#15 春を迎えられなかった恋
パソコンの前に長谷川さんが座っている。
帰り仕度をしている最中だった
「あっ…」
一瞬だけ、驚いた顔の長谷川さんを見て、近づきながら
「久しぶり、元気だった?こないだライブ見に来てくれてありがとう」
と、喋りながら長谷川さんの近くまで行く
とりあえず、隣の席につく
正面を見て、ちょっと待つ。すると長谷川さんが
「カッコよかったよ。ドラム。見入っちゃった」
「またー、ギターのやつとかカッコよかったでしょー?」
なんて、適当な返しだ。我ながら、ビックリする
「んーん、ドラムが1番カッコよかったよ」
…
2人とも沈黙する。
野球部の掛け声だけが響いていた。
…
「あのさ、ごめん。茶化しちゃって。ちゃんと返事しようと思って。残ってくれてありがと」
「んーん、全然。私こそ、ごめんね。急にあんなメールしたから驚いたでしょ?」
「うん。めちゃくちゃビックリした。だけど、嬉しかった。何というか。その…
おれも…付き合ってほしい」
「…ほんと!?…いいの??」
長谷川さんが照れながら、聞いてきた。
僕はまともに目を見れなくなっていた。
「でもさ、その…まだ好きかどうかは…正直分からないんだ。だから、付き合いながら…ってなるんだけど、それでも…いいかな?」
ゆっくり長谷川さんの顔を見つめた。なんて言われるだろう。やっぱり嫌だって言われるんじゃないか、そう散々頭の中で想像していた。
「いいよ。嬉しい」
長谷川さんは僕の方を向いて、ジッとこっちを見ていた。
「少しずつ、お互い知っていけばいいよね、私も加藤くんのこと知らないことばかりだし」
その言葉を聞いて、僕は少しホッとしていた
「返事、こんなだけど…いいのかな?」
「いいんじゃない?皆そうだよ、きっと」
長谷川さんは、時々僕より男っぽい。見た目とは裏腹にサバサバする時がある。
でも、そこが良かった。僕は優柔不断だから、なんでも決めかねる。僕からしたら長谷川さんのサバサバしたところはなんだか心地よかった。
こうして僕達は付き合うことになった。
部長には内緒にすることにした、お互いやっぱり気まずかったから、タイミングを見て2人で話そうと決めた。
その日は校門に部長を待たせていたから、長谷川さんは先に出ていった。
「また、メールするね」
走って教室を出て行く後ろ姿をずっと見送って
僕は教室に1人残っていた。なんだか、どっと疲れたような、でもちょっと楽にもなったし、嬉しかったりで。不思議な気分だった。
(はぁー…なんだかまだ実感わかないや)
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