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1. 序論:音そのものおよび音律についての知識(後半)

この記事は序論(前半)からの続きです。

1.4 十二平均律

もし、「1オクターブ上げる」という【操作1】を7回繰り返すことと、「完全5度上げる」という【操作2】を12回繰り返すことを、どちらも「元の音の周波数の128倍にする」という結果になるように調整しなさい、と言われたら、どう考えますか。【操作1】はそのままで128倍になりますから調整不要で、問題は【操作2】です。

$${1.5^{12}=129.75\cdots>128}$$ でしたから、1.5という数字を少しだけ小さくすればよいことになります。つまり、12乗すると128倍きっかりになるような数$${x}$$[注1]を求めなければなりません。数学的には12次方程式を解くということになり、手計算は無理なので計算過程は省略しますが、解を小数で表すと次のようになります。

$$
\begin{aligned}
x^{12}=128 (=2^7) \\
\text{すなわち} 
x\fallingdotseq1.4983\cdots
\end{aligned}
$$

この$${x(\fallingdotseq1.4983\cdots)}$$を数学的に正確に表現すると、「(2の12乗根)の7乗」ということになります。2の12乗根$${\sqrt[12]{2}}$$とは、「その数を12乗すると2になるような数」です(小数で表すと約1.059463…)。

$$
x=1.4983\cdots=(1.059463\cdots)^7 \\
x=2^{7\over12}=(\sqrt[12]{2})^7
$$

このように、【操作2】の1.5倍という部分を1.4983...倍に置き換えることによって、めでたくミ♯とファが同じ周波数となり、オクターブを12半音で「閉じる」ことに成功しました。

実は、こんにち地球上にあるピアノその他の鍵盤楽器のほとんどが、この考え方、すなわち、「完全5度上げる」を「周波数を1.4983…倍にする」と定義する考え方に基づいて調律されています。これを「十二平均律」(あるいは単に平均律)[注2]と言います。ピタゴラスの完全五度の(きっかり1.5倍というスッキリした数字から来る)純粋な響きを少しだけ犠牲にして、オクターブが12半音で収まるように辻褄を合わせる方法です。

別の言い方をすると、十二平均律では、「1半音上げる」とは、物理的には「周波数を$${\sqrt[12]{2}}$$倍する」ということになります。さらに別の表し方をすれば、半音ひとつ上がるごとに、周波数が約5.9463%ずつ高くなっていくことになります。

1.5 純正とは、音律とは

前節で、十二平均律において1オクターブを12半音で閉じることに成功して「めでたしめでたし」のように書きましたが、これは決して手放しに喜べることではありません。十二平均律が、ピタゴラスの完全5度の純粋な響きを犠牲にしたものであることを忘れてはならないのです。

ピタゴラスの完全5度が、なぜ純粋な響きを持っていたかというと、2音の周波数の比が「2:3」という極めて簡単な整数比になっていたからでした。このように、2音の周波数の比が簡単な整数比になっており、従ってこの2音を同時に鳴らしたときに美しく響く、ということを、音楽理論的に正確な表現では、「純正」であると言います。これまでピタゴラスの実験において見てきた「完全5度」は、「純正な完全5度」と表現すればよいわけです。

十二平均律は、2の12乗根という無理数に基づいていますので、そこには純正な音程というものは原則として存在しません。例外は、全く同じ音である「完全1度」と、1オクターブ違いの「完全8度」です。12半音の高さをどのように定義するとしても、「完全1度」(1:1)と「完全8度」(1:2)だけは必ず純正になります(したがって、「純正な完全1度」とか「純正な完全8度」という言い方は普通しません)。十二平均律においては、完全1度、完全8度以外の音程はすべて非純正ということになります。つまり、あろうことか、あなたのお手元の鍵盤楽器では、「純正な完全5度」を奏でることは不可能なのです――もちろん、特別にそのように調律されていれば別ですが。

