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安住の地を求めて

愛着障害について書いています。

9日目は、愛着障害の人は「安住の地を求めてさまよう」という事について、お話します。

愛着障害の人は、大地に根付く、ということが難しいのではないかと思います。

グラウンディングしにくいんです。

エネルギーが身体からフワッと抜け出して、身体はここに居ながら、何処かを彷徨っているような感じがしているような人もいるかもしれません。

西行という歌人がいましたよね。

西行なんかも、そうじゃないかと私は思います。

「津の国のなにわの春は夢なれや 葦のかれ葉に風わたるなり」「願わくは桜のもとにて春死なん その如月の望月のころ」

放浪しながら歌をよんだ人ですよね。わたし、十代のころから大好きなんですけど。

俳人の松尾芭蕉、種田山頭火もそうですね。

西行は、平安時代の人で、あの時代にひとりで旅するって、なにゆえに?って思います。俗名を佐藤義清といって平清盛とおなじ北面の武士だったんですけど、妻子を捨てて出家したんです。

愛着障害の人は、出家、放浪、遁世する人がいます。たび重なる家出、引っ越し、旅と縁がふかいケースもあります。


シャカも紛れもなく、そういう人ですよね。

シャカのお母さんは、シャカを産んだ直後に亡くなりました。王子として生まれたシャカは、最高の人生を保証されていましたが、出家して、王子の位も妻子も捨てて、放浪の旅にでました。

その根底には、母親との愛着の絆を結ぶこともなく、つねに生きることへの違和感があったことが想像されます。

母親の温もりを知らなかったから、俗世で生きる人生を始めることができなかったのでしょう。

愛着がすべての始まりなんです。

シャカは、遍歴の途中で倒れて死にそうになったとき、スジャータの乳粥を食べて、菩提寺の下で悟りをひらきました。シャカの悟りとは、母親の愛を求めた究極のかたちだったのでしょう。

愛着障害の人は、母なるものを求めている人です。

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私たち哺乳類は、肌と肌をくっつけ合って群れの中で生きていくように、できています。ほかの動物はそれを本能的にやっているけど、人間はちがいます。

愛着障害を起こすのは人間だけです。

愛着障害の人は社会性をうまく獲得できなくて、さまざまな生き辛らさを抱えます。

社会のなかに足場を築いて、うまく自分を生かしていくことが上手ではありません。母親との絆を作れなかったために、他人とのあいだにも絆を作ることが上手くできません。発達障害に似た症状をていします。

あなたは無人島に一人で生きられますか?

西表島の人里離れた無人の海岸で、ひとりで自給自足の生活をしている人がいました。西表のターザン、と呼ばれていて、その人に取材した本も出版されています。

その人の行動は、アンチ文明とか、野生回帰とか、そういったモチベーションから来ているのではないと思います。私は、愛着障害かもしれない、と見ています。

愛着障害の人は、群れのなかにいるより、一人でいるほうが楽な人もいるのです。

出家、放浪、無人島一人くらし。それは苦しみを和らげる麻薬みたいなものだと、思います。本質的な問題から目を逸らしている、とも言えます。本質的な問題とは、愛着障害です。

身体が、芯から安心感を感じられて、大地にグラウンディングすることができますように。

自分のなかに愛と幸せを感じられますように。

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私が自分探しをしていた頃に出会った詩です。

「魂のいちばんおいしいところ」

             谷川俊太郎

どこへ帰ろうというのか

帰るところがあるのかあなたには

あなたはあなたの体にとらえられ

あなたはあなたの心に閉じこめられ

どこへいこうとも

あなたはあなたに帰るしかない


だがあなたの中に

あなたの知らないあなたがいる

あなたの中で海がとどろく

あなたの中で木々か芽ぶく

あなたの中で人々が笑いさざめく

あなたの中で星が爆発する

あなたこそ

あなたの宇宙

あなたのふるさと

谷川俊太郎

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