まちの本屋 まちの映画館
私が住む岩手県花巻市に今ある書店は、M's書店、TSUTAYA花巻店、宮脇書店花巻店に、イトーヨーカドーの中にあるBOOKS銀河の4店。BOOKS銀河以外はいわゆる郊外店で、しかもモールの中にある。BOOKS銀河も大きな駐車場を持つ大型スーパーの中にあるから、郊外ではないにせよ同じような環境ではある。まぁこれは全国的な地方都市の傾向であり、花巻に限ったことではないだろう。移動は基本的に車だから、経営的にはそういう環境は正しい。
かつて花巻の商店街が賑やかだった頃は違った。書店は基本的に商店街の中にあった。誠山房、芳文堂、宮弥書店、鎌田書店・・・。中でも一番大きな店は誠山房で、メインストリートに面していたこともあり、本を探す時は真っ先に向かった店だった。
(閉店後しばらく建物だけ残っていたころの誠山房)
当時の書店はどこも売れ筋のベストセラーや雑誌を店頭に置き、奥に行くに従って新刊書、文庫本、人文系、学参ものという並びだった気がする(旅物は壁際)。誠山房はレコードや文具も扱っていたので、当時買ったレコード(!)はほとんどここ。今も当時のレコードのビニール袋を持っている。
こういう、いわば総合書店が今は郊外の大型店になったわけで、もちろんそれはそれでいいのだが、まちから書店が姿をすっかり消してしまったことは寂しい。商店街の中で、ショーウインドに本が並んだ景色が恋しい。総合書店じゃなくていい。本のセレクトショップ的な店でいい。いや、逆にその方が今のまちには合う気がする。売れセンは総合書店に行って買ってもいいが、まちの本屋は知らない本に出会う店。じっくり1冊1冊見て選ぶ店。小さな出版社の本も置いてある店。そして書棚の片隅でコーヒーなど前に、買った本のページをゆっくりめくることができる店。そんな小さな本屋がまちには欲しい。ガラス戸の中に並んだ本の背が目に入るだけでワクワクしてしまう。
昔、花巻には映画館が3軒、4軒あった。中央劇場と花巻東宝は私の記憶にもある。東宝跡は今も建物が残っているが、中はどうなっているのだろうか。
2階に映画館の入り口があり、1階はスーパーマーケットだった。ここは東宝だけあって日本映画。漫画系も夏休みなどにはよくかかっていた。中劇は洋画専門。昔花巻市内を走っていた路面電車 花巻電鉄のターミナルである中央花巻駅のそばだったのだと思う(だから中央劇場)。他には、私自身は知らない昔だが、双葉町に文化座という映画館があった由。どこも1970年代〜80年代の映画斜陽時代に相次いで姿を消した。
今は北上にシネコンがあり、話題の映画はそこで観ることができる。しかし独立系の小館やミニシアターでかかるような映画はなかなか地方にはやってこない。新聞やネットで話題になっても観る機会すらないのだ。昨秋、沖縄へ行った時、コザのまちでミニシアターカフェを見かけた。普段はカフェ営業をやっていて、定期的にセレクトされた映画がかかっているようだった。これなら花巻にあっても良い。映画を見た後も、そのままお茶やビールなど飲みながら感想を話し合ったりもできる。なんなら軽い食事も。
小さなセレクト書店も、ミニシアターカフェも、まちの中の文化の拠点になり得る。飲食店や各種小売店、コンビニなどもまちには欠かせないけれど、こんな文化のともしびが灯ることで、より魅力あるまちが形成されてくるのではないかと思っている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?