読書感想文「新型コロナウイルスを制圧する ウイルス学教授が説く、その「正体」」 河岡 義裕 (著), 聞き手・河合 香織 (著)
「本書は,これまでにわかって来たこと,分かっていないことを多くの人に伝えることを目的として企画された」。この企ては成功した。「感染症は病原体に曝されなければ感染を避けることができる」。そうであるならば,「有効なワクチンや抗ウイルス薬ができて,本当の意味でのウィズ・コロナ,ポスト・コロナの時を迎えるまで」,当たり前の感染症対策をやり続けるということだ。
語るのは,東京大学医科学研究所ウイルス感染分野教授の河岡先生。誇張もなく,分かりやすい。「多くの人が勘違いをしているのですが,戦いと思っているのは人間だけです。ウイルスに生存戦略などありませんし,何も考えていません。(略)よくウイルスが人を襲うなどの言い方をしますが,ウイルスを擬人化してはいけません」。
ウイルスとは何か。これからも流行するのか。無闇に恐れる必要はない。気が緩んでいるからウイルスに感染するわけではない…など,放っておくと不安と諦念だけが広がってしまう中,まず,手に取るべきは,河岡先生のこの一冊だ。今後の増補改訂版を逐次,出版してほしい。