見出し画像

【読書感想】「自傷的自己愛」の精神分析/斎藤環

タイトル:「自傷的自己愛」の精神分析
著者:斎藤環

・おすすめする人

自己責任の強い人
自傷してしまう人

・おすすめポイント

①自傷は自分ではなく、社会のせいでもあると気付ける
②自傷の柔らげ方が書いてある
③“はじめに”の30ページだけでも読んで欲しい

①自傷は自分ではなく、社会のせいでもあると気付ける

少なくとも私は、自分が辛い思いをするのは全て自分のせいだと考えます。
なぜなら、辛いと感じる(感じようとしている)のは自分だから

例えば、自己啓発の本にはこんな事が書いてある。
「つまらない仕事の中にも楽しいと思えることを見つけないとダメだ」
「道端に咲いている雑草にも感謝してみる」

一見、いい事が書いてあるように思える。
だけど、「楽しいと思える事が思いつかない私はダメだ」、「雑草に感謝できない自分は雑草以下だ」と、本気で考えてしまう。
こんな簡単な事、他の人はできているのに、自分にはできないなんて…

結局は、ダメな自分を責めてしまう。

本書では、私のように、他人と比べて自分は劣っていて自分自身を傷つけているが、逆説的に自分自身に強い関心がある、という感情を「自傷的自己愛」と呼んでいます。

簡単に言えば、常に自分を貶しているのって、常に自分に関心があるよね、ということ。

そんな自己否定的な感情ですが、それは現代の社会システムに責任があると言います。

苦痛の元凶はネオリベラリズムという名の「システム」として漠然とイメージされていて、このシステムは彼らに「自己責任」という規範を要求します

本書p、22

ちょっと分かりずらい…、特にネオリベラリズムってなんだ?
という感想を抱いたなら、それが大切です。
こういった、不特定でわかりづらい空気みたいなものに、苦しめられているのです。

(ネオリベラリズムは、規制されずに、自由にモノを売買しましょう的な解釈で大体合ってる…、と思います)

特定の誰かが自分を苦しめているなら、その人のせいにすればいいのです。しかし、現代は特定の誰かではなく、「自己責任」という空気が漂っていて、怒りをどこに向ければいいのか分からなくなります。
だから、被害者なはずの自分を加害者として、傷付けてしまうのです。

著者は、そんな人に、もっと自分を苦しめる社会を批判したり、政治家を叩いてみてもいいんだよ、と教えてくれます。


②自傷の柔らげ方が書いてある

本書のp、219以降には、具体的に自傷の柔らげ方が書いてあります。
簡単に紹介すると、

1、今いる環境を変えること
2、家族以外の人と親密な人間関係を作ること
3、自分のせいと考える前に、自分が被害者なのではないか、と考える
4、好きなことをやる
5、運動する

こんな感じ。
「書いてあることができないから自分が嫌いなんだよー」ってなると思います。なので、あくまでこれらは参考程度に。

でも、私だったら①の環境を変える、はフィフティーフィフティーですね。
引っ越しして1人暮らしをしたら、とても良かったです。
何より1人の時間が作れるのが自分に合っていたんですね! 好きなもの食べたり、誰の断りもなくフラフラ外に出歩いたり。何より家の中では適当な格好でいられる、サイコー!!ですね。

ただ、転職は合わないことが多かったなぁ。
基本的に人間関係を築くのが苦手なので、転職するとその場の空気になれるのがとっっっっっっても苦痛です。
反対に、長く働いている職場の方が、居心地は良くなってくるんですね。
それなのに辞める理由は?
居心地は良くなってくるけど、日本人の年齢グラフのように、弧を描いて後半に行くにつれて居心地が悪くなってくる。
なんかね、ずっとその職場に居続けるのも辛いんよ。

さて、私のことはおいといて。
個人的には、この具体的な5つの方法よりもグッときた箇所があります。

あなたが他者を無闇に否定しない倫理的理由があるというなら、まったく同じ理由で、自分自身も否定しないで欲しい

p、196

あぁ、そうじゃん。
自分も他人と同じ人間じゃん。
他人の人権ばかり認めて、自分は傷付けて良いって、なんかそれって、「倫理的に」違うよな。

この倫理という言葉、私は好きなんです。
不安定な自分にとって、倫理という規範は、拠り所になります。

その倫理が、自分を傷付けるのは間違っていないか?と問いかける。
大切な気付きです。


③“はじめに”の30ページだけでも読んで欲しい


本屋もしくは図書館で立ち読みするなら、はじめの30ページを読んでみて下さい。
基本的に、どの本でも言えることですが、はじめにで興味が惹かれたら、読むことをお勧めします。

私だったら、①で紹介した、自分ではなく他のせいにしてみる、という部分nひかれました。他には、例えば進撃の巨人の作者が出たり、黒子のバスケだったりと、割とマンガが出てくるのが特徴です。知っている人は、こういうのは嬉しいですね(他にも本書の中盤以降で『僕の心のヤバいやつ』が出た時は、おっ!となりました)

進撃の巨人の作者の例では、成功しても自己肯定感が得られないというものでした。
そして、まさに自己肯定感の低さこそが、作家の作品への原動力になるそうです。

私がこうしてブログを書いているのも、他の作家さんと同じように、自己肯定感の低さからなんだと思います。日々、満足していたら、こんな長い文章は書かないと思います。

そう考えたら、悪い面ばかりでもないのかな。

私は自信を持つ時がありません。だから物を書いているのです。自信のないことが私の健康であるわけです。

p、183(サガンの言葉)

いいなと思ったら応援しよう!