062_20241017_素晴らしい世界

基本情報

  • 浅野いにおさん執筆の、連作短編集

  • 小学館「サンデーGX」で2002年から2004年まで連載

  • 全19話、全02巻で完結済み

大まかな紹介

心のどこかに不安や不満を抱える様々な登場人物たちの日常のドラマをリアルに描く…。
各回の登場人物が以降の話にほんの少しずつリンクしていく形で進んでいく、
ちょっと変わった形式の短編集。

サンデーGXサイト、一巻の紹介より抜粋。

導入

  • 小田急沿線の安アパートに住む23歳の女性、戸川ゆりこは、自堕落な生活をしていた

    • ペットのすっぽんのテポドンと一緒に

    • バイト休みで寝ており、夢を観ていた、大学時代の夢

    • バンド活動をしていたが、急に「大学をやめる」と公言する

    • 引き止められると思ったが、友人からは「まあトガさんが決めたことだから…」と皆が強いトガさんを認め、なんとなく不本意だった

  • その「トガさんは強い」「俺達はトガさんを認めてる」というのが、大学をやめる理由につながっていた

    • 男友達に頼りにされまくる

    • 「強い女」に観られるが、本当は女子ルックしたいし、白馬の王子を待っている乙女である

  • と、言うところで大きな音で起こされる

    • どうやら、となりの受験生が「うるさい」と壁蹴ってる模様

    • 水槽の音ごときで「部屋潰すぞ」と脅してくる

  • 以前、行きつけだった今は閉店したライブハウスの前で、タバコを一服、記憶に思いをはせる

    • ハリネズミのように立てたモヒカンの「堀田」という男が「一緒にプロ目指しましょうよ!」と誘ってくれていた

    • その場で借金取りに追われ、逃げていったが…

  • と思い出していると、黒髪短髪メガネでネクタイの男が声をかけてきた

    • 就職活動を始めた堀田だった

    • 「俺んちでビールでも呑みますか?」

  • トガは堀田の家に

    • SGというエレキギター「欲しがってましたよね?持ってっていいですよ」

    • 「ちょっと甘えていいですか?」押し倒されると思いきや

  • 膝枕を懇願されただけ

    • 「お母さんの匂いがする」

    • 「ヤメて!お母さんじゃないっつの!20台の女でいろいろ悩んだりもするっつの!あたしだって甘えたいのに!」

    • とかさわいでも堀田は寝るし

  • SG持って家に向かうと

    • 自宅のアパートが全焼してた

    • 「テポドンどこだ!」飼ってたすっぽんを心配する

  • 暗い水槽でつぶやくすっぽん

    • 甲羅を脱いで「トガさん。あんたを置いてくのはこころもとないが、俺は行くぜ」

    • 「人生には前に進まなきゃなんないときがある、なりふり構わず進むんだ、たとえ間違ってたっておれは 公開しないぜ?そうだろトガさん!」

  • 土手の芝生で目覚めるトガ「ナンツー夢だよ」

    • 堀田がかけつけ「良かった生きてた」

  • 泣くのが馬鹿らしくなったトガ

    • 「堀田!とりあえず頭金髪にしてこい!」「それって…」

    • 「追うよ!バンドやるんだよ!」

感想

  • 以前読んで紹介した「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」や、前から勧められてた「おやすみプンプン」らへんから、浅野いにお作品をちょこちょこつまみ食いする感じになってる

    • 期せず読み始めたこの作品が「商業での初めての連載作」というのを、昨日くらいに知った

    • サンデーGXのサイトでは「短編集」と謳ってるが、連作だし、短編は別で、1998年のデビューは代原で短編である

  • なんというか…救いはないが、捨てたもんでもない、皆の人生の物語だなと

    • 皆「ままならない日常」に、やり場のないジワっとしたくすぶる焦燥感に、あるかないかわからない出口を求めて、あがいたりくじけたりする…そんな日常のハナシの群像劇

    • 奇跡はおこらないし、劇的なドラマが展開されるわけでもないけれど、社会的な不幸なことや厄介事だけは、遠慮なく襲ってくる

      • 就職、薄給、隣人トラブル、火事全焼、いじめ、淫行、誘拐、反社と足抜け、精神疾患、薬、同世代への焦り、家庭を顧みない、親父刈り、介護、認知の無い相手への献身、事故…

      • たんたんと問題はまな板にのってくけど、こうして言葉にしてみると、かなりヴァイオレンス&ヘヴィーなテーマ群だなおと

      • それをヴァイオレンスと感じさせないくらい、Not劇的で、日常かつ身近かつ淡々と生活の一部として描かれている感じ

      • 「誰もが何かの問題を抱えていて、でも生きてる」というのが、作品のテーマなんだろうかなー?

  • 一応、SFやメルヘンもあるっちゃぁあるのだが…

    • やはりリアル世界のハナシが中心なので、「誰かの想像や思い込み」として描かれる感じ

    • カラスと話す少女や、巨大カエルと話す女性が居るが、おそらくは心象風景や思い込みや妄想を描かれてるのかもしれない

    • あと、終盤に3つくらいだけ「ファンタジー」があるのだけど…幸せになるわけでもなく、どちらかというと「不幸方向」なのは、救いがなくてこの作品を代表してるなーと

  • うまく言語化できないが…独特な読後感がある

    • 今回、三浦の感想がふわふわしていると思う

    • それは、一話完結の各話で、違う読後感があり、統一的に一意に決まる感想にまとめられないから

    • 一応「同じ町で起こってる別のハナシ」という、薄い関連性は下地なんだが

    • そんな程度では、360度全包囲違う方向へ発露する感想はまとまらない

    • あと、今回この配信のために読み直したのだけど…最後の最後に「前向きなメッセージ」が活字で書かれているのを忘れていた

      • けれど、内容をすべて読んだ上で「それが結論?」と思うような、内容と逆の願いのようなことばだった

  • 率直に言えば平坦な作品、よくいえばマンガ人生の初期のみずみずしさや荒いトコロが見えて、浅野いにおを紐解くには、必要な作品…な気が勝手にしている

総評

  • 名作を多く生んだマンガ作家の、比較的初期の作品からそのセンスやみずみずしい感性を摂取したい人に観てほしい

  • または「みんなそれぞれ問題をかかえて、でも踏ん張って生きている」という姿に愉悦ではなく元気をもらえる人にはオススメ


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