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#20 春を迎えられなかった恋

映画館を出る時は自分から手を繋いだ

彼女もそれを受け入れてくれたのが、嬉しかった


映画はお昼前に終わったから

僕達は近くのマクドナルドへ行く

お昼より少し早く着いたけど、土曜日ということもあり、すでに行列ができていた

待っている間、映画の話をしていた。個人的には大満足。映像も世界観も予想以上で、これは皆面白いって言うはずだねって話を僕は少し興奮して話する。彼女は順番が来るまでの間、聞いてくれてた

席に着くと、彼女は少し元気なさげな感じだった

「疲れた?大丈夫?」

と僕が聞いても

「大丈夫…ちょっとトイレ行ってくるね」と言って席を立ってしまった

僕は、映画面白くなかったかな?なんて少しだけ心配をしたが、すぐにこの後の予定のことを気にしていた。次はPARCOへ行って、何か記念になるものでも買いたいなぁ…


ここは運良く窓側の席で外の景色がよく見える

駅前だからか、

クリスマスだからか

人がいつもより沢山歩いているようにみえる

(皆どこへ行くんだろ?クリスマス何して過ごすんだ…

待ち時間もなんだろ、楽しい…)


なんて考えていると彼女が戻ってきた

「お待たせ…トイレ混んでて、待った?」

「ううん、全然」

待ち時間も楽しかったのは、この時だけだったかもしれない

ご飯の後、隣のビルに入っているPARCOへ向かう

1階から6階まで色々入っているから、有難い。メンズレディースの服屋もあるし、雑貨屋もある、アクセサリー屋が目当てだったから、そこには絶対寄ろう

今までだと全然立ち寄らない女の子のお店も彼女がいると、なんの抵抗もなく近寄れることに驚きながら、デートって楽しいんだ

なんてことないことに気づく自分がいた。これも全て彼女のおかげだ


と、何やら向こうの方から聞いたことある声が聞こえてきた。まさか、…と思う前に目の前に部長が友達と2人で歩いてきた


あっ…

僕らは手を繋いでいた

僕が止まり、彼女も部長に気づく 



部長は一瞬驚いた表情をした

でも、近づいてきて部長から話かけてくれた

「あー、何々、デートしてるのー?」

「そ、そうなんだ。おれたち付き合ってて。部長言ってなかったっけ?」

「うん、知らなかったー…

そっか…じゃあ邪魔しちゃ悪いね。また学校でねー」

そーいうと部長は友達と別のお店に入っていった。

彼女も僕も無言のまますぐに上の階へ上がった

上の階はゲームセンターになっていて、卓上の格闘ゲームやシューティングゲーム、レース、UFOキャッチャーなど一通りのものが立ち並ぶ。

入口の近くにプリクラの機械が沢山並び、その辺りだけ別の囲いができていた。

【カップル限定】と書かれたそのフロアに逃げ込むように僕らは入る。流行りの洋楽が大きな音で流れ、少し明かりも暗い

近くのベンチに腰掛けた、周りにはちょうど僕らしかいない。沢山いるカップルはプリクラを撮ったり、テーブルで切り分けたりしている

「なんで…今日地元で友達と遊ぶって言ってたのに」

彼女が呟いた

「そーなの?ビックリしたよね、ほんと。まさか部長に会うなんて…」

僕らはしっかり手を握っているところを見られていた。というか、ずっと繋いだままだった。今も。

「あー、、ちゃんと言っとけば良かった…」

彼女が怪訝そうに言った

「いや、おれがちゃんと言ってなかったのが悪かったよごめん」

「んーん、シュンは悪くないよ。私ずっと言わないとって思ってたんだ。だけど、言いにくくて」

(やっぱりそうか。そりゃ…そうだよな)

いつも2人は地元が一緒でバスで帰ってたし、家も近所だから、よく話もしていた。

だから、僕が言うべきだったのは分かっていたのに僕は後回しにしてしまっていた。

「今度、おれがちゃんと言うよ、部長のとこ行って」

「え、いーよいーよ!私近所だし、すぐ会うから、ちゃんと話する」

でも…

と言いかけたが

「あー!プリクラ撮りたかったんだー、ねー撮らない?」

と、彼女が言って。僕はそのまま流されてしまった

(我ながら情けない…いつも彼女の方が気が回る)

そんなこと思いながら、人生初のプリクラ機へ入っていく


彼女に手を引かれるだけで、何も言えなくなる自分がいた







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さとう じゅんいち
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