海のプチツーリング!の巻📚
☆巻末にツーリングMAPが付いてるよ!
【まえがき】
それまで何度も大海原への挑戦を考えて来た。
しかし、海モンは陸モンよりも費用が掛かる。
それゆえに躊躇していた感も否めない。
随分前から。
高校時代に遡る。
想いはフツフツと募っていた。
始めるのはタイミングである。
勢いも必要。
先立つものも必要。
決~めた!
【本 編】
まだ肌寒い初夏。
仲間と淡路に遊びに行った時のことである。
事前にリサーチしていたジェットスキーのお店に立ち寄りました。
めちゃくちゃ分かりにくい場所にあった、お店。
慶野松原沿線にある個人宅?海苔工場?みたいところに海の家的な建物があった。
金髪のオヤジ。
なんか怪しげな感じもする。
ガラッパチな感が満載である。
しかし、怯まない。
こんにちは。
声を掛けて近づいて行った。
海焼けした真っ黒な顔に深くシワが刻まれている。
修羅場を何度もくぐり抜けて来た面構えである。
話し掛けると気さくに返答が返って来た。
こんにちは〜。
今日は、どないされたんけー。
淡路弁丸出しやん。
ジェットスキーを乗せてもらえるのか問うてみた。
そこから、水を得た魚のように説明が始まった。
私も食い入るように聞き入った。
オタクら免許持っとんけー。
持ってんやったらレンタルで乗ってみっけー。
ジェットも販売してっからのー。
何でも夏を控えたこの時期、メーカーにも在庫が残りわずかしかないとのこと。
早く抑えないと売れてしまうと煽り立てる。
良くある営業上等トークなのか。
その日はパンフレットと見積書をいただいて帰った。
経費も入れるとハイグレードの軽自動車フル装備が買えそうな金額である。
1日寝ずに考えた末。
次の日に気に入ったジェットを抑えるための連絡を入れた。
ほなぁ、今週中に全額入金してくれるけ。
えっ、今週中。
おっと、いきなりである。
有り金をかき集めなければならない。
こうして手に入れたマリンジェットは、
YAMAHA MJ-VXR。色は、ワインレッド。
船には名前を付ける。
色々考えた結果、タルタルーガと名付けた。
イタリア語でウミガメのことである。
私に流れるイタリアの血が騒いだ。
生まれ持った細っそりした顔付きに鼻筋もスッーと通って。
もうええか。
排気量は1,800cc、3名まで乗れる。
燃料はレギュラーガソリンを満タンで70リッター頬張り、リッター3から4で滑走する。
向かい風や向かい波、流されることを考慮すると想定よりも走行距離は伸びない。
ガソリンタンクに穴が空いているかと思うぐらいに見る見る減ってゆく。
しかし、そんなことを気にしていたら遊べない。
ガソリンをベース基地まで運んでいただくと少々お高いが、涼しい顔してお支払い。
ツーリングに出る場合は2~3回は給油する。
ジェットスキーと言えば海のギャングのごとし、騒音を撒き散らし迷惑千万のイメージが強いが、私は海のツーリングを楽しむために購入を決めた。
取り敢えずは近場から慣らしていく。
南淡路の慶野松原から30分程北へ行くと、miele(ミエレ)というカフェがある。
車では淡路サンセットラインを走ると、のじまスコーラに入る分岐地点付近になる。
事前に連絡を入れておくと、海から店前(海側)に横付けし、海からお店に入れる。
他のお客さんは、コイツらどこから来んねんって顔で見られていました。
カッコイイ~って言うより結構、恥ずいです。
次は、淡路から明石大橋下を舞子に向かって滑走。
西に向かえば家近くの大蔵海岸、東に走っては神戸までプチツーリングを楽しんだ。
遠出する時は、給油ポイントを考え付近のガソリンスタンドの電話番号を調べて確認しておく。
近くに来たら電話して海辺まで運んで来ていただくのである。
なんか贅沢な遊びである。
陸からの眺めとは、また違った風景。
大型船でも味わえない水面ギリギリを跳ねるように滑走する。
メッチャクチャ気持ちええんですよこれが。
波飛沫もものともせず突き進む。
最高速度は100km/hを超える。
体感はそれ以上に感じられる。
気分爽快である。
大海原に3m程のマリンジェットで滑走する。
波間に入ると見えなくなるだろう。
でも、恐怖心は微塵も無かった。
空の時もそうだったが、怖いと思うのであればすべきではない。
私は冒険家の血が騒いでいた。
いつから冒険家になったのかしら。
まっ、ええか。
天気の良いある日のこと。
南へのプチツーリングは、社長と社長のお友達の3人で沼島を目指した。
鳴門の渦潮を突っ切ると最短距離で行けるのだが、初心者には危険なため、一旦四国を経由する。
小鳴門海峡から侵入するルートと鳴門観光汽船西側の堀越橋下から侵入するルートがある。
