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時間は人間が作った幻想だった|時間の概念を持たない部族の話


1.はじめに


未来に対して何の希望も持てなくなってしまった時、人は絶望し暗闇の世界に閉ざされてしまいます。
ところが、チンパンジーは絶望をすることがないといわれています。

チンパンジーは今、この瞬間を生きているので、ものごとを深く感じることもなく、未来に何が起きようと、不安を感じたり絶望したりすることがないそうです。
同じ霊長類の仲間である人間は、起きてしまった過去のできごと、また、まだ起きてもいない未来に対して想像することで絶望してしまいます。

今、ここにいる自分自身にはまだ何も起きてはいないのに、人間には豊かな想像力が備わっているために、過去や未来を想像することで悩みを膨らませてしまいます。
過去や未来は、時が流れることで作られていきます。
時間というものは、当たり前のように存在し、毎秒、毎分、毎時間を刻んでいます。
近年、時間と呼ばれているものの正体は「幻想」であると主張されることが増えてきました。
人類にとって時間とは人生や生活に密着した存在ですが、同じ人間でも時間という概念を持たない部族が現代にも存在しています。
私たちを取り巻く時間とは、何を意味しているのでしょうか?
今回は、時を刻む存在、時間の正体についてご紹介します。

2.時間の歴史


私たちの日常は、時計を見て時間を確認することで行動を起こします。
そもそも時間とは、何を指すのでしょうか。
時間とは、文字で表されている通り、「ある時刻とある時刻の間の長さ」という意味で使われています。

そして、時刻とは時間の中でも、ある一時点のことを指しています。

時計を持たない古代の人々は、月の満ち欠けや太陽の動きから時間の流れを把握していました。
太陽や月は、東から昇り、西へと沈むサイクルを繰り返しています。
この自然界の周期を正確に把握することで、1年の周期には場所によって「季節」というものがあることを知ることができました。
季節には雨や雪が降りやすい時期、暑さや寒さが厳しい時期、台風が訪れやすい時期などがあります。

この周期を知ることで、災害を予測することもできますし、農業においても効率よく作物を栽培することができるというメリットがあります。(農業の発展)

また、正確な暦を作ることで、人類はどの国に生きていても時間という概念の中で生きるようになりました。
16世紀には1月1日を1年の新しいスタートの日と制定した「グレゴリオ暦」が世界で共通の暦となりました。

この世界に時間や暦があることで、遠く離れた人とでも予定を合わせることができること、また、電車や飛行機などの移動手段もベストなタイミングで利用できるために、とても効率的で便利な生活ができるようになりました。

3.時間の概念


みなさんは時間の流れが速く、または遅く感じたことはありませんか?
退屈な時間の流れはゆっくりと流れ、楽しい時間はあっという間に過ぎ去ってしまうといった経験は、どなたにでもあるのではないでしょうか?
一般的な表現として「時間が流れる」という表現をよく使用します。
時間とは一定の間隔で、過去、現在、未来へと一方通行で流れているという考えは常識となっています。

ところが、多くの有名な物理学者や哲学者は、時間とは一定に流れるものではなく、過去や未来といった区別も存在していないと主張しています。

また、時間は伸縮し、消えることもあると主張する学者もいるのです。
時間は流れるものではないという主張の中で、「ブロック宇宙論」(block-universe)があります。
ブロック宇宙論とは、時間は過去から未来へ向かって流れるものではなく、「過去・現在・未来は等しいものとして同じ空間に存在する」という物理的時間論です。

時間とは過去から未来に向かって流れるものではなく、無数に存在している静止した「現在」という画像が少しずつずれたものを、人間の脳が認識することによって、まるで時間が流れているように感じているだけであるという考え方です。

