週刊金曜日連載「花巻の風」
昨年2月から1年間の連載が終わった。東北の1地方都市である岩手県花巻市で今吹いている「風」を、それぞれ人にフォーカスしながら全12回の連載だった。週刊金曜日という、相当意識が高い読者を持つメディアで、果たしてどれだけの読者の方々の注目を集められたのかわからないが、単なる観光ガイドではない、「地方都市のリアル」を描いたつもりだ。全国的に話題になるような社会問題を抱えているわけでも、特筆すべきムーブメントがあるわけでもない、人口10万人足らずの地方都市だが、それでも若い人を中心に新しい風が吹き始めている。
地方都市にありがちだが、花巻というまちが持つ魅力や吹き始めている新しい風に一番気づいていないのは、そこに住む市民自身という気がする。本連載は全国の方々にも知ってほしいと考えて書いたつもりではあるが、できたら地元の人たちにも読んでほしいとの思いもあった。花巻は決して「何もないまち」ではない。連載で取り上げた方々は花巻のプレーヤーたちのほんの一部だが、それでもこういう人たちがそれぞれ「風」を吹かせていることを知ってほしいと考えていた。書いた私自身も、取材に応じていただいた人たちに大いに勇気をもらった。「これからだ」という気持ちになった。まだまだこれからだ。
第1回目はやはりこの人。花巻のリノベーションまちづくりに火をつけた、花巻家守舎、上町家守舎社長の小友康広さん。
そして2回目は、ちょうど東日本大震災から10年ということもあり、沿岸で津波を経験した結果、自分の人生まで変わったという助産師の吉田百さん。
第3回目は花巻発、全国へ、世界へと発信を続ける若手ベンチャーの茂庭裕之さん、松田崇弥さん、松田文登さん兄弟。(松田兄弟の会社ヘラルボニーは昨年本社を盛岡へ移転)
第4回目は伝統芸能を未来につなげようと奮闘する若手継承者、新田彩乃さんと柏崎圭祐さん。
第5回目はぶどう農家として新規就農した20代の鈴木寛太さんと、50代の佐藤直人さん。
第6回目は、花巻のリノベーションまちづくりトップランナーである福田一馬さんと高橋亮さん。
第7回目は夢を実現している若手、菅原治郎さんと平賀恒樹さん。
第8回目は、日本で一番歴史が古い社会人ビッグバンド、花巻リズムヤンガー。
第9回目は自らまちの活性化のために活動する団体を率いる高校生の伊藤千織さんと、20代の内田祐貴さん。
第10回目は学校、家庭とは別に、ボランティアで子どもたちの育成に取り組む佐藤敦士さんと平賀忠彦さん。
第11回目は花を仕事に、新しい世界を築きつつある藤原昭紀さんと岡居亜優美さん。
そして最終回となる第12回目は、花巻といえば宮沢賢治さんということもあり、賢治さんや、その弟で祖父の清六さんの後を継ぎ、その想いを伝え続けている宮沢和樹さんを取り上げた。
本連載をスタートする時点で、だいたいどういう人を取り上げようか候補者を考えてはいたが、最初の小友康広さんと最後の宮沢和樹さんだけは決めていた。ある意味「今の花巻」を代表する人たちだから。
本連載が、少しでもたくさんの方々に「花巻の吹いている風」を感じてもらえたことを願っているし、今後も様々な形で「風」を発信し続けていこうと思う。