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【読書感想】アニメ療法/パントー・フランチェスコ

題名:アニメ療法
作者:パントー・フランチェスコ

■気力の変化 ※読み終えて気分がどのくらい高揚したかの個人的指標(1~100)

読前気力「50」
読後気力「54」

■読後の一言

アニメを見ることで心のケアをするという新しい発想が面白かった。
アニメがオタクカルチャーから一般に浸透して、ついに医療にまで及ぶとは。

アニメ療法は、既存のアニメではなく、専用のアニメを作成する。
対象者は重いうつ病を患っている人ではなく、軽度に不安を抱えている人になる。
その人がアニメを鑑賞して、登場人物に感情移入することで、精神的な治癒を目指す。

個人的には、個人で鑑賞する点に是非を持つ。
従来のカウンセリングは、医者と患者の会話が基本となる。
アニメ療法は、アニメと鑑賞者なので、基本的に一人で完結する。
この「一人で完結する」というのは、可能なのだろうか。
社会から孤立した主人公が社会復帰するアニメにして、鑑賞者自らが積極的に人と
かかわるようにするのだろうか。

面白い発想である反面、色々と疑問が浮かんだ。

■誰かに勧めるなら

・カウンセリングに興味がある人
・アニメに興味がある人

■3つのポイント

①アニメ療法とは何か
②アニメが持つ教育的な意義
③アニメ療法を実現するための課題

①アニメ療法とは何か

"読後の一言"でも触れましたが、アニメ療法とは何かを改めて書きます。

アニメ療法は、フィクションの要素を持ちながら人間の葛藤、身体的、精神的、関
係的、社会的苦悩を
リアルに描く作品の鑑賞を通じて精神の治癒効果を狙う療法である。

本書p.170

アニメ療法の対象は、精神疾患ではなく、心のアンバランス(≒心理的な負担)になる。

鑑賞者は物語を見るだけにとどまらず、ストーリーやキャラクターと交流して、カウンセリングが成される。
物語に感情移入することで、自己変容が期待される。
そのため、アニメのキャラクターも、鑑賞者と同じような心のアンバランスを抱き、それを乗り越える物語によって、あこがれや自己投影が生まれる。

鑑賞者は、AIを搭載したキャラクターとチャット等で交流してアドバイスやコーチングをもらう。

以上がアニメ療法になる。
私的には、アニメを一方的に見るのではなく、アニメ側からも語り掛けてくるのが面白いと思った。

なお、本書はもっと詳しく書かれていて、著者自身の研究も載っています。

②アニメが持つ教育的な意義

アルバート・バンデューラが提唱した社会的学習理論というものがある。
社会的学習的理論とは以下の通り。

人間が他社を観察してその行動を模倣するモデリングを通じて、様々な社会規範や
慣習、行動を学習しているとする理論である。

本書p.56

例えば、被験者の子供たちに、人形に対して暴力をふるう大人の映像を見せる。
この時、大人も一緒に映像を見ているのだが、一方のグループは暴力を褒めて、別のグループでは批判する。
すると、大人が暴力を褒めたグループの方が、子供たちの暴力行動が増える結果となった。
このように、観察対象が庄さんあるいは批判されることで、それを見た者の学習に影響が出ることを「代理強化」という。

社会的学習理論は、生身の人間に限らない。
その為、アニメなどフィクションのキャラクターもモデルとなりうる。
これを応用すれば、アニメ療法によって鑑賞者に良い行動を促す期待ができる。

ちなみに、医療分野では物語を使った心理療法が既に存在している。
例えば映画療法がある。
映画を観た後に、セラピストと会話をすることで患者の問題を解決していくやり方だ。
映画療法などで集めた理論は、アニメ療法にも応用できる。

③アニメ療法を実現するための課題

課題としては、二つの社会変革が必要だと指摘している。

まず、精神疾患、精神の健康の捉え方を変えること。
患者として薬を服用し続けるのではなく、物語作品を通じて心をケアしていくのが望ましい。
例えば、拡張現実を使った「ポケモンGO」がある。
これは、特定の場所に行かないとイベントが発生しない。
その為、これまで引きこもっていた患者が、外へ出てほかのユーザーと一緒にプレイする社会現象が起きた。

こうした、娯楽によってその人の問題を解決していくことが、薬の服用よりも大切になる。

もう一つが、医師が医療的に治す「キュア」ではなく、患者の「ケア」を通して、その人の趣味や日常(カスタム)にまで治療の範囲を広げること。
要するに、普段からスマートホン等でアニメに触れることがそのまま治療になる。
なので、病院で医者に診てもらうという心理的に負荷がかかりそうなことが必要ではなくなる。

■執筆後のひとこと

アニメが持つキャラクターと物語の魅力は素晴らしい。
私もアニメを見て心が救われた体験を持っている。
アニメ療法は、著者が指摘している通り、そのアニメにどれだけ没入できるかが大事だと思う。
正直、鑑賞者それぞれにあったアニメやキャラクターの製作って、めちゃめちゃ大変だと思う。
AIでどれだけ実現できるのか分からないので、何とも言えないが。

なので、「こうすればいいんじゃないか」と思いついたことをここに残しておく。

既存のアニメを好きなだけ見る。
その中で好きな作品が見つかる。
その作品を好きなもの同士が集まる。
「こーゆーとこ良かったよね」と話し合い、「ほかにもおすすめのアニメあったら伝え合おう」とライングループを作る。
そこで紹介されたアニメを見て、別のアニメ好きな人と出会い、別のライングループに参加する。

これでいいんじゃないでしょうか?
すでにやってる人もいそうだけど、同じアニメが好きな人の探し方がわからない。

そこをサポートしてくれたら嬉しいな。
そーゆービジネスかボランティアがあったら面白そう!

…、あ、人見知りが得意だから参加しないや。
AIと早く会話できるようにしてください、フランチェスコさん!

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