057_20240718_スキップとローファー
基本情報
高松美咲(たかまつみさき)先生執筆の、学園コメディマンガ
講談社「月間アフタヌーン」で2018年8月から連載中
既刊10巻
メディア展開
アニメ
TOKYO MX系で2023年4月〜6月、全12話
大まかな紹介
岩倉美津未、今日から東京の高校生!
入学を機に地方から上京した彼女は、勉強こそできるものの、
過疎地育ちゆえに同世代コミュ経験がとぼしい。
そのうえちょっと天然で、慣れない都会の高校はなかなかムズカシイ!
だけど、そんな「みつみちゃん」のまっすぐでまっしろな存在感が、
本人も気づかないうちにクラスメイトたちをハッピーにしていくのです!
導入
「岩倉美津未(みつみ)、15歳。今日から東京の高校生です。石川県のはじっこのほうから来ました」
駅、叔父さんの「ナオちゃん」が東京での保護者
心配するナオちゃんに、みつみは言う
「大丈夫。予感がするの…今日はきっと完璧な1日になる…」
今日だけじゃない、この高校生活一度だって失敗しない
なぜなら私には明確な人生設計があるから!
T大で法学部主席卒業、総務省へ入省、過疎対策に貢献、定年後は地元で市長、死んだら海洋散骨
この3年間は夢の土俵に立つ学力を身につけるためにある!
場面変わって駅、淡い髪色の美男子が携帯で通話してる
電話の相手「もう始まっちゃったぞ入学式」
落ち込んでる制服の女の子を見つける
彼、志摩聡介はその女の子に声をかける「大丈夫ですか?」
みつみは駅で迷って通勤ラッシュにあい人酔いしていた
美男子に声をかけられる「大丈夫ですか?」
同世代の知らない人としゃべるの、何年ぶりだろう?
「学校はどうやって行くのですか?」
一緒に行くことにして電車に乗る
この世の終わりみたいな顔してるみつみに聡介は言う「たかが入学式じゃん?」
みつみは言う「それはあなたにとってでしょ」
駅に着く二人
みつみは「親切な人に八つ当たりしてしまった」と自己嫌悪
聡介は「走る?一本道だから頑張ろう」
みつみはコケたが、その後ローファーを脱いで裸足で走り出す
入学式に着くが、主席なので代表スピーチをする予定になっていた
原稿がかばんの中だが、暗記で完璧に挨拶をこなす
が、その後先生に向けて嘔吐
「吐いた人」と認識されつつ、クラスへ
誰からも声掛けられないみつみに、志摩が声をかける「同じクラスだね、岩倉さんオレたち友達になろうよ」
イケメン目当てに、みつみに声を掛けてくる女子も現れる
二人それぞれが一日を終え、別々の場所から同じ空を見上げて思う
「やっぱ楽しまなくちゃ、高校生活」
感想
自分の耳目に届いた、ということは(前から悔しがってるように)「もう世の中で流行りが一周回ってここへ来た」ということなので…
なにか「売れてる理由があるのだろう」と考える
どーしても、他作品との比較になってしまうのだけれど
第一印象としては「君にとどかない」もしくは「君にもう届いてる」だと思った
あのマンガの「主人公が容姿淡麗でなく、人格者でもないケース」を想像した
特に主人公が「その女子だけは古谷実の画風」っていう、作画からして違うw
ジョジョとはまた違った方向の、「人間讃歌」…な気もしなくもない
「人は、容姿淡麗で産まれなくとも聖人君子のような人格者でなくても、自分の意思と気づきと他者の気持ちの機微を大事にしていれば、人が魅力に気づいてくれるよ」という希望のマンガ、だと思うのです
と、言う風に「他作品との類似性と差異」でしかこのマンガに対しての評価の言葉を出せなくなってたので
「いかんいかん」と、自分の感覚と言葉で人におすすめ出来るように、再度考えながら読んだ
少女漫画において「主人公たちがピュアでまっすぐで純粋…だから名作!」みたいなステロタイプ…と違う方向でも名作・感動作は作れるんだぜ?な作品なんかなと
登場人物達は、自分の弱い部分、容姿の美醜、そして他人にどう思われそうか…そういうのは自覚的に認知している