堀越橋ルートは、通称滝登りと言われており激流の上、小さく渦巻いている狭小幅員になっている。
前から船が来ていないことを確認し、波に合わせアクセルONで突っ切るのである。
初めは、ドキドキであったが慣れると何度も行き来して楽しんだ。
堀越橋を通過すると、どんと開けイカダ釣りをされている場所があるためスピードを落としなるべく波が立たないように通過した。
大塚倉庫や鳴門ボートレース場を背景に通り抜けて小鳴門大橋、小鳴門橋をくぐり抜け鳴門の渦潮の南側に回り込むのである。
それから淡路方面に戻る。
ホテルニューアワジプラザ淡路島を目指し淡路島に沿って沼島を目指す。
難無く快適に進んで行く。
四国を抜けると波が若干高くなる。
波間に見え隠れしていた黒い影が近づくにつれて沼島の形に変わって行く。
だいぶん近付いて来たが、見えてからが中々辿り着けないのである。
船着場の西側にある砂浜に上陸したが海開き前なので人影はなく、まるで無人島に来たようである。
海水は透明度が高く海底が見えていて、まるで中空に浮いているような感覚に襲われる。
ネッシーでも出てきそうな。
沼島なのでヌッシーか。
ここは海で湖ではないけど。
ええんかな?などと考えていた。
その日は上陸しハモ料理を堪能しベース基地に戻った。
マシンにも慣れて来ると、鳴門の渦潮を突っ切ってみたくなった。
流石に大潮の時は巻き込まれそうなので小ぶりな時間帯を見計らってチャレンジする。
何のためのチャレンジ?
巻き込まれたら洗濯機で洗われている感が味わえるのであろう。
これもまた、おつ。
やってみると難無く横切ることができた。
渦潮の波を利用してジャンプなどして楽しんだ。
四国を経由しないで鳴門を突っ切ると沼島までの時間が大幅に短縮されるため、更に遠出が出来る。
一度、店の社長に連れて行ってもらってからは、一人で何処でも走り込んでいた。
一人で遠出する方は余りおられず、怖いもの知らずと言われていた。
南淡路の慶野松原を拠点に四国、沼島、友ヶ島から和歌山へ渡り関西空港を目指して楽しんだ。
友ヶ島には第三砲跡があり上陸した時は観光客も船で訪れていた。
友ヶ島の辺りにはクルーザーやヨットが白い頬あげて楽しまれていた
私に手を振ってくれる。
それに答えて、手を振りながら走り去る私。
その時は、ソロツーリングであった。
ここまでよく来たな。
死ぬなよって、応援してくれていたのかもしれない。
ある日は、四国で楽しんだ。
いつもと違う小鳴門海峡ルートから侵入することにした。
その日は、四国の南側に抜けると旧吉野川を遡った。
突き進むと関所の水門が立ちはだかる。
開け~ゴマ~!呪文を言っても開かない。
電車の吊り輪のようなステンレス製のリングがある。
これを引き下ろすと5分くらいかけて水門が開く。
中に入ると、水門が下がる。
また前のリングを引き下ろすと水門が時間をかけて開く。
そして、やっと前に進んでゆくことができるのだ。
中々経験することは出来ないであろう。
お店の常連さんに聞いていたので自分でもやってみたくなり、一人でやって来たが何とかなるもんだ。
臆することはない。
これも経験也!
旧吉野川を進んでいくとブラックバス釣りをしている人達に出会った。
ジェットで何処まで来とんねんとでも言いたそうであったが、すんまへんなの顔をしながら突き進んだ。
帰りは吉野川からのルートでいくことにした。
同じルートを戻ると袋叩きに合わされそうな予感がした。
徳島飛行場の飛行機の離着陸を暫く堪能してからベース基地に帰還することにした。
もう一人で行けるところは行きつくした感が出てきたある日のこと。
ルアーロッドをタルタルーガにくくり付けポイントまで行きジギング釣りを楽しんだ。
お試しであったが、立て続けにヒットするも取り込み前にラインを切られてしまう。
恐らくサワラであろう。
ジクの持ち合わせが3つしかなく、全てロストしてしまった。
その日はこれで納竿とした。
翌週も懲りずに釣りを楽しむ。
欲を出し鳴門の渦潮裏まで行きたくなった。
辺りの暗礁に気を配りながら進めていたが、海藻か何か分からないものを吸い込んでしまった。
途端にタルタルーガが失速。
何か悪いものでも喰らったかのようである。
すると、どうでしょう。
ゆっくりと鳴門の渦潮の方に引き込まれている。
つぶらな瞳を大きく見開いて、よ~く見ると自分に向かって、渦潮に向かって水流が凄い勢いで波立ちながら流れ、吸い込まれていく様子がスローモーションのように見えるのでした。
タルタルーガが元気に勢い良く走り回る時には感じられなかった感覚。
前に進まずに後退りするタルタルーガ。
なんか、これはやばい状況である事を察知した!