とてもリアルなパラパラ漫画を見ているような感覚と表現した方が、分かりやすいかもしれません。

過去や未来があるように感じてしまうのは、人間の脳に記憶をとどめておく働きがあるからです。
過去の経験は脳が記憶として認識したものであり、未来のことが分からないのは、脳がまだ体験していないものごとに対して認識していないだけなのです。
何を体験し、意識が認識したかの問題であり、時間という概念は人間が便宜的に使っているだけであって、本来そのようなものは存在していないという主張です。

つまり、時間とは幻想であるということなのです。
ブロック宇宙論に対して批判的な意見も多くあります。
それは、未来が既に決定されているという考え方は、私たちには自由意志がないということを意味するからです。

この点に関しましては、近年、脳科学の分野でも「人間には自由意志は存在しない」という情報も多く見かけるようになりました。
人間の脳は自分が認識していることで自動思考をし、無意識下で感じたことに対して自動的に反応(行動)をしているために、人間には自由意志がないといった考え方です。
(自動思考…自分の意志とは関係なく自動的に湧き起こる思考)

つまり簡単にいいますと、私たちが日常で行っている思考や行動は、自発的に行っていると思い込んでいるだけで、実は全て自動的に行われているために、人間には本当は自由意志はないということになるのです。
時間は幻想であると説明されても、受け入れることは難しいことかもしれませんが、ブロック宇宙論は相対性理論から生まれた時間論であり、あながち間違ってはいない主張であると考えられます。
ドイツの哲学者であるカント(イマヌエル・カントImmanuel Kant 1724~1804年)は空間と時間という観念は、生まれつき人間に備わった感性であると主張していました。
流れる時間という幻想は脳が生み出しています。
すでに過ぎた過去があるように感じるのは、我々の脳が記憶をとどめておくからに他なりません。


4.時間の概念を持たない部族


さて、現代人は時間に縛られとても忙しい毎日を過ごしています。
文明が発展したこの現代にも、時間という概念を持たない小さなコミュニティがあることをご存知でしょうか?
アマゾンの奥地に住み、独自の文化を保ち続ける先住民族、アモンダワ族です。

ブラジルのアマゾンには、少数の民族がいくつか存在しています。

現代の発展した文明から影響を受けず、独自のルールで生活しています。
アモンダワ族はそのような部族の一つです。
1986年、今からおよそ30年前にアモンダワ族は発見されました。
当時で約150人の小さな部族だったそうです。

彼らの最大の特徴として、時間という概念を持っていないことに大きく注目をされました。
彼らの世界には、昼と夜(明るい時間と暗い時間)、雨期と乾期(雨が多い時期と乾燥した時期)の認識があるだけで、とてもシンプルです。

そのために時間・日付・年など、時間に関する言葉も存在していないのです。時間を表す言葉として、「過ぎ去る」や「後で」など、ふんわりとした表現をするそうです。
また、現代社会では時間は数字で表現をしますが、アモンダワ人の言語では、4か5までの数字しかないようです。

年齢という概念も持ってはいませんが、人生の節目に名前を変えるという不思議な文化を持っています。
例えば、幼児は新生児が誕生すると自分の名前をその子に譲り、自分は目上の子どもから別の名前を引き継ぐといった感じです。

そうすることで一つ成長した感覚になり、ステージに合わせた名前になることで大人になっていくことを実感します。

彼らには時間に追われるという感覚はありません。
忙しさに追われている現代人にとって、とても羨ましく感じてしまうかもしれませんが、そもそも時間という概念は人間が独自に設定したものであって、本来は不要なものなのかもしれません。
そのような数字の幻想に縛られ、自由を失っているのが現代に生きる人々なのではないかと思います。

アモンダワ族の人々は、自由な世界で生きる、幸せな民族といえるのではないでしょうか?

5.まとめ


いかがでしたか?今回はブロック宇宙論についてご紹介しましたが、時間は幻想であると唱える学者たちの理論は他にもいくつかあります。
(物理学・量子力学・脳科学の観点)
私たちの常識とは、本当は常識ではないのかもしれません。

誰かや何かから教わったものを常識とする考えを、一度疑ってみることで意識は拡大していくのかもしれません。
 
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