
もう一つの視点を持ってみる。
本は、もう一人の自分だ。
視点の大切さ。
あなたはどれぐらいの視点を持っているだろうか。
一つだけだと、それは今を生きると厳しいと思う。
視点の多さは、世の中のいろんな面を見せてくれる。
例えば、知床観光船事故。
これは2022年4月23日、北海道・知床半島の沖合で乗客乗員26人が乗った観光船「KAZU I」が沈没。20人が死亡するという事件だ。
当時、毎日のように、記者会見の様子や、なぜそんな事件を起こしたのか、被害者の言葉が、メディアで流れていた。
そして、メディアの勢いのまま日本国民は社長を袋叩きにした。
まるで、魔王が出たかのように。
だが、西野亮廣さんの「夢と金」では、面白いことが書いていた。
「原因」とは、「なぜ、整備不良のまま海に出たのか?」「なぜ、無理な運行を
続けたのか?」といった質問の解だ。
そのまま「なぜ?」と繰り返すと、「整備できなかった」「無理な運行をせざ
るをえなかった」になり、さらに、「なぜ、整備できなかったのか?」「なぜ、
無理な運行をせざるをえなかったのか?」と問い続ければ、最後は「お金」と
いう「原因」に辿り着く。
「お金がなかったから」だ。
つまり、知床観光船事故は、お金がないというシステムが人間を動かした、システムエラーだったわけだ。
さて、この記事を読んでくれている人の中にこの結論に至った人はいるか?
おそらくいないだろう。
みんな総じて「社長の判断ミス」という結論に至ったはずだ。
もちろん、僕もその結論に至ってしまった。
だが、西野さんは「マーケティング」という別の視点から見たことで、「お金がないための、システムエラー」という原因にたどりついた。
私たちが、見ていたものは、一つのカメラからの画像だった。
だが、別の数台のカメラでいろんな方向から見ると、別の事実が見えてくる。
つまり、私たちは一つのレンズからしか世の中を見れていなかったわけだ。
視点で小説は面白くなる。
そして、これは現代社会だけじゃない。
小説を書くときなど、さまざまな時に使うことができる。
登場人物はどういう人物で、どういう人生を送ってきたから、どういう視点を持っているのか。
視点とは、知識であり、価値観であり、切り口だ。
子供の頃に、目の前で両親が事故にあった子供と、
順風満帆、何不自由なく育ったボンボンは、同じ視点を持っているか?
多分、そうではないよね。
だから、いろんな視点を持つことで、豊かな人間性を持たせたキャラクターを作ることができる。
例えば、去年、本屋大賞を受賞した凪良ゆうさん。
彼女の小説は、毎回「ちょっとおかしい主人公」の小説だ。
「汝、星の如く」の主人公は、お母さんが好きな人を追いかけて何ヶ月もいなくなったり、フラれて大泣き&情緒不安定になり、その度に家庭崩壊するという状況で育った。
そして、本人も高校生ながらお酒をストレートで飲みながら、漫画の原作を書いている。
そんな男子高校生の恋の物語だ。
他にも、「流浪の月」や、「わたしの美しい庭」も特殊な環境で育った若者が、主人公になっている。
そんな豊かな人間性を生み出すためには、やっぱりいろんな情報が必要だ。
その人の心にスポットライトを当てた小説は、そこがしっかりしていないとスッと面白くなくなる。
だが、凪良ゆうさんは、毎回その登場人物の心情の描き方、展開の進み方がキレイだ。
つまり、彼女はいろんな視点と知識を持っていて、それを人物に当てはめることで、面白い小説を作り上げているんだろう。
視点の増やし方
さて、ここまで視点が増えることの大切さについて話してきた。
次は、視点の増やし方についてだ。
視点を増やすためにおすすめなのは読書。
これに限る。
本は、その人が何十年もいきた経験がそのまま書いてある。
つまり、その本を読んでいる2時間は、筆者の数十年になる。
いうならば、「人生再現機」と言ったところだろう。
彼の人生が、その一冊に詰め込まれているんだ。
数十年が2時間に詰め込まれているんだから、当然濃度は高い。
そして、人生再現機は、そのまま自分の視点にすることができる。
編集者の箕輪厚介さんは「憑依レベルの分析」が本を作る時に必要と言っていたが、それに似ているのかもしれない。
本には、濃厚に人生が詰められている。
その人の視点も、知識も、考え方も。
その視点を持つことは、世界を見るための新しいメガネを持つことだ。
それがあれば、世界の姿をはっきり、くっきりと見ることができる。
新しい視点を持つことは、もう一人の自分を作ることにつながる。
いろんな視点から世界を見て、自分で議論を行う。
そうすれば、他人に頼らず世の中を見ることができる。
少しずつでもいいから、本を読んでみてほしい。
というわけで今回は、「もう一つの視点を持ってみる」というテーマで書いてみた。
これからも必要になる能力だし、ぜひ身につけてみてほしい。
それでは、素敵な1日を。
以上、風山ふみがお送りしました。
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