実は、オクターブ内の12半音の音の高さをどのように相対的に決定していくのか、ということは、古くて新しい問題です。この問題に対する「これが決定版」という決着は今日でも得られていません。オクターブ内の12半音[注3]の音の高さを決定するための仕組み、システムのことを「音律」と言います。十二平均律は音律の一種です。十二平均律は歴史的に最も新しい音律(の一つ)であり、今日の音楽業界における圧倒的な主流派になっています。

他方、ピタゴラスの実験における【操作2】のように、ひたすら純正な完全5度を積み重ねていくことによって得られる音律を「ピタゴラス音律」と言います。ピタゴラス音律では、純正な完全5度(十二平均律における完全5度よりも少しだけ広い)を積み重ねていきますので、最後の最後(先の例でいえばラ♯とファの間)が純正な完全5度よりもかなり狭くなります。すでに見てきたように、完全5度を12回積み上げると、12半音をカバーすることができるのですが、ピタゴラス音律とは、この12個ある完全5度のうち、11個を純正な完全5度とし、その「皺寄せ」を残りの1個の完全5度に押し付ける音律です。この、ピタゴラス音律において犠牲となった最後の1個の完全5度を、「ウルフの5度」と呼びます。ウルフ、というのは狼のことですね。この、不自然に狭い完全5度を鳴らすと、非常に強い「うなり」が発生し、とても美しいとは呼べない響きがします。この「うなり」を狼の吠える声に喩えたわけです。

さて、ピタゴラスの実験では、ミ♯とファは同じ音にはならず、ミ♯のほうが少し高い音になってしまいましたが、この2つの音の差を「ピタゴラスのコンマ」と言います。これは十二平均律から見ると約0.2346半音だけ(つまり、半音の4分の1弱だけ)ずれているという計算になります。なお、十二平均律の1半音をさらに均等に100分割した単位[注4]として「セント」というのが一般的に用いられています。この単位を用いれば、ピタゴラスのコンマは23.46セントである、ということになります。

また、十二平均律はどこを取っても均一なので1種類しかありませんが、ピタゴラス音律は12種類あります。これは、全部で12個ある完全5度のうち、どの完全5度に犠牲になってもらうか、というパターンが12通りあるためです。

1.6 純正律の登場

これまで、「完全1度」「完全8度」「完全5度」などの音程が出てきました。ヨーロッパにおいては、中世まではこれらの音程(より正確には、完全5度の転回音程である「完全4度」を含む)を中心として音楽が作られていましたが、近世・近代にかけて、新たに「長3度」などの3度音程が重視されるようになってきました(ちなみにこれは、メロディー重視の音楽からハーモニー重視の音楽への移行ということと重なっています)。皆さんも、「長調/短調」、あるいはその英語版としての「メジャー/マイナー」(あるいは、ドイツ語版としてのdur/moll)という言葉は聞いたことがあるでしょう。これも後で詳しく述べますが、3度を重視する発想がないと、長調と短調の区別という発想も出てきません。

さて、「長3度」というのは、平たく言うと、ピアノの白鍵におけるドからミまでの音程です。それでは、十二平均律、ピタゴラス音律それぞれにおける、ドとミの周波数比を見てみましょう。ちなみに、長3度は、半音の数でいうと4半音となります。

  • 十二平均律においては、$${(\sqrt[12]{2})^4\fallingdotseq1.260\cdots}$$ (無理数なので分数では書けない)

  • ピタゴラス音律においては、ド⇒ソ⇒レ⇒ラ⇒ミと4回、純正な完全5度を取り、そこから2オクターブ下がればよいので、
    $${1.5^4×0.5^2=1.265625}$$ (最も簡単な分数で書くと$${\dfrac{81}{64}}$$)

無理数に基づく十二平均律はもとより、純正な完全5度に基づくピタゴラス音律においても、長3度の響きはあまり美しくないことが、数字を見るだけで分かります。異なる2音の響きを美しくする条件、つまり音程が純正となる条件は、その2音の周波数の比が、簡単な整数比となることでしたね。改めて復習すると、(純正な)完全1度は1:1、(純正な)完全8度は1:2、純正な完全5度は2:3でした。これらに比べて、ピタゴラス音律における長3度[注5]は64:81で、簡単な整数比と言うには厳しい数字です。

