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Vol.23 養蜂家になることを決意した日

はちみつが好きになったからといって、すぐに養蜂家になろうと思ったわけではなかった。
むしろ、私は20年間公務員として働いていて、「養蜂」なんて自分には縁のない世界だと思っていた。

でも、人生は思いがけない形で進んでいく。
ある日突然、私は ミツバチの世界 に足を踏み入れることになった。
そして、それは 自分の生き方そのものを変える決断 へとつながっていくーー。

心と体のバランスが崩壊… 休職へ

私は 20年間、公務員として働いていた
仕事は忙しく、責任も大きかった。でも、いつの間にか 自分を追い込みすぎていた のだと思う。

ある時、私は 「立ち止まって」しまった
何をするにも気力が湧かず、 自信を失い、仕事に行けなくなってしまった
「頑張らなきゃ」と思うほど、どんどん気持ちが沈んでいく。

気づけば、私は 休職を選ばざるを得ない状況 になっていた。

最初のうちは、「少し休めば元気になる」と思っていた。
でも、家にこもる日々が続く中で、 私は次第に“自分の居場所”を見失い始めていた

「この先、私はどうすればいいんだろう?」

そんな時、ふと 近所に住む父の友人・のぶおさん が訪ねてきた。
彼は後に 私の師匠となる人物 だ。

「はちみつ採るけど、見に来るか?」

突然の誘いに戸惑った。
でも、心のどこかで 「このままでいても…」 という思いがあった。

そして、もうひとつーー。

以前、のぶおさんからもらったはちみつが、驚くほど美味しかった。
「私でも食べられるはちみつって、どんな風に採れるんだろう?」
そんな興味が、わずかに心を動かした。

それでも、私はすぐには決断できなかった。
「少し考えさせてください」と伝えた。

でも翌日ーー

「行くぞ!」

突然の声に驚く暇もなく、私は ミツバチの世界へと足を踏み入れることになった

連れ出された異世界。そこはミツバチの世界。

「どんな格好をすればいいんですか!?」

急な展開に 緊張と不安 でいっぱいになりながら、とりあえず家にあった草取り用の手袋と蚊よけネット付き麦わら帽子を装備(?)。
防護服には程遠いけれど、心の準備なんて追いつくはずもなく、とにかく養蜂場へ向かった。

そこには ブンブンと飛び交うミツバチたち、木々に囲まれた巣箱。
まるで 異世界に迷い込んだような感覚 だった。

最初は怖かった。

でも、ミツバチたちの働く様子を見ているうちに、 次第にその美しさに魅了されていった
彼らは 一匹一匹が役割を持ち、協力しながら生きている

そんな中、のぶおさんがふとつぶやいた。

「ミツバチが一生かけて集めるはちみつの量、知ってるか?」

1匹のミツバチが生涯で集めることのできるはちみつの量はティースプーン1杯

「えっ?」

私は驚いた。

「ティースプーン、たったの 1杯 ?」

ミツバチは一生懸命に花を巡り、蜜を集め、巣へ運ぶ。
その 膨大な努力の結果が、たったのティースプーン1杯 だというのだ。

「たったそれだけ? でも…」

私は 今まで食べていたはちみつのことを考えた

スーパーで売られている大きな瓶。
そこに詰まったはちみつは、 一体何万匹のミツバチたちが集めたものなのか

そう思うと、 なんだか胸がギュッと締めつけられるような気持ちになった

その時、私は ただの「はちみつ好き」から、「養蜂への興味」へと、一歩踏み込んだ のかもしれないーー。

ミツバチが一生かけて集めるはちみつの量は、
たったのティースプーン1杯…
その小さな努力の積み重ねに胸を打たれました。


お師匠の夢(地域を蜜源植物でいっぱいにする)に惹かれて、弟子入り

私は、長い間仕事に追われ、職場と家を往復するだけの日々を送っていました。それまで、自分が暮らしている地域に目を向けることはほとんどなかったのです。

休職し、ふと 自分の地域に目を向けた時、私は ある変化に気づいた

「昔よりも、周りの環境が荒れている…?」

かつては 活気のあった村 も、 高齢化の波に飲まれつつあった
そんな中、のぶおさんは 「この村を蜜源植物でいっぱいにする」 という夢を持っていた。

「ミツバチにとっても、人間にとっても、豊かな場所を作りたいんだよ。」

その言葉が、 私の心に強く響いた

「私の居場所は、ここにあるのかもしれない。」

そんな思いが、少しずつ湧いてきた。

いつの間にか、のぶおさんの夢は 私の夢にもなっていた
そして、私は 養蜂の弟子入りを決意した

お師匠の死。夢を継ぐ

しかし、別れは 突然に訪れた

弟子入りして3年。それでも、まだ全然一人前じゃなかった。
道具の使い方も迷うことばかりで、師匠のような余裕なんて、ほど遠かった。教えてもらいたいことがたくさんあったのにーー
喪失感で、何も手につかなくなった。

「人間って、こんなに簡単にいなくなってしまうんだな…」

そう思った時、ふと 自問自答を繰り返している自分 に気づいた。

「今やっている仕事は、本当に私がやりたいこと?」

まるで 霧の中にいるような感覚 だった。

でも、その霧の中で 一筋の光明 が見えた。

私がやりたいことーー。
それは、お師匠の夢を継いで、 この地域を蜜源植物でいっぱいにすること

そう思えた時、私の中で 進むべき道が決まった

20年勤めた公務員を退職し、 私は養蜂家になったーー。

🌤️ 曇り空の中、一筋の光が見えた日。
師匠の夢を受け継ぎ、この道を進むことを決意しました。


最後に

人生は、時に思いがけない方向へと進んでいく。
私にとっての 「はちみつ」との出会い は、単なる食の好みの変化ではなく、 生き方そのものを変える出来事 だった。

今、私は ミツバチとともに、この地域の未来を作るために生きている

「この村を蜜源植物でいっぱいにする」ーー。

それは、お師匠の夢であり、
今は 私の生き方になった


満開のハナモモ。 こんな景色を未来に残したいーー
そう思いながら、ミツバチとともに地域を守る日々を
過ごしています✨


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かよばぁの孫日記(そろそろ中年)
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