第817話考察・拮抗を崩す
ネタバレ注意です。
中国から帰国しました(前回の記事ご参照)。さて、キングダム本誌では、秦vs韓が開始されましたね。秦は中華統一へ向けた重要な一戦であり、韓にとっては存亡を賭けた戦いです。秦は対趙を見据えて、兵士の消耗を極限まで抑えなければなりません。
秦の韓攻略戦については、以前の記事もご覧ください。
キングダム本誌で秦vs韓が開戦した場所が「英呈平原」となっていますが、そもそも秦と韓による大規模な戦闘があったかどうかは史書に残されてません。「英呈平原」もフィクションの戦場ということになります。
以前の記事に記載した通り、秦が韓を滅ぼした際には、実は大きな戦は無かったのでは?と考えています。その根拠はいくつかあるのですが、最も分かりやすいものを1つ書きたいと思います。
史書として有名な「史記(太史公書)」は前漢・武帝末期に書かれたものですが、それよりも早い武帝初期に書かれたものがあります。「趙正書」と言って、趙正(始皇帝)のことが記載されています。その中に、李斯が自らの7つの罪(七罪)を上書する内容が書かれているのですが、絶対に見逃せない内容なのです。
私は物事をシンプルに考えるタイプなので、趙正書に書かれたことをそのまま読めば、秦がどのように六国を滅ぼしていったのかを最も正しく理解できると考えています。しかも、李斯は秦が統一した時に始皇帝の右腕だったわけで、彼の発言は非常に重いです。
ここで「韓」のことをどのように書いているか。「脅韓」と書かれています。つまり、韓に対して秦は「脅」だったのです。
「脅」は、日本語でも「脅迫」「脅す」という使い方をするので、誰でも理解しやすいと思います。「自分の意に従わせようと、相手をこわがらせること」です。シンプルに解釈すると、秦は大軍を率いて韓に圧力をかけ、「韓に住む国民全てを皆殺しにするぞ!」と言ったかどうかは分かりませんが、とにかく圧倒的な兵力差・国力差を誇示して脅し、秦に服従させたと理解するのが正しい気がします。
国力や戦力差から考えても、韓の王都・新鄭攻略は「脅」で十分だったと思います。そこに至る過程で、もしかすると小競り合い的な戦は起きていたのかもしれません。キングダム本誌の展開がどうなるか分かりませんが、「英呈平原」はその小競り合い的な戦であり、ここで何かがきっかけとなって王都・新鄭は秦に無血開城する展開もあり得ます。そうでなければ、「南陽」が描かれた意味がなくなります。
韓以外についても、「魏を弱め」=魏を水攻めにして弱めた、「趙を破り」=文字通り趙を撃破した、「燕と代を伐ち」=燕と代の王を伐った、「斉と楚を平定し」=斉と楚は(暴動、反乱などを乗り越えて)平定した、と理解しています。特に楚の「平定」は、かなり意味が深いです。
以下の過去記事をご覧になった方は、この意味が理解できると思います。
今回の考察は、史書を深読みしてみました。キングダム本誌では、騰の動きが気になりますよね。たった10騎では、戦闘に加わることはないと思いますので…どうなるのでしょうね。あの小娘を連れてくるのでしょうか…
お読み頂きありがとうございました。