それでは、「純正な長3度」というものを人工的に設定するとすれば、どうすればよいでしょうか。64:81という比をほんの少しだけ調整して、もっとスッキリした比にできないでしょうか? 勘の良い方はお気づきでしょう、81のほうを少し下げて80にしてしまうと、64:80、すなわち4:5となります。めでたく、十二平均律やピタゴラス音律の長3度からあまり大きく逸脱しない範囲で、簡単な整数比が得られました。このことから、純正な長3度の周波数比は4:5と定義されます。

4:5というのは、小数の形で書くと1.25倍ということになります。これは十二平均律の1.260…やピタゴラス音律の1.265625よりはかなり低めの数字です。十二平均律の長3度と純正な長3度の差は、14セント(0.14半音)となります(純正な長3度のほうが14セント低い)。

さて、純正な長3度を定義したことによって、新たなる音律、その名も「純正律」が、満を持して登場します。歴史的には、純正律の理論は紀元後2世紀のギリシアの大学者プトレマイオスがすでに確立していましたが、純正律が実用化されたのは15世紀後半、スペインのバルトロメオ・ラモスによってであると伝えられています。ピタゴラス音律の確立から実に2000年以上も後のことですね。数論的に言えば、「2」と「3」という2つの素数だけでピタゴラス音律が成り立っていたところに、「5」という新たなる素数を導入するのに2000年以上かかったということになります。

1.7 純正律による全音階

十二平均律には、本質的に、「2の12乗根」という1種類の「武器」しかありません。ピタゴラス音律には、「純正な完全5度(2:3)」という、これまた1種類の武器しかありません。一方で、純正律には、「純正な完全5度(2:3)」と「純正な長3度(4:5)」という2種類の武器があります。この2種類の武器で、ハ長調(英語でいうとC Major)の全音階、いわゆるドレミファソラシドを定義してみましょう。

純正律では、まずドミソの三和音を定義します。ド:ミは純正な長3度だから4:5、ド:ソは純正な完全5度だから2:3となります。従って、ドミソの三和音を纏めて比の形で書くと、ド:ミ:ソ = 4:5:6 となります。ド:ソの2:3を4:6に通分したわけですね。このように、周波数比が4:5:6の形になっている三和音を「純正な長三和音」といいます。例として、ラ=A=440Hzを根音(ルート)とする純正な長三和音において、周波数は(ラ, ド♯, ミ)=(440Hz, 550Hz, 660Hz)になっています。

のちに和音の機能について詳しく述べるときに触れますが、主要三和音という考え方があります。ハ長調における主要三和音は、ドミソ、ファラド、ソシレという3つの長三和音です(順にトニック、サブドミナント、ドミナントという機能名がついていますが、今は覚えなくても大丈夫です)。この主要三和音さえ押さえれば、ドレミファソラシの7音がすべて過不足なく押さえられることになります。純正な長三和音をサブドミナント、トニック、ドミナントの順に3つ(ファラド、ドミソ、ソシレ)積み上げてできるのが、純正律というわけです。

具体的に周波数を調べてみましょう。まず、一番下のファの音の周波数を176Hzと定義しておきます。

  • ファ:ラ:ド=4:5:6だから、(ファ, ラ, ド)=(176Hz, 220Hz, 264Hz)

  • ド:ミ:ソ=4:5:6だから、(ド, ミ, ソ)=(264Hz, 330Hz, 396Hz)

  • ソ:シ:レ=4:5:6だから、(ソ, シ, レ)=(396Hz, 495Hz, 594Hz)

このうち、ファ、ラを1オクターブ上げ(つまり周波数を2倍にし)、レを1オクターブ下げる(つまり周波数を半分にする)と、すべての音が1オクターブの中に納まります。まとめると次のようになります。

