desperatus|散文
音はその人を裸にする
音を奏でると
その人の本質が手に取る様に分かる
柔らかくヴェールの様に美しく
繊細な音を奏でる子は
いつも先生に反抗してた
とても可愛く容姿も頭脳にも恵まれていた
なのに彼女の影はいつも少し寂しそうで
強がっているように見えた
彼女のトランペットの音を初めて聴いた時
私は自分のペットから口を離した
思わず聴き入ってしまった程
ああ…そうか この子もまた…
一瞬影の正体が見えた
私は下手でペットを吹く事も嫌いだった
私の音はやっぱり私だった
時々目を惹く人
それは容姿だったり
内面から滲み出るものだったり
仕草だったり
いずれにせよ
私がコンプレックスに思っているものが
とても洗練された人
一抹の悲しみと強い憧憬に
私はしばし目が離せない
私があんな風だったら
今頃どんなだったろう
自慢の娘、妹、姉で居られたかな
お気に入りのリュックに留まる
赤い鳥 胸の白い十字架をなぞる
ひんやりとした感触は何も答えない
私以外で構成された家族なら
きっと完璧
私という存在が歪にさせる
今日も一つ増えた深い傷を
烏がつつく
私は無力に痛みに耐える
行動した事で傷付くなら
しない方が良かった
無駄な行動をしたのは
ただの自傷行為に他ならない
私に本当の意味での家族は居ない