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読書感想文「ルワンダ中央銀行総裁日記」服部 正也 (著)
国をつくる話しである。
地味な開発援助の本であるのにロングセラーの一冊だ。途上国で活躍する日本人の熱きドラマがウケるのか。卓越した知恵が難問を解決するからか。いずれでもない。この本に書かれるのは、経験豊富な中央銀行職員が当たり前の金融政策・市場の形成に取り組んだ6年間の記録だ。アウェイの地で働く服部総裁は大変だ。あくまで、ルワンダの中央銀行総裁として、この国のために、この国全体を見渡して決めていかなくてはならないからだ。何を言ってんだ?と思われるかもしれない。本国から来た駐在員や商人であれば、有利な取引をして本国への利益を最大化させればよいのだ。一過性の取引であれば、儲けを総取りでいいのだろうし、やさぐれた場面では切り取り放題でもいいのだろう。
しかし、中央銀行のバンカーとしてはあくまで、国家としての体をなす金融体制の構築であり、国益をつくることなのだ。国家のガワだけがあっても人材も法制度も資本もスカスカなのだ。近代国家を為すとはこういうことかと思うと読んでいて泣けてくるし、我が国の開国を思い、つい「誠に明治の先人は偉かった」などと司馬遼太郎みたいなことも言ってみたくもなる。
なお、本書の技術支援のページに「まず本質的に方針のない技術は不毛である」とある。これは未だ重々しく響く金言である。