音名/周波数
ド/264Hz
レ/297Hz
ミ/330Hz
ファ/352Hz
ソ/396Hz
ラ/440Hz
シ/495Hz

このようにして作ったハ長調の純正律は、次のような特徴があります。利点を○、欠点を×で示しましょう。

[○] 主要三和音(ドミソ、ファラド、ソシレ)がいずれも純正な長三和音(4:5:6)となる(定義から自明)
[○] ラドミ、ミソシの2つの短三和音も、純正な短三和音(10:12:15)となる
[×] レファラの短三和音は純正とならない(レ:ファ:ラ=27:32:40)
[×] ハ長調に特化して作った音律のため、ハ長調から遠い調に転調すると、極端に汚い響きが表れて使い物にならない
[×] ドレミファソラシ以外の音(ド♯、レ♯、ファ♯、ソ♯、ラ♯、の黒鍵の5音)がはっきりと定義できない
[×] 全音に大全音(ド:レ=ファ:ソ=ラ:シ=8:9)と小全音(レ:ミ=ソ:ラ=9:10)の2種類ができ、不揃いになる

特に、今日の音楽から見て、転調が自由にできないということが純正律の致命的な欠点となります。転調によるドラマティックな効果が重視されるようになった19世紀後半以降の音楽では、純正律がそのまま使われるケースは稀となりました[注6]。

コラム:純正律は何種類あるか? ~短調の純正律

「十二平均律には1種類しかない」「ピタゴラス音律にはウルフの5度をどこに押し付けるかによって12種類ある」という話をしましたね。では純正律には何種類あるでしょうか。これは考え方が色々あると思いますが、私はシンプルに「24種類ある」という立場を取ります。なぜ24種類なのか。それを説明するためには、短調の純正律をどう作るか、ということを説明しなければなりません。

ハ長調の純正律は、ハ長調の主要三和音(トニック、サブドミナント、ドミナント)をすべて純正な長三和音とすることにより得ることができました。では、その並行調であるイ短調については、ハ長調で得られた音律と同じでは駄目なのでしょうか? 私の考えでは、駄目です。

純正律は主要三和音から作る音律です。従って、イ短調は、イ短調の主要三和音、すなわち、(トニック、サブドミナント、ドミナントの順に)ラドミ、レファラ、ミソシを、いずれも純正な短三和音(10:12:15)にしなければなりません。ハ長調のレファラの和音は純正ではありませんでしたね(27:32:40)。イ短調では、この短三和音を純正にしなければなりません。先ほどのハ長調の純正律では、レ=297Hzでしたが、これをレ=293.333…Hzと低めに取りなおすことで、レ:ファ:ラ=10:12:15とすることができ、これをもってイ短調の純正律が得られます。

このように、12音それぞれに対して長調と短調の2種類の純正律ができるため、合計24種類の純正律ができるということになります。

ちなみに、純正な短3度は比の形で書くと5:6、小数で書くと1.2となりますが、十二平均律における短3度(=3半音)は (2の12乗根)の3乗=1.189… となります。純正な短3度と十二平均律の短3度の差は、16セント(0.16半音)です(純正な短3度のほうが16セント高い)。

1.8 (参考)その他の音律

私の考えでは、今日のポピュラー音楽の理論を理解する上で重要な音律は、すでに触れたピタゴラス音律、純正律、十二平均律の3種類のみです。しかし、西洋クラシック音楽の歴史においては、純正律の後にいきなり十二平均律が登場したわけではなく、その間に数々の改良音律が開発されました。その代表的なものを簡単に解説しておきましょう。本項の説明は意図的に不完全なものになっています(私が理解した範囲でしかまとめていないため)。これ以上の詳しい情報については、他の書籍などを当たってください。

中全音律: 16世紀に開発。完全5度を4つ積み重ねてド⇒ソ⇒レ⇒ラ⇒ミとしたときに、ド~ミまでの音程が「純正な長3度+2オクターブ」となるように、完全5度を純正よりも狭く取った音律。この完全5度は数学的には「5の4乗根」$${\sqrt[4]{5}}$$となり、小数で約1.4953…となる。これは純正(小数で1.5ちょうど)より狭いのはもちろん、十二平均律の完全5度(1.4983…)よりも狭い。純正な完全5度は断念されたが、純正律よりも少しだけ転調の幅が広がった。ただし、ウルフが発生する調は残る。全音の幅が、純正律の大全音(8:9)と小全音(9:10)の中間の幅になるため、「中全音」律という名前になった。

