読書感想文「コロナ対策禍の国と自治体 ――災害行政の迷走と閉塞」金井 利之 (著)
災禍に向かう政府は,中央であれ地方であれ「失敗」する。なぜか。金井は言う。「災害とは,行政に対する需要を増やし,行政による供給を減らす。基本的に災害対応を行う行政は,失敗が運命づけられている」。
シニカルな金井節か,とも受け取られようが,「COVID-19対策は,結局,保健福祉介護当局,保健所,介護施設・介護従事者,病院,医療従事者など,実務家が粛々と行うしかない」。「現場では無力な為政者や非現場型専門家は,実務の基盤を整備できるだけである」。ここに金井が言うコロナ禍とコロナ対策禍の本質がある。現場がどれほどコロナ禍に立ち向かっていたところで,実務の基盤を整備するはずの為政者や非現場型専門家によるコロナ対策が不十分だったり見当違いだったりすれば,それは「コロナ対策」による禍,すなわちコロナ対策禍となる。
短期集中・人命救助救援型の災害緊急対応や復旧対策が,果たして大規模蔓延の感染症対策に当てはめることができるのか。同時代に,これほど世の中を論評してみせた金井の冷静な視点は,もっと知られていい。
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