読書感想文「京大 おどろきのウイルス学講義」宮沢 孝幸 (著)
「ほんとうは面白いウイルスの世界」であり「●●の知らないウイルスの世界」である。
目には見えないが周りや体内にいつも存在し,何なら無くては困る存在だったりもするウイルス。今は,定時のニュースでその大活躍が報じられているが,昨日今日,現れたわけではない。そもそも哺乳類の胎盤の形成に関わっていたようなので,今日,我々があるのはウイルス様のおかげである。
感染拡大,変異,「未知の」,「新型の」,「毒性が」などと日々,センセーショナルな言葉が飛び交うが,動物由来のコロナウィルスの流行としては,わかっているだけでこれで8回目。では,なぜ,大騒ぎになっているのか。テクノロジーが発達して,今回は,相手の正体がわかるようになったこと。これまでもウイルス性肺炎で亡くなる人は大勢おり,彼らは何のウイルスに罹患していたのかは,はっきりわかっておらず,「悪い肺炎になっちゃったね」と周りの人は納得していたこと。もう一つは,「悪」の病原性のウイルスだけが俎上にあがられてしまいウイルスって何?が抜けていることだ。そもそも,役に立つウイルスもいたり,大抵は何もしないウイルスが大半だったりする。まして,人間に関わるウイルスなど全体に比べりゃ少数で,動物や昆虫とともにあるウイルスの方が当然,多いことは余りにも知られていなさすぎる。
まして,ランダムに変異するウイルスにとっては,その社会の中での伝播のしやすさの違いによる多少のタイムラグはあれど,ベースのウイルスが一定以上に広がってしまった場合,ほぼ世界同時発生することを考えれば,水際作戦が無意味になるのは「ウイルス学」から見れば明らかだ,というのだ。
社会のリソースを食い潰してしまう前に,哺乳類スタート時からウィズ・ウイルスだったことから,もう一度,考え直してみるために読む一冊だ。
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