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#17 春を迎えられなかった恋

二学期の最終日は一緒に帰れなかった

部長と一緒に帰るらしい

(ま、明日会えるからいいか)

一緒に帰れると期待していたが、仕方がない

(この日は人も多いし、目立つもんな)

僕も明日休むから今日は代わりにバイトに入っていたし、どちらにしろあまりゆっくりできないか、と自分に言い聞かせる

バイト先で制服を着替えていると、同じシフトのやつがやってきた

「彼女できたんだって?良かったじゃん」

とイジられたが、満更でもなくニヤニヤしてしまっていたと思う

「で?どこまでいったの?もしかして最後までいっちゃったとか?」

…ん?僕は一瞬固まった

(まだ手も繋いでないわ)

考えもしなかった。恋人なら確かにそういう、なんやかんやがあるもんだ

全然意識してなかったのに、そーゆう情報が入ると、途端に頭から離れなくなってしまった。

僕はまあ、まだ付き合いたてだからとその場は誤魔化したが家に帰っても明日はどうしようか、と頭がいっぱいだった。だって明日はクリスマスだ、キスとかしちゃおうかな?とか、想像してはどうやったらそんな風に持っていけるのか、皆目見当がつかないでいた


アカネちゃんからメールがきた

「明日9時に駅だよ?ちゃんと覚えてる?」

「うん、覚えてるよ。アカネちゃんこそ寝坊しないでねー」

「するわけないじゃん、初デートだよ?」

初デートという文字だけで、テンションが上がってしまっている自分がいた

「可愛い格好、期待してます 笑」

「えーなにそれ?笑 なんか恥ずかしいなー、私服で会うのって初めてだよね」

ライブの時は学校帰りで制服だったから、まだ見たことなかった。僕はその時私服だったから。と言っても、上下ユニクロの普通のTシャツとジーパンだったと思う。

「明日学校の人に会うかもね 笑」

「そーだよね!クリスマスだもん、私の友達も彼氏とデートって言ってた」

「お、じゃあダブルデートになるかも?笑」

「え、絶対ヤダ 笑 恥ずかしいじゃんお互い」

「おれも 笑 せっかく初めてのデートだし」

そんな、なんでもないメールが、楽しい。

あんまり遅くなると、明日の朝ツラくなるから早めにメールも切り上げて布団に入る


布団に入ってもなんだかワクワクが止まらない

(あ、そーいえばおれちゃんと返事してなかったっけ。…明日正式な返事しなきゃな…それから手を繋いで…キスできるかな…)

そんなこと考えてたら、寝てしまっていた



朝、とても寒くて、目が覚める



カーテンを開けると

小さな白い塊が、風に吹かれて舞っている


(あ、ホワイトクリスマスだ)

窓から見えるその光景に少しの時間見とれてた


家を出るまで気付かなかった

降り止まないことを期待して、空ばかり見上げていたから

足元には積もってはいなかった








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