支える人こそ支えられていい
毎日、人のために力を尽くしている医療および介護、教育など対人援助に関わる仕事に従事されている皆さん、本当にお疲れさまです。
相手の悩みや痛みを受け止め、寄り添い続けるあなたの存在は、多くの人にとっての希望そのものです。けれども、その優しさと熱意を人に与えている一方で、自分自身の心や体の状態には気づけているでしょうか?
私は、介護職とケアマネジャーとして15年間仕事をしてきました。その中で、人の悩みを受け止め、支える仕事のやりがいとともに、悩みや葛藤を抱え込む経験も数多くしてきました。「自分が頑張らなければ」という思いが強く、助けを求めることが苦手でした。その結果、心が限界に近づいたこともありました。
その後心理学およびカウンセリングに関心をもち、勉強を始めたのですが、学びを深めていくなかで確信したことがあります。それは、支える仕事に携わる方こそ支えられるべきだということです。今回の文章をお読みいただき、同じような悩みを抱えるあなたが少しでも気持ちを軽くし、自分を大切にするきっかけを見つけていただければ幸いです。
1. 自分にも優しい眼差しを向けてみませんか?
対人援助職に従事されている方は、他者に寄り添う力にとても優れています。一方で、その優しさを自分自身に向ける時間を、どれくらい取れているかと聞かれたとき、はっきりと答えることができるでしょうか?
私自身、仕事に追われる中で、自分の気持ちや体調に目を向ける余裕がなくなることがよくありました。業務を終えて疲れていても、「これくらい普通」「もっと頑張らなくては」と思い込んでいて、自分をいたわる時間を後回しにしていました。
ほんの数分でもいいから、自分の気持ちに耳を傾ける時間を取ってみてください。
「今日はどんな気持ちだっただろう?」「何が自分にとって大変だった?」と自分自身に優しく問いかけることで、自分をいたわる第一歩が生まれます。
2. 助けを求めることもプロフェッショナルの力
対人援助職の方は、「自分が助ける側でいなければならない」という責任感から、自分の悩みを打ち明けることをためらいがちです。
私自身も、「誰かに相談することは、プロとしての自信を欠いているように見られるのではないか」と考えていました。
しかし、助けを求めることは弱さではなく、自分を大切にするための行動であり、他者に寄り添う力を養うためにも必要なステップです。誰かに話すことで気づきが得られたり、新しい視点を見つけたりできることがあります。
また、助けを求めることは自分自身だけのためではなく、これからも仕事を続けていくために大切な行動でもあります。
悩みを一人で抱え込まず、気軽に助けを求めてみてください。
3. 支える人にも「安心できる居場所」が必要です
私が介護の現場で働いていたとき、自分の思いを安心して話せる相手や居場所を持つことの大切さに気づくまでに時間がかかりました。人を支える仕事に携わる人ほど、自分が「支えられること」に対して無意識にハードルを設けてしまう傾向があります。
でも、話を聞いてくれる相手や安心して思いを吐き出せる場所を持つことは、心の安定に大きく役立ちます。疲れや葛藤を軽減し、また前を向くための力を得られるからです。同僚でも、家族でも。友人でも構いません。
もし、誰も相談できる人が思いつかないということであれば、カウンセラーなどしっかりと話を聞いてくれる専門職の力を借りるのも一つの手です。自分にとっての「安心できる居場所」を探すことを、自分に許してみませんか?
4. 無理をして走り続ける必要はありません
「立ち止まることは甘えではないか」と思う方もいらっしゃるでしょう。私自身もそう感じていました。しかし、無理をして走り続けることで、心も体も限界を超えてしまう危険があります。
そのような状態になるとどうしても他者への対応がうまくいかなくなり、感情的な余裕を欠いたり、判断力が鈍ることにもつながります。結果、相手に対して十分に寄り添うことができなくなり、自分自身にも罪悪感が生まれてしまうかもしれません。
一度立ち止まり、自分自身を見つめ直す時間を持つことは、あなた自身を守るための行動です。休息を取ることや、自分の好きなことに没頭する時間を作ることで、また新たなエネルギーが湧いてきます。立ち止まることも、次の一歩に向けた大切な準備です。
5. 悩みを分かち合う勇気を持とう
悩みを抱え込んでいた当時、「こんなことで誰かに相談していいのだろうか」と人に話すことを躊躇したり、あるいは「ちゃんとした対応ができない自分が悪い」とすべてを自分の責任として自己完結してしまうことが多々ありました。でも、どんなに小さな悩みでも、誰かに話すことで思いが整理されたり、解決の糸口が見つかったりすることがあります。
同じような思いを抱える誰かの存在を知ること、そしてその思いに共感できる言葉やメッセージに出会うことが、心を軽くするきっかけになるかもしれません。自分の中に湧き上がる気持ちに耳を傾け、小さな一歩を踏み出すことにより、あなたの見える世界は確実に変わります。
さいごに~あなたも支えられるべき存在です
「人の役に立ちたい」というあなたの優しさや努力、それはかけがえのないものです。ただし、決して忘れないでください。あなた自身も支えられていい、それどころか、むしろ支えられなければならない存在なのです。休むこと、助けを求めること、そして立ち止まることが、長期的に他者を支え続けるためには欠かせません。
私も、かつては同じように悩みを抱え込んでいましたが、さまざまな学びを深めた結果、今では「支える人が支えられることの大切さ」を強く感じています。もし今、少しでも気持ちが軽くなりそうなきっかけが見つかるなら、それを大切にしてみてください。そして、あなたのペースで、あなた自身を労わるための選択をしてみてください。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。