キルンベルガー第三調律: 18世紀に開発。ピタゴラスの純正な完全5度と中全音律の狭い完全5度をうまく組み合わせ、ピタゴラス音律や中全音律のウルフが目立たなくなるように工夫された音律。調により、長3度が純正に響くものと、完全5度が純正に響くものがあり、転調によるドラマティックな効果を生みやすい。

ヴェルクマイスター第三調律: キルンベルガー第三調律とほぼ同じだが、純正な完全5度と中全音律の狭い完全5度とを組み合わせる順番が異なる。キルンベルガー第三調律にあった純正な長3度はどの調からも失われており、より十二平均律に近い音律。

1.9 音律まとめ

中全音律以降の改良音律はさておき、ポピュラー音楽を理解するための基本の3音律について表に纏めておきましょう(Googleスプレッドシートの閲覧もできます)。こちらには、本文中で触れなかった情報も一部追記しました。

繰り返しになりますが、歴史の趨勢として、ポピュラー音楽のほとんどは十二平均律で作られていますが、十二平均律が万能の音律というわけではありません。音律というものはすべて、「あちら立てればこちら立たず」という性質のものです。現代のテレビやラジオやインターネットから流れてくる音楽のほとんどは、純正な響きを犠牲にした音楽である、という認識は持っておくべきだと私は考えます。「音の高さ」に関する音楽理論は、ポピュラー音楽の分野では「ジャズ」において最も先鋭化していると私は思います(4章以降では実際にジャズの音楽理論に分け入っていきます)が、その芳醇で奥深い音の世界は、この尊き犠牲の上に成り立っています。

また、2章以降では、原則として十二平均律をベースとした説明を進めていきたいと思いますが、ピタゴラス音律、純正律の考え方はそこでも応用が利きます。その意味で、音律について最低限の正しい知識を持っておくことは、ポピュラー音楽における音の高さの理論を考えていくうえで、決して無駄な遠回りではなく、必要な「基礎体力」であると私は考えています。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。次章でまたお会いしましょう。

脚注

[注1] 数学的に厳密なことを言うなら、ここで$${x}$$は「正の数」でなければなりません。「負の数」や「虚数」は除外します。周波数は正の数でなければ意味を持たないからです。

[注2] ところで、ドイツの大作曲家 J.S.バッハに『平均律クラヴィーア曲集』という作品がありますが、この「平均律」というのは誤訳だと言われています。J.S.バッハの時代には、まだ十二平均律は実用化されていませんでしたので、誤解しないように。

[注3] オクターブを12半音よりも細かく分割する音律も考案されています(53平均律など)が、ここでは取り上げません。

[注4] もちろん、数学的に厳密な表現をすれば、周波数ベースで等比級数的に均等に分割するということです。セントという単位を用いると、十二平均律における半音は100セント、完全5度は7半音だから700セント、1オクターブは12半音だから1200セントとなります。1セントを周波数の比としてとらえると、「2の1200乗根」$${\sqrt[1200]{2}}$$ということになり、%で表すと約0.05778%となります。

[注5] 厳密に言うと、完全5度と完全8度から長3度を求める過程においてウルフの5度を含まないことを前提とする場合の話となります。

[注6] 稀ではありますが、絶滅したわけではありません。現代のポピュラー音楽の世界でも、例えばアイルランドのEnyaなどは純正律を用いていることで有名です。また、日本において純正律の復興を唱えた重要人物として玉木宏樹氏(1943-2012)が挙げられます。実際問題としても、アカペラの演奏などで長三和音を人間の耳だけで作ろうととすると、自然と純正な長三和音に向かいますし、金管楽器などの倍音列を利用する楽器は、必然的に、十二平均律による音程よりも純正な音程を作りやすくなっています。

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