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泣きたい時に読む小説「CALAMITY」vol.11

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前回のお話 ↓


祝詞が第一節、第二節へと進むにつれ、お焚き上げの炎が大きくなっていく。

最初は人の背丈ほどの炎だったが、3メートルを超えるであろう炎柱となる。

太鼓を叩く速さも、祝詞が進むのに合わせて速くなっていく。

最初のゆったりとしたテンポが、だんだんと激しくなっていった。

そして第三節が終わったその瞬間、夜空に5本の細長い赤い光が駆け上がった。

その光は境内の上空で交わり、やがて、ひとつの光の玉へと変わった。

暫くすると、光の玉はゆっくりと下降し始める。

そして境内の中央で静止した。

宮司が俺に最後の確認をする。

「今ならまだ引き返せせます。辞める気はないのですか」

俺はじっと光の玉を見つめ、自分の決意を固める。

しかし、いざとなると本音が溢れ出す。

雪奈。本当はもっとお前と一緒に幸せな日々を過ごしたかった。

お兄ちゃんらしいこと、もっとしてやりたかった。

父さん母さん、そして妹である雪奈に囲まれ、楽しい日々を送りたかった。

この光に飛び込めばすべてが終わる。

幸せだった日々も、俺の人生も、そして雪奈の苦悩も。

俺は宮司の言葉に首を横に振った。

待ってろよ、雪奈。今その苦しみから俺が救ってやるからな。


俺は光へと1歩、2歩と歩を進める。


一歩一歩踏みしめるように。人生を振り返るように。


過去の記憶がない孤児院時代。生きていることの意味が分からなかった。


里親との生活。


里親は俺のことを実の息子のように思ってくれたが、それでも俺は一枚の写真が気になっていた。


いくつもの街を渡り歩き、妹を探したまわった日々が蘇る。


ずっと探していた。ずっと追い求めていた。


そして、雪奈に出会った。



楽しい日々だった。

幸せな日々だった。



父さん、母さん、そして妹と一緒に過ごした日々が、走馬灯のように過ぎ去る。



あと一歩。あと一歩踏み出せばすべてが終わる。

もう思い残すことはない。



短かったけど、幸せな日々をありがとう。

雪奈。俺の分も楽しく生きるんだぞ。




その時であった。

何かが背後から俺の横を通り過ぎ、光の中に飛び込んだ。

それと同時に背後から聞こえる悲鳴。

「いやーーーーっ!」

母親の声だった。

俺は何が起きたのか理解できずにいた。振り返ると、そこには泣き崩れる母親。

父親の姿がない。

そして光が次第に弱まっていく。

弱まるにつれ、何かが見えてくる。

人影のような、なにかが。

光が完全に消えるのに、そう時間は掛からなかった。


たった今まで光があった場所に現れた姿に俺は叫んだ。



「父さん!!!」



宮司たちが見守る中、父親の姿が次第に鮮明になっていく。



しかしその姿は無残なものだった。

肌の所々は剥がれ落ち、赤い光を放つ。そして目は血のように赤く輝いている。

俺は古文書に書いてあった一節を思い出した。

古来から、この地の厄災を祓い、その厄災は5つの祠に封印、蓄積され続けているのだという。

そして、その封印を維持するために厄災の巫女である雪奈の命を蝕んでいったのだ。

光の玉の正体は恐らく厄災そのものなのだろう。

それも、何百年にも渡る厄災の塊だ。それが一気にに父親の身体へと流れ込んだのだ。

そう、「人化の儀」とは、厄災の巫女を勤めから解放すると同時に、祠の封印を解き放つ儀式だったのだ。

涙を流すことも忘れ、呆然と立ち尽くす俺。



すると父親は俺を見上げ、力一杯声を振り絞って言った。



「わが...こ...」


「...を...見殺し...にする...親が...」


「...どこ...の世にいる...んだ...」


声は虚ろで力なく聞こえたが、その言葉に父親の真剣な思いがこもっているのが伝わってきた。


俺は言葉を発することできなかった。ただ呆然と見つめることしかできなかった。


「真人...」


「おまえは...生きろ...」


「母さ...んと...雪...奈を...頼んだぞ...」


その瞬間、俺はすべてを理解したかのように、涙を流しながらその場に膝をついた。

そして、父親の姿が徐々に黒ずみはじめ、やがて身体全体が黒い灰となり、その姿は消えていった。



泣きたい時に読む小説「CALAMITY」vol.12
エピローグ へ続く…

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