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#5 春を迎えられなかった恋

「副部長の長谷川です。よろしくお願いします」

最初の印象はポニーテールが似合ってて、ちょっとそばかすのある、笑顔の可愛い細身の女子。おっとりした喋り方、優しそうな雰囲気で皆から愛される感じの人

この先輩が、のちの彼女である。

部長と副部長は3年生からも信頼が厚い人達だった。真面目で実力もあるけど、肩に力の入っていない所が選ばれた理由なのかもしれない

その頃でも、自分はまだ練習用のページを一枚もクリアできていなかった。そんな自分を気にしてくれていたようだ。たまに声をかけてくれていた。でもこの頃は何とも思っていなかったと思う、お互いに。


校舎の桜が咲いて、空気も暖かくなってき始めた。新しい一年生が入ってくる。

うちの学校は3年生は一階に教室があり、1年生の教室は3階にあった。

3年の先輩達は1階にあるベンチに休憩時間になると必ず何人も出てくる。そして上を見上げるなり

「年中花見ができんだぜ…」らしい。まあ、わざわざ言葉にしなくても分かります、男なら。

で、2年にもなると自分の部活にも後輩ができるので、一応は先輩になるから教えないといけないということもあり、少しだけ部活に出る日数を増やしすことにした。

部活に出る日が増えて、3年の先輩達からも

「お、頑張ってるねー」と声を掛けてくれることが増え、部活でも自然と話すことが増え、コツとか教えてもらって、自分もだんだんとコツが分かってきて、何だか楽しくなってきた。中条さんにも会えるし、少しずつ会話も増えていった。なんだかいい感じ、もしかしたら付き合えるかも?なんて少し淡い期待をしていた。


もうすぐ夏休みという頃、夏の大会に向けてメンバーが発表になった。

なんと自分も補欠という形で出ないといけないらしい。ここ最近バイトにあんまり出られなかったから日数を増やしたかった(遊びたかった)のに…


仕方ない、夏でも部室はクーラーついてて快適だし、まあ悪くないか、中条さんにも会えるし。とか休み時間に教室で考えていると、急いでやってきた友達から嫌な話を聞いてしまった。

「中条さん、最近付き合ってる人いるみたいだよ」



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