#16 春を迎えられなかった恋
次の日から一緒に帰るようになった。
なかなか会える時間は少ないから
部活にも土日以外は毎日出るようになって
自然と、できる限り会いたくなっていった
自分でも不思議だ
そんな風に長谷川さんのこと考えたことなかったのに、付き合い始めたらなんだか気になって仕方なくなっていった
うちの学校は校門から長い坂が続く
僕らは歩いて、長谷川さんの乗るバス停まで向かう
大体30分くらいだろうか
お互いゆっくり歩く、というか女の子と歩くとなんかいつも自分が歩いてるペースで歩けない。歩幅が違うからかな?
なるべく会話が途切れないようにずっと喋ってたと思う。とは言っても、長谷川さんが大体話してるのを僕が聞くスタイルだった
長谷川さんは、おしゃべりってわけじゃないけど、会話がスキみたいだった。僕は素直に反応するだけで、長谷川さんはとても楽しそうに見えた
「そーいえばさ、長谷川さん名前なんて言うんだっけ?」
「あれ?覚えてないの?アカネだよー」
「そーだった!アカネちゃんって呼ぶって言ってたよなー。普段なんて呼ばれてる?」
「いいよ?アカネちゃんでも。なんか加藤くんから言われるの…恥ずかしいけど 笑」
「じゃ、アカネちゃんで」
「加藤くんは名前…シュンだったっけ?」
「そうだよ。でもなんでもいいよ?」
「じゃあ、シュンって呼ぶね」
「なんか…恥ずかしいな 笑」
「でしょ!?私も一緒」
そんな会話だけで、胸が踊る日がくるなんて
途中で運動部の同級生達とすれ違う。
「おいー加藤!なんだお前羨ましいじゃねーか彼女とイチャイチャしてんなよー!」
と言いい彼らは苦しそうに坂道を走りながら登っていく
(あれ?マジか、ニヤニヤしてた?)
顔が赤くなるのが自分でも分かる
隣で長谷川さんも、黙って下を向いてた
「長谷…アカネちゃん、ごめんね、なんか」
「んーん、大丈夫。でも、、やっぱり照れるね」
少しだけ…沈黙が続いた
バス停にはあっという間に着いてしまう。バスも大体10分もしないうちに来てしまい、
いつも目の前でお別れが待っている
彼女はいつも通り、後ろの方の僕に見える方の席に座ってくれる
バスの折り畳みドアが閉まる度ちょっとだけ、切なさみたいなものが胸をザワつかせる
(明日になればまた学校で会えるのに…)
この気持ちはすぐに慣れるかと思ったけど、毎回そうだった
楽しいことが終わる時ってそーいうもんだけど
*
この頃の僕は完全に恋に浮かれていたと思う
3年生が休憩時間移動しているのを見かけると窓の外を見て、無意識にアカネちゃんを探してしまっていた
休憩時間用も無いのに3年生の渡り廊下の近くを通り、偶然を装って部長やその周りのライブの時から顔見知りの先輩達に声をかけてそこにアカネちゃんもやってきて、皆で話したりしていた
放課後、部活ではあまり喋れないけど、同じ空間にいれるだけでもどこか満足だった。
帰りは一緒に帰れる
ある日の帰り道、アカネちゃんが
「クリスマス…予定ある?」
「無いよ!バイトも休み。アカネちゃんは?」
「シュンと一緒に過ごしたいな」
「おれもアカネちゃんと過ごしたくて、隣町にデート行こうか」
「うん!行きたい!どこにする?」
そんな感じで2、3日の帰り道は2人で盛り上がった
(最終的にお決まりの映画→買い物→ご飯→プリクラの流れになるんだけど)
*
その年はちょうど土曜がクリスマス。学校も前の日が冬休み前の最後の日だった
前日の金曜日テレビで週間天気予報ではクリスマスの日、雪が降るかもしれないと言っていた