#1 春を迎えられなかった恋
雨粒はさほど大きくないが、目の前のガラスに打ち付ける量は多く、少し早めのワイパーじゃないとなんだか視界が悪い。
冬の雨は本当に冷たい。
今日の空気も鋭く肌を突き刺すように冷たい。
車を運転する私は、なんだかボーっとしていた。熱でもあるんだろうか。
早く帰ってひと息つきたい
しかし、目の前に赤信号。
アイドリングストップが作動して、一瞬雨音だけの世界になる、夕方6時半はすっかり夜。
信号待ちで、ふと目を外に向けると
高校生くらいのカップルが手を繋ぎながら傘を差していた。
ん?
ちょっと違和感があったのは2人とも傘差していて、手を繋いでいること
(手のとこ濡れちゃうじゃん…)
最近はそういうもんなのか?いや、それともまだ付き合いたてで緊張しているだけなのか?どっちなんだろ、とか考えていた。
信号が青になって、車を走らせる
次第にそんなことは忘れていく
するとあの頃のことを不意に考えた
初めて付き合った相手のことだ
(…高校2年の冬だったっけ)
とっても短い恋だった
彼女は同じ部活の、1つ上の先輩だった
(確か、相合い傘はできなかったなぁ)
雨が降った日に一緒に帰らなかったからってのもあるけど、4ヶ月くらいしか付き合えなかったせいもある。
これから書くのは、そんな寒い季節までのお話
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