![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/12800801/rectangle_large_type_2_ead94c780999612af275bb51973221d1.png?width=1200)
時給4,164円?フランスの1stAC指数は+4.61
世界の撮影業界の“ギャラ”はいくら?
ビッグマック指数を応用し、撮影助手のギャラ単価から算出される「1stAC指数」をもとに、世界各国の撮影業界の仕組みを分解していく。
第5回は、フランス映像業界にひしめく組合群の中より、CNC(フランス中央映画庁)、ウェブサイトの更新頻度が高めの2団体(USPA / SPI )の資料をもとに、フランスの撮影業界を見ていきます。
CNCとは?
CNC(Centre national du cinéma et de l'image animée)は、フランスの映画・映像事業を管轄する国営の組織。ウェブサイト上に労働規約に関する情報はたくさんあるが、料金に関する記載は見つからなかった。日本では、カンヌ国際映画祭で受賞歴のある河瀬直美監督のニュースでも、最近その存在が話題に上った。
仏クリエイティブ業界の労働組合
USPA(Union Syndicale de la Production Audiovisuelle)
2010年に設立された SPFA(アニメ映画制作組合)とSPECT(テレビ放送製作技術組合)で構成される「映像製作者連盟」。ドキュメンタリー、ドラマ、イベント映像など140の制作会社が所属し、フランス国内のあらゆる映像コンテンツの85%を担当、とされている。
SPI(Syndicale des Producteurs Independants)
2004年頃に設立されたフランスのフリーランス映像クリエイター400名が所属する労働組合。
AFCとは?
世界各国の映画撮影業界には、米国のASC(American Society of Cinematographer)を模した“撮影協会”が存在する。映画のエンドロールでスタッフ名の横に記載されているアルファベット3文字がそれにあたる。
フランスの場合は「AFC(French Society of Cinematographer)」という団体。ウェブサイトの UI/UX は整っているが、表示言語はフランス語のみと、かなり内向きな仕様となっている。賃金規定や保険・福祉に関する記述はなく、労働組合としての機能はなさそうだ。
フランス経済の基本情報
まずはフランス経済に関する、数字を並べてみる。
2018年度、フランスの最低時給は€9.88(1,214円)、テレビ・ネット配信をあわせた動画の広告市場は €4,214M(5,182億円)、国産映画の興行収入は$589.5M(636億円)。
※ 広告市場は2018年度の予測値を含む
2018年度、日本の最低時給は985円(東京都)、動画の広告市場は2.1兆円、国産映画の興行収入は $1145.32M(1,236億円)。
参考までに、2019年6月時点の「世界時価総額トップ100」のフランス企業は、3社ある。ファッション・酒類『LVMH(Moët Hennessy ‐ Louis Vuitton)』、化粧品『ロレアル』、石油『Total』と、ファッション関連企業が上位を占める。
フランス撮影業界の料金 - USPA版
USPA による、2019年度の撮影スタッフの最低料金を定めた料金表。映画・テレビ・広告など撮影分野による料金の差はないようだ。
<基本料金の時給> 2019年・USPA版
撮影監督・・・€66.6(8,184円)
カメラオペレーター・・・€41.83(5,140円)
DIT・・・€37.45(4,602円)
撮影助手 1st AC・・・€35.23(4,329円)
撮影助手 2nd AC・・・€25.72(3,160円)
撮影見習い・・・€12.74(1,565円)
フォトグラファー・・・€30.81(3,786円)
DIT料金と撮影助手(1stAC)がほぼ同額となっている。1stAC の単価は 日本の1.55 - 1.88倍 にあたる。
以下、添付の資料は、フランス語の原版を英語に自動翻訳したもの。
フランス撮影業界の料金 - SPI版
SPI が定める、2019年度の撮影スタッフ料金表。
<基本料金の時給> 2019年・SPI版
撮影監督・・・€66.87(8,217円)
カメラオペレーター・・・€41.99(5,160円)
撮影助手 1st AC・・・€32.55(4,000円)
撮影助手 2nd AC・・・€25.3(3,109円)
フォトグラファー・・・€29.90(3,673円)
USPA版より少し安い水準となっている。1stAC の単価は 日本の1.43 - 1.74倍 にあたる。
以下、添付の資料は、フランス語の原版を英語に自動翻訳したもの。
フランス撮影業界の1stAC指数は"+4.61"
ビックマック指数のビックマックと同様に、映画・広告業界の“撮影助手(1stAC)”の品質は、世界中どこもあまり変わりがない。
この 1stAC 指数は、業界の“市場規模”に対する“人件費”の比率を算出することで、業界全体の健全性を計るものである。日本との関係値を見るために、基準値(= 1.00)を「2018年度の日本」としている。
計算式は以下の通り。
※ フランス 1stAC の平均賃金を4164.5円として計算
1stAC指数 = 1stACの時給 ÷ 法定最低賃金 ÷(国産映画の年間興行収入+動画広告の市場規模)÷ 基準値<JPN>
2,800 ÷ 985 ÷(1,236+21,000)≒ 0.0001278 = 基準値<JPN>
4,164.5 ÷ 1,214 ÷(636+5,182)÷ JPN ≒ 4.61
2018年度の数値を入力すると、フランスの 1stAC 指数は "+4.61" 。これは日本の撮影業界に比べて、フランスの 1stAC が、経済的な見返りを“4.61倍”多く受けていることを意味する。
---------- REVIEW ----------
フランスの撮影業界にも、ウェブ上で公開された“料金表+労働規約”が存在していました。
今回の調査で感じたのは「言語の壁」。ドイツもそうですが、フランスの撮影業界に関する情報を探してみると、あまり英語のサイトがなく、Google 検索にもかなりの時間を要しました。これは日本もしかり、その観点で見ると、業界全体としてやるべき事はまだまだありそうです。
最後に今回の調査に関して、来日中のフランス人アート・ディレクターの協力を仰いだのですが、日本で仕事探し中とのことなので、興味のある方はコメントをいただけると助かります。
---------- NEXT ----------
---------- ARCHIVE ----------
---------- SOURCE ----------