さよならの代わりに、ありがとう
月城かなとさん(れいこさん)へ
私が今のように月組箱推しになったきっかけは、プレお披露目の演目・川霧の橋だった。れいこさんの演じるお役は若棟梁として一本筋の通った頼れる男でありながら、自分のことになると不器用で、荒れ狂う運命の流れにもがく場面もたくさんあった。その心の機敏さが観る側にも伝わってくる、丁寧なお芝居をされる方だというのが第一印象だった。
かと思えば、Dream Chaser!ではバチバチにカッコいい歌にダンスを繰り広げる。にっこり微笑んだかと思いきやグッと鋭い視線を向ける。そのギャップにズドンと心を打ちぬかれてしまった。
れいこさんがトップになってから演じたお役で印象に残っているのは、映画監督見習い(今夜、ロマンス劇場で)や文章生(応天の門)、中間管理職軍人(フリューゲル)など。こう並べてみるとあまりキラキラしていないようにも見える。それでもどの作品においてもれいこさんは、舞台の中心で輝いていた。それも常に一人で勝手にビカビカしているのではなく、ときには相手役の海乃美月さんや2番手の鳳月杏さんたちの輝きを上手に跳ね返して、それはそれはとても優しく舞台全体を照らしていた。まさに「月」の名にふさわしい役者さんだったと思う。
昨日のカーテンコールで、れいこさんは次期トップの鳳月お兄様と一緒に次期トップ娘役の天紫珠李さんも舞台の真ん中に呼んで紹介していた。あの光景を見たとき、「そういうとこ!そういうとこが好きになったの!!」と言わんばかりにベショベショに泣いた。いろいろな「当たり前」を打ち破って、芝居を、ショーを、月組を大切にするれいこさんに会えてよかった。
この記事のタイトル「さよならの代わりにありがとう」は退団公演の歌詞の一節だが、私からも言わせてください。
ありがとうはこっちのセリフです!!!
海乃美月さん(うみちゃん)へ
実はうみちゃんに落ちたのはれいこさんからちょっと遅れて、大劇場公演の「Full Swing!!」である。プレお披露目のときはそこまで感じなかったのに、真ん中に立ったときに輝きがすごかったのだ。
うみちゃんは「男役を引き立てる」という宝塚の娘役さんの宿命を背負いながらもそれを卒なくこなし、それでいて1人でも舞台で輝ける役者さんだった。「研ぎ澄まされた」という言葉がぴったりなプロポーションから繰り広げられる目先・手先・足先の運びも観る度に惚れ惚れしていたし、なにより評判のスカート捌きはマジで人間国宝ものだと思っている。それとこんなことを言ったら烏滸がましいかもしれないが、舞台を重ねる度にお歌がめちゃめちゃ上手になっていった。難曲ばかりのDeath Takes a Holidayで美声を響かせるうみちゃんを観たときには腰が抜けた。トップ娘役になっても奢ることなく努力を重ねる姿を見続けていて、うみちゃんは私にとって単なる「推し」ではなく1人の女性として尊敬する人になっていった。
お芝居もストンと舞台の世界観に落とし込める方だったから、れいこさんと同様に宝塚ではちょっと変化球の役;役職付の軍人(ブラックジャック)、謎の女主人(応天の門)、わがままスーパーアイドル(フリューゲル)などもできたのだと思う。特に応天の門とフリューゲルは、れいこさんとうみちゃんでないと成立しなかった作品だろう。
昨日のさよならショーでは、うみちゃんが真ん中に立ち月組の皆さんを引き連れる場面があった(しかも2曲!)。うみちゃんの「ついてこい!」と言わんばかりにバチバチと煌めく姿と、うみちゃんを心から信じて付いていく月組の皆さんの姿に当てられたらもう…ね…こっちも悔いはなくなりますわ。
うみちゃんのおかげで他の娘役さんたちも大好きになったし、私自身のことも好きにならなきゃな、と思えるようになった。感謝してもしつくせない。
月組公演・大千秋楽を観た
というわけで友会がチケットを当ててくれて、月城かなとさん・海乃美月さんの退団公演・大千秋楽を東京で観劇することができた。席は2階席の端っこだったけれど、まさか劇場でお二人と今回ご卒業される方々を見送ることができるとは想像していなかった。チケット実在したんですね。
先ほど書いたとおり、サヨナラショーもカーテンコールも、れいこさん&うみちゃんらしさがひしひしと伝わる温かな時間だった。観た後立ち直れないんじゃないかと思ったが、寂しくはあるものの思いのほか受け止めきれている自分がいる。何度も言うが、れいこさん・うみちゃん率いる月組に出会えて本当に私は幸せだった。そして鳳月お兄様・じゅりちゃんが率いる新しい月組も、変わらず「箱推し」していくだろう。
れいこさん、うみちゃん、見つけ「させて」くれて、本当にありがとうございました。これから幸多からんことを心から祈っています。そして願うならば、また舞台でお会いできたら嬉しいです。
おまけ
今回奇跡的に大千秋楽のチケットを当てた芳田だが、その後全くチケットが取れなくなってしまった。次の月組さんのチケットは両方(全ツ・東上)すっからかん。宝塚はおろか、地元で開催するほかの舞台やコンサートのチケットも取れない。ネフェルピトーを倒す代わりに念能力が使えなくなったゴンよろしく、「チケット運を使い果たした」状態なのかもしれない。
いや…それは困るな…?せめて新生月組のお披露目公演は頼むぜ…?
お芝居とショーも最高だったので後日記事書きます 芳田