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バトル in 帰りの会

遥か昭和の日の夕方。
 
帰りの会」。
帰宅前に開かれる学級会のことを、通っていた小学校ではこう呼んでいた。
会の運営は生徒に任せられており、ピカピカの三菱ランサーに乗ってた温和な担任I先生はそれを静かに見守ってくれていた。
本来は翌日の予定や持参物等の確認連絡を行う場なのだろうが、我が5年1組では、女子と男子がジャブを応酬するリング(武闘場)でもあった。
 
 6時間目終業後。
男女の日直が黒板の前に立つ。
 
日直男「帰りの会を始めます。」
日直女「明日の時間割は、道徳・国語・体育・社会・図工・図工です。体操服と画板を持ってきて下さい。」
日直男「学研ポキール土曜日に集めます。」
 
日直女「ほかに何かありますか?」。
この一言が戦いの火ぶたを切る。
 
女子A「(勢いよく挙手)ハイ!きょう、K君はDさんのことを『ブス』って言いました。謝ってください。」

男子J「(同じく挙手)ハイ!そういうAさんは、俺のことを『バカ』って3回くらい言いました。謝ってください。」

女子B「今その話は関係ないと思います。あと、J君は掃除の時間にもK君と二人でホウキを使ってアイスホッケーをしてました。悪いと思います。」

男子K「でも、Bさんはそのとき雑巾を投げつけてきました。いけないと思います。」

女子B「ふざけているJ君とK君たちを止めようとしただけですぅ。」

男子L「だったら雑巾を投げても良いんですか?」
女子C「ちゃんと掃除しない男子が悪いんやろ!?」
男子L「はあ?じゃあ暴力振るってもいいとや?」
女子C「暴力とか振るっとらんやろもん?!」
男子L「雑巾投げたやろ!立派な暴力やん!」
女子A「それを言うなら人に『ブス』とかいうのも言葉の暴力やないん?」
男子J「じゃあ人に『バカ』って言うんはええの?」
女子A「それは本当のことだから仕方ないと思います。」
 
ここで、隣のクラスの面々が帰り始めた気配を察した日直。
水戸黄門の印籠を掲げる「助・格」よろしく、締めの言葉を発する。
 
日直男「皆さん、謝ってください!
 
男子J・K「すみませんでした!」(棒読み)
女子A・B「すみませんでした!」(上に同じ)
I先生「はい、皆さん気を付けて帰りましょう。」
 


 
余談だが、中学に入って、男子Lと女子Cは付き合い始めた
 

あと、一番かわいそうなのは、女子Dだと思う。

 

〈以下蛇足〉

〇リングサイドの郡司さん、採点は「10対9で赤コーナー」
口喧嘩の戦いは往々にして赤コーナー(女子)優勢のまま終わる。
ごくまれに男子から会心の一撃が放たれても、それを受けた女子が泣き出して中断。そこから糾弾という名のラッシュにさらされるので、結局のところ青コーナーに勝ち目は薄かった。

道徳の授業
昭和の小学生にとって、クラスメートと一緒に公然とテレビを見ることができる道徳の授業は楽しみのひとつだった。
シャレの利くI先生は、番組が始まるまで民放にチャンネルを合わせてくれてたので、ドリフが出てた「永谷園ふりかけ」のCMなんかが流れると大いに盛り上がった。
番組(「明るいなかま」)のテーマソングを聞くと、そんな当時の教室が蘇ってくる。
♪ けんかもしたさ なかまだもんな
♪ なかま なかま な~か~ま~
 https://www.youtube.com/watch?v=ATIwEBIQSkM

〇「土曜日
若い世代にはピンとこないと思うが、当時は土曜日も午前中だけ授業があった。帰るとき、とにかくお腹が空いてた。

〇「学研
どういう脈絡なのかは不明だが、学校で「科学と学習」の申し込みを受け付けてた記憶がある。本当に学研のおばちゃんが運んできてたのかは知らない。
 https://www.youtube.com/watch?v=hdivr0dduh8


〇「ポキール
ぎょう虫検査用のセロファンフィルムの呼称。肛門にペッタンしたブツを学校に提出する。保健委員が嫌々回収してたっけ。
そのまま検査機関に送られ、後日対象者には赤紙(投薬連絡)が来る。
尻がムズムズしている時期にポキールが配られると、背筋が冷たくなったものだ。
一度、局部を避けてペッタンしたものを提出してみたが、特にお咎めはなかった。
 

羽根付きキューピーちゃんとポキール



 



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