見出し画像

初めて作品が売れたときのこと

会社勤めをしながら趣味でオートマタを作っていた頃の話。オリジナルのオートマタ作品第1号の『エクササイズ』が出来てから当分の間、どこに行くにもバッグに『エクササイズ』を忍ばせ、会う人会う人みんなに見せては感想を聞かせてもらっていました。

そんなある日のこと、おめぐが所属していた室内楽団の練習に付いて行って、メンバーの人に『エクササイズ』を披露しました。
するとそのときいた3人とも
「可愛い!!!注文する!!!」
と言ってくれたのです。
「えーっ!いいんですか〜。いや〜嬉しいです。ありがとうございます!!」
まさか、僕が作ったものを買いたいと言ってくれるだなんて!しかも3人!と興奮しながら、車で帰る途中、ふと「そう言えば、値段の話をしてなかったよね!?」と大事なことを思い出しました。

作るのに1カ月もかかったのにあまり安い値段にするのもなぁーという気もするし、だからと言って、おめぐのお友達に高い!!!と驚かれるのも嫌だしなぁ、としばらく悩みました。そして、思いつきました。『エクササイズ』を褒めてくれていた母ならいくらくらい払っても良いと思うか、電話で聞いてみることにしたのです。
「あー、あれはよく出来てたね〜!あれだったら母さん、3000円出してもいいよ!」

耳を疑いました。たったの3000円!!!聞く人を間違ったかなぁ〜。まあ、いいや。買いたいって言ってくれただけでも嬉しいし、おめぐのお友達だし、初めての注文だし、というわけで、そのときは3000円にしました。

3体とも完成して納品。とても喜んでもらえて、仕事で嫌なことがあっても、帰宅したら玄関に飾ってある『エクササイズ』のハンドルを回して気持ちをリセットしてるとか、一緒に減量を頑張っている娘にプレゼントしたとか聞かせてくれました。しかもそのうちのひとりは、あんなに安くしてもらっては悪いからと気を使って、豪華なお菓子のセットを送ってくれました。

当時は趣味で作っていたので、何日もかけて作ったものが、3000円でも困りませんでした。仕事であれば、とても成り立たない金額ですが。それからというもの、注文を受けたときにはまず、値段を確認するようになったのでした。

ただいま、ご予約受付中!
『話せば長くなる』原田和明(aptp books )

いいなと思ったら応援しよう!