誰かとつながってる「二人以上の物語」であり、時にもっと集合したり同時多発的に動いてる

      • 基本、描写されてない時はない…と思うがもっかい見直すか

  • 風呂敷を広げる広げる、際限なく広げていく

    • 登場人物も際限なく増えていく

      • 終盤を意識させるところまで増え続けてたと思う

    • 終盤に一応「決着!」的な場面があるのだが

      • そっから、まだ広げる広げる

    • 結局、最後まで拡張方向で全然たたまなかったんじゃないかな?

      • だから、最後終わっても「まだまだこの人たちの日常は波乱万丈に広がり続けるんだな」と終わる悲しさを感じさせない

  • 主要な登場人物は、基本的には「何か、どこかが欠けている」

    • 主人公とその旦那は「騙しあいの如く嘘つきあってる」し

    • 脅して弱み握って、異性を食い物にして生きてるヤツもいるし

    • 円満に見えてた夫婦は仮面だし

    • ある親は露骨にお子に差をつけて贔屓しているし

    • ある子は贔屓してくる親や、その不満をにじませてる姉に、うんざりしてるし

    • 「欠けてる」「歪んでる」者たちが、その互いの「欠損・歪み点」を接点につながっていく

    • 「弱点を補う」とかではなく「それ(弱点)を接点にして繋がりを構築していく」

  • この話、導入も謎といてる最中も最後も「自分が不幸だと思ってる人々」へのヒントやエールなんじゃないかな?と思い始めた

    • 最後らへんまで読んでふと「あ、そうなんかも?」と思った

総評

  • 「絵がついた推理・サスペンス小説」のような骨太なストーリーを読みたい人におすすめ

  • 自身が「不幸だ」と思ってる人が「自分の立っている位置」を確認するにもおすすめ


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