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未知の未来と既知の過去をスリルたっぷりに描く「ベター・コール・ソウル」

Netflixオリジナルドラマはどれも面白いんだけど、一番好きなのは、「ベター・コール・ソウル」です。
大ヒットドラマ「ブレイキング・バッド」のスピンオフ作品。

以下、ネタバレを含みますので、ご注意下さい。

ソウル・グッドマンは、「ブレイキング・バッド」に登場する悪徳弁護士だ。金儲けにつながるなら違法かどうかは関係ない。だが、どこか憎めないキャラで、悪い奴じゃない。

「ブレイキング・バッド」では主人公のウォルター先生共々、ドラマ終盤で窮地に立たされ、最果ての地へ身分を偽り、身を隠すことになる。

己の破滅を呪って、ソウル・グッドマンはこう叫ぶ。

「もし人生がやり直せたとして、シナモンロール屋の店長が関の山だ!」

ぼくはこの台詞が凄く印象的だった。

「ブレイキング・バッド」を怒涛の勢いで見終わった後、同じ製作陣で作られたスピンオフ作品「ベター・コール・ソウル」を見つけ、嬉々として見始めた。

冒頭、白黒の映像、レトロな音楽と共に映し出される、とあるシナモンロール屋。
一人、疲れた中年男が黙々とシナモンロールを作っている。人生の疲労を色濃く反映したような、薄くなった頭髪のアップ。

男の顔が映し出される。

ソウルだ、ソウル・グッドマンだ。
付け髭のような髭を生やし、薄くぼかしの入った眼鏡をかけているが、間違いなくソウルだ。

続いて映像はソウルの自宅と思わしき室内を映し出す。
中年男の一人暮らし。どうでもいいテレビ番組をつけっぱなしにしながら、ソウルはウィスキーのカクテルを雑に作る。
外は雪が吹雪いてる。

ソウルはいてもたってもいられなくなり、仕舞われていた箱からビデオテープを取り出す。

テープを再生すると、かつてソウル・グッドマンとして荒稼ぎしていた時のコマーシャル映像が流れる。
その映像を今にも泣き出しそうな表情で見つめるソウル。

「俺はどこで人生を間違えたんだ、一体どうしてこうなっちまったんだ?クソっ、どうすりゃいいんだ…」

という台詞が聞こえてきそうな苦悶の表情。
ボブ・オデンカークさん、本当に素晴らしい。

以上の白黒映像が突如バタッと終わり、キッチュなオープニング映像が始まり、ある貧乏弁護士ジミー・マッギルが如何に悪徳弁護士ソウル・グッドマンになっていくかが描かれます。

「ブレイキング・バッド」もそうですが、ヴィンス・ギリガン作品の素晴らしさは、全くもって無駄のない脚本です。

ドラマは二つの時勢を描いていきます。

冒頭の数分は、現在進行中の逃亡者のソウルがどうなるのかを。

ドラマ本編では、ソウルの過去、ジミー・マッギル時代が描かれます。
ジミー時代には、同じく弁護士のキムというガールフレンドがいるのですが、「ブレイキング・バッド」の時にも、キムが登場していないのを見ると、2人は破局してしまったようです。
視聴者は、その2人の関係の行く末を知りながら、彼らをハラハラドキドキしながら見守ることになります。

未知の未来と、既知の過去を、同じドラマ内にスリリングに組み込んでいるわけです。

もちろん、そんな構造の見事さを気にかける暇がないくらい登場人物達が魅力的です。

是非、連休中にお楽しみください。
止まらなくなりますよ!

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