わからないのは「実際に相手はどう思ってるか」だけ
実際の15〜16歳だって、多くはそうだと思う
無自覚=ピュアだから美しい!とは限らない
もっと大人で、色々考えてて、アホではない(し、自分たちもそうだったのでは)
そんな現実的な人格で、他者の影響を受けやすくとも「まっすぐ」や「人間的に魅力的」は両立できる、ということ
主人公なんかは「柔軟に人の言うことに影響受ける、でもまっすぐ」な典型
自分を偽らないことが魅力であり、それが「良いな」と思う人々が集まり、それを良いなと言うとりまきがまた…という良い方向のループ
ルッキズムの功罪と、その価値観に対するアンチテーゼっぽいものも
だから、掲載誌がアフタヌーンで、ヒロインの顔が古谷実画風である必要があったのかもしれない
そういう意味では、アニメのCV:黒澤ともよも可愛すぎるかもしれない(偏見)
そんな主人公たちが、恋愛に対しては無自覚的であるのが、これまたリアル…とも感じなくもない
例えばヒロイン
自分の恋心に気づいた際のリアクションとして、「私なんかが…」な卑下や「思っても観なかった」な別世界の出来事認識…というわけでなく、「もしかしてワンチャンある?いやいや、それは都合よく考えすぎやろw」みたいに、現実的かつ明るく照れてたり
例えばヒーロー
容姿が良く人当たりも巧みで「モテる」「一軍」の自覚があり、相手を傷つけず遠ざけるためあしらうのはお手の物…であるのに自分の恋心に気づいた際のリアクションとして「えっ、アレっ?」みたいにキョドったり
その他のキャラも、微妙なリアルさを感じてしまう
自身が美人でモテてしまうことを自覚していて、自分という人格への興味は無いくせにすーぐ告白されて恋愛事になってしまうことを憂いている女子とか
なんかタイムリーに心理系YouTuberの動画でそんなん観た(例は29歳だったけど)
自分はスクールカーストの一軍で居たくて、ハイレベル男子に近づきたいと思ってるが、そういう「自分の打算さ」にも気づいていて、板挟みな自己嫌悪になってる女子とか
基本的に自認は「美人ではない」で、でも期せずチャンスが訪れて、自分なりの最大努力をしてみて、デートして楽しかったけど、相手が無邪気に「君は恋愛対象じゃない」的な言動して「あ、頑張ったけどここまでだわ」って思ってしまう女子とか
この話が一番自分の心に堪えた、ちょっとしばらく立てなかった…
「青年マンガのテイストを入れた少女漫画」というか、そういう中間的な作品なのかなと
「背中にバラ背負った耽美かつ青春なマンガ」を期待する人には、そういう爽快感やさわやかさは無い分「現実的だな」と感じるだろうし
「大人の心理戦や人の業を描くマンガ」を期待する人には、心理描写はあるものの登場人物の若さによる荒削りさを感じて「青春だな」と感じるだろうし
ただ「登場人物の一人でも体験や心理が重なる部分があった」という、通り過ぎた大人が読むと「身悶えするような共感」となり、それが魅力なんじゃないかなと思う
青春”だけ”ではなく、社会問題的なとこも少し踏まえている
東京で居候させてくれてるいとこのオバサンが、性自認が女性な叔父だったり
田舎の村社会だったり過疎化だったり
だから「アフタヌーンという青年誌」で連載するには理由が在り、そしてそれが人気になるのも解る…気がする
全てがキレイではなく、純粋でもなく、打算もあり、愛憎渦巻いてるからこそ、主人公sの恋愛を思わず応援したくなる、そんな作品かもしれない
総評
「美男美女がバラ背負ってないし感動巨編でもない、それでいて少女漫画の初々しい恋」みたいなんが読みたい人にはおすすめ
「心が少年少女に戻る」というトリップじゃなく「今の視点で青春時代を観たい」という大人に向いているかも
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
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