「地下道の鳩 ジョン・ル・カレ回想録」を見た(ネタバレあり)
まえおき
この映画は、「寒い国から帰ってきたスパイ」などで有名な、ジョン・ル・カレ本名デビット・コーンウェルの回顧録「地下道の鳩」をベースにしたドキュメンタリー映画である。
彼は、MI5、MI6ジェームス・ボンドをはじめとするスパイ小説・映画でも有名な機関に勤めながら、数々のスパイ小説を書いていた作家である。彼の生い立ちから、政府機関での活動をはじめ、節目節目で何を感じ、何を思ったインタビューをしている話だ。
わかりやすい構成
本映画は全編デビット・コーンウェル氏がインタビューアーからの様々な質問に対し、答えるという形式で進んでいく。
ただ、インタビューだけの映像では約1時間半はもたないので、インタビューの内容に合わせ、ドラマ映像であったり、映画化されたコーンウェルの作品のカットが挿入されて映像的にも飽きない構成になっている。
想像を絶する人生
そもそも、彼の父親が詐欺師だった(彼の人生最後までどうやらそういう生活だったようだ)。
どうやらコーンウェルが生まれた時も父親の逃亡中だったというところがかなワイルド。
本人は、父親の詐欺に塗れた生活から、現実から逃避を考えるようになり、頭の中で現実とは異なる世界を創るようになった。
さらに、父親はその後も何度も世界のいろいろなところで、投獄されその度に本人に助けを求めてきて、最終的にはコーンウェル自身にも詐欺を働こうとしたという、かなり飛び抜けた父親だったようだ。
そういった、空想の世界の中からの後の創作活動につながる基礎ができていったように思う。
一時期はオックスフォード大学で教鞭を取っていたが飽きてしまって、スパイになりたいと思いスパイになったといっていたが、そもそもなりたいと思って慣れる職業でもないのでその辺りが凄いとしか言いようがない。スパイになるまでを説明していたが、いまいちそれで慣れるのかがよく理解できなかった。教員に飽きたらかスパイになるという発想もかなり尖っていると思うのだが、これも彼ならではの発想なのか。
スパイ活動の時にベルリンの壁ができる過程を経験しているというのも、大きな時代の流れを経験しているという意味で、創作のネタになっているのではないだろうか。
プロの作家
個人的に一番印象に残って好きだったところは、コーンウェルが自分の仕事が好きで、書く事自体が好きで、自分のことを芸術家だといっていたところだ。
スパイとしての活動をしながら作家としても活躍していたことで、センセーショナルに扱われていたが、一人の作家として活動していた、書くことのプロだったんだというどこか感じられ何か安心した感じがした。