スコアを5打縮める為のフットゴルフマネジメント~試合前日の準備はなぜ必要なのか~
~その試合の成績は、前日までの準備でほぼ決まる~
皆さんは、試合前日にどんな準備をしていますか?多分ほとんどの方が、練習ラウンドは毎回欠かさずに行っていると思いますが、練習ラウンド以外にやっていることがあるかというと、特にないと答える人のほうが多いのではないでしょうか。
試合前日の準備は、何が正しくて何が間違っているかという話ではありません。今行っている準備が自分に合っていてしっくりきているということであれば、それは続けて頂くべきものです。また、最終的なゴールは、個人個人に合った準備やルーティーンを確立し、不安なく当日を迎えることであり、それが今既にできているとしたら、そのルーティーンを崩す必要もないと思います。
ただ、一方で、やればやるだけ"スコアに直結する準備"というのがあるのも事実です。また、それらの準備は当日行うことが難しく、前日までに済ませなければならないものばかりです。だからこそ、試合の成績は、前日までの準備でほぼ決まると言っても過言ではありません。
そこで今回からは、私が絶対にやったほうが良いと思う”試合前日までの準備”をご紹介していくことにします。
~私の前日準備とルーティーン~
参考までに、私の場合の試合前日のルーティーンをご紹介しましょう。全てを真似して頂く必要はありませんが、少なくとも日本代表に入る選手はみんなやっていると思って頂いて間違いありませんので、皆さんがやっている準備に足りないものがあったとしたら、是非とも取り入れてみてください。
1.練習ラウンド(前日+もう1日の計2ラウンドは行っています)
2.ヤーデージブックの作成
3.優勝スコアの予測
4.イメージトレーニング(頭の中で何度もラウンドする)
5.良く食べて、良く寝る
6.朝風呂に入る(これは当日です)
練習ラウンドは、できる限り前日に2ラウンド以上行うようにしていますが、時間的な都合で難しい場合は前日以外にももう1日練習ラウンドを行い、本番までに必ず2ラウンド以上は回れるようにしています。
5.6.については、個人的な体調管理方法として実践しているものですので、今後詳しく述べていくつもりはありませんが、1.~4.の準備については、やればやるだけスコアは良くなると思っていますので、次回以降の記事で詳しく述べさせて頂きます。
~静の時間と動の時間を有効に使う~
ところで、なぜ前日準備が大事なのでしょうか。「翌日が試合だから」という理由もあるにはあるのですが、そんな当たり前の話よりももっと大きなウェイトを占める、明確な理由があります。
フットゴルフは、その競技の特性上、自分以外の誰かがプレーしている時間が、自分がプレーする時間に比べて圧倒的に長くなります。本稿では、自分以外の誰かがプレーしている時間を”静の時間”、自分がプレーする時間を”動の時間”と呼ぶことにしますが、実際にはそれぞれどのくらいの時間になるのか、計算してみることにしましょう。
4人でラウンドする場合、国内大会においては、通常、1ラウンドあたり3時間半ほどのプレー時間がかかります。そのうち、”動の時間”は、1打あたり40秒×Par72=2,880秒(48分間)程度しかありません。ということは、必然的に、残りの3時間弱は”静の時間”ということになります。
ちなみに、ラウンド人数が増えたとしても、一人一人の”動の時間”が増えることはない(1打あたり40秒×Par72=2,880秒に変化はない)ので、5人1組でのラウンドが基本となるヨーロッパやワールドカップにおいては、”静の時間”は更に長くなります。2018年のモロッコワールドカップでは、1ラウンドあたり5時間半もの時間を要していましたが、日本で行われる第四回ワールドカップでも、”静の時間”が4時間を超える可能性は十分考えられるでしょう。
4時間という時間がどれだけ長いかは、皆さんも良くご存じのはずです。ゴールデンタイムのバラエティ番組はおおむね1時間ですし、サッカーの試合であれば2試合観戦できる時間です。これだけの長い時間を、何も考えずにただダラダラと過ごすことは、大きな損だと思いませんか?できるならば、この"静の時間"を有効に使い、1打でもスコアを縮めたいと思いませんか?
しかしながら、ほとんどのプレイヤーは、ボールを蹴ることだけに集中してしまい、”静の時間”を有効活用できていません。4時間という長い時間、何のアイディアもなく、頭を使って考え続けるというのは至難の業ですし、明確な正解もなく、それこそ暗闇の中を手探りで歩き回るような状態では脳も疲れてしまい、18ホール全てで集中力を保ち続けて完璧に回りきることなど不可能になってしまうでしょう。
だからこそ、前日準備であらゆる情報を収集し、整理し、最高の準備をした上で当日を迎え、リラックスした中で”静の時間”を過ごす必要があるわけです。
前置きが長くなりましたが、すなわち、私が行っている前日準備とは、「”静の時間”を有効活用してスコアメイクに繋げる為の準備」ということになります。
~動の時間には、プリショットルーティーンが含まれる~
ちなみに、動の時間においても、その時間のほとんどは、ボールの置き所を考えたりラインを読んだりする時間に使われる為、実際にボールを蹴る時間は、キックモーションを全て含んでもほんの数秒です。1度のキックに5秒を費やすとした場合、72打では360秒、1ラウンドで約6分ほどしかかからない計算になりますから、動の時間でさえ、約40分が”キックをする為の準備時間”と言えるでしょう。なお、この”キックをする為の準備時間”は、ゴルフ用語ではプリショットルーティーンと呼ばれ、非常に重要な動作であることが知られています。
プリショットルーティーンは、一連の動作を、同じ順序、同じ思考で進めることで、ネガティブな要素を極力排除し、集中力を極限まで高めることができる非常に重要なプロセスだと言われています。英語で表現すると、"pre-shot routine"と書きますが、その名の通りショット前のルーティーンのことを指しています。
スポーツの世界では、プレ・パフォーマンス・ルーティーンなどと言われていますが、日本では、野球のイチロー選手が右手でバットを持ち、左手で袖を触る仕草で有名になりました。彼は、テレビのインタビューで以下の様に答えています。
「ピッチャーと対戦する時に頭の中をそのことだけに集中させたいんです。それ以外のことはリセットしたい。でもベンチにいる時間、打席に向かう時間などの間に余計なことを考える自分が時々いるんですね。野球とは何にも関係ないことを考えたりする。で、そのことをあの打席の中でリセットしなければならない。そのための行為です。ピッチャーとバッターとの勝負に集中するための行為と言っていいでしょうね。」
<参照:NHKおしえて イチロー選手!「大記録はなぜ生まれたか」(2009年10月12日放送)
イチロー選手の言葉で、プリショットルーティーンの重要さが理解できたのではないでしょうか。
しかし、残念なことに、このプリショットルーティーンを意識してプレーしているフットゴルファーはほとんど見当たりません。その為、プリショットルーティーンと"静の時間"の両方で、同じ思考や準備をしている選手が数多く見受けられるのですが、プリショットルーティーンの最中は、キックを成功させることだけに集中すべきであり、余計な雑念や思考は排除するべきなのです。
つまり、まとめると、ラウンド中には、”静の時間”、”プリショットルーティーン”、”動の時間”の3つの時間があり、それぞれの時間は、それぞれの為に有効に使われなければならないということになります。”静の時間”と”プリショットルーティーン”はついつい同じことをしてしまいがちですが、時間配分や時間の使い方を意識して変えることで、より良いタイムマネジメントとスコアメイキングができるはずです。