エンジンは回っているがジェット水流が出ていない。
緊急事態発生!
ウ~ゥ~、ウ~ゥ~、ピィ~ポ~、ピィ~ポ~と頭の中でサイレンが響き渡っていた!
ここは一旦落ち着いて考える。
その間も刻々と鳴門の渦潮に引き込まれているタルタルーガ。
案その1.
タルタルーガを降りて泳いで脱出。
いやいや、もっとヤバイことになる。
案その2.
このまま、タルタルーガと一緒に海底まで付き合う。
う~む、なんだかなー。
そして、考えること、0.03秒!
そんなに早かったかな?
一世一代の大勝負!
勢いを付けてUターンしてみた。
すると、ゆるゆるのスピードではあったが、渦潮から離れることに成功した。
やったぜぃ!
ガッツポーズを繰り出す程の余裕はなかった。
緊急事態を脱出するにはパニクってはならんのです。
沈着冷静に判断するのです。
タルタルーガを岩場に係留し、潜って船底にある海水取り込み口の海藻詰まりを掃除してみた。
何度も繰り返すが、渦潮に立ち向かうスピードが得られない。
その度にUターンしチャレンジしてみたが渦潮の北側に出られない。
社長にレスキューしてもらおうと電話をした。
すると、
すんまへん。
今、重機の点検中で手が離せないと言う。
この緊急事態になんてこった。
もうちょっと頑張ってみてくれとのこと。
四国回って渦潮を回避すればとのことであるが、そこまで辿り着けないのじゃて。
何度も何度も渦潮に立ち向かう。
その度にヒヤヒヤもんでした。
吸い込んだ海藻を全て取り除かない限りスピードは出ないのであろう。
何度も、何度でもタルタルーガと立ち向かう。
タルタルーガが突然!ヌルンっと海藻を吐き出した。
するとスムーズに走りだしたのである。
タルタルーガの調子を伺う。
よ~し、ヨシ。
撫で回してやった。
タルタルーガの調子も機嫌も良くなった。
その後は難無く渦潮に吸い込まれる水流をものともせず遡って北側に這い出した。
辺りは日が暮れ始めていた。
30分ほど走り、だいぶん北上し戻って来た頃に社長からの電話が鳴る。
トラブル処理も経験だって笑ってやがった。
何事も自己責任で楽しむのである。
タルタルーガが調子良く走り出したので、気分転換にちょっと遠回りしてベース基地に戻った。
今日は、楽しめましたなーと満面の笑みで社長が迎えてくれた。
渦潮に巻き込まれていたら、日本の裏に当たるブラジルの海から顔を覗かす事になっていたであろう。
ブラジルの皆さん、こななちは~って。
クールに決めてやるぜ!
あっ、パスポート忘れた!
でも、パニクってはいけない。
おしまい
by まるまるの虫 カメさん
【あとがき】
鳴門の渦潮に巻き込まれたら一体どうなっていたであろう。
吸い込まれたまま二度と浮上してこない。
なんてね。
トラブルを体験したことで、今まで一人で遠出していたことのチャレンジに胸を撫で下ろすが、喉元過ぎれば忘れてまた出かけていた。
バカは死ななきゃ直らないとは、よく言ったものである。
えっ、ひょっとして。
私のことかしらん!
よせやい。
照れんじゃん。
毎年4月末からジェット解禁で9月末、
時には10月初旬まで楽しんでいた。
その年は夏場に台風が多数訪れたため、最高のシーズンに足が遠のいていた。
その翌年、愛艇のタルタルーガを手放すことにした。
さらばだ!我が友 タルタルーガ。
今まで寄り添ってくれて有難う!
そして、5年に渡り南淡路 慶野松原に通い続けた海旅に幕を下ろすことにした。
でっ、次は何をするか。
海を極めるためにダイビング。
う~む、これも中々高額なお遊びとなりそうな。
ということで封印していた大型バイクに手を出すことにした。
原付も乗ったことのない私が本当に乗りこなす事ができるのか。
まずは免許が取れるのかしらん。
考えるな!
まず、やってみろ!
自身を鼓舞する。
やー!
【南淡路からの海ツーリングMAP】
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