あの時…なぜ損切りしなかったのだろう

期待に満ちた朝

朝の柔らかい光が差し込む部屋で、タカシはいつものようにコーヒーを片手にパソコンの前に座っていた。彼はカジュアルな服装でリラックスし、心には期待感が溢れている。
「今日こそ、勝利の一日だ！」と心の中で自信たっぷりに宣言する。画面にはドル円のチャートが表示されており、確かに上昇トレンドが見て取れる。「これはチャンスだ…！」心の中で確信が芽生えた瞬間だった。
彼は数日前から「円安が進む」というニュースを頻繁に目にしており、SNSでも多くの人が「円安だ」と言っているのも彼の背中を押した。
彼は微笑みを浮かべながら、いよいよエントリーの瞬間を迎える。「これで一発当てて、週末は焼肉でも行くか…」と小さな夢を描きながら、クリック一つで買いポジションを取った。

その瞬間、胸の中には成功のイメージが広がっていた。彼はモニターに映る上昇するチャートに目をやりながら、未来の自分が豊かになっている姿を想像する。部屋の中には、まるでタカシの気持ちを反映するかのように、希望に満ちた朝日が差し込んでいた。
エントリーした瞬間、すぐに含み益が発生し、彼は笑みを浮かべた。「やっぱり俺には才能があるんだ」と、初めての成功に胸を躍らせた。

不安の兆し

しかし、エントリーから数時間が経ち、状況は少しずつ変わり始める。チャートが微妙に下がり始めたのだ。「ん？これは何だ？」タカシは眉をひそめ、画面をじっと見つめる。彼はまだ焦っていないが、心の中に小さな不安が芽生えていた。
「きっとこれは一時的な調整だろう。すぐにまた上がるはずだ」と自分に言い聞かせ、手元のコーヒーを口に運んだ。しかし、その味は先ほどの期待に満ちた一杯とは違い、どこか苦く感じる。彼は手を伸ばして頭を掻く。
「なぜ下がっているんだ」タカシは慌ててSNSで情報を探してみる。
「利益確定の調整が入っているだけで、高値を更新するだろう」と有名な人も言っている。「うん、大丈夫だ。」

だが、下落は止まるどころか、加速していく。「おかしい…どうしてこうなるんだ？」タカシの心臓は高鳴り、含み損が増えていくにつれ、その音は耳の奥で鼓動し続けた。チャートの赤いラインは彼の心の不安を映し出すかのように、どんどん下へ向かっていた。

外の光も少しずつ弱まり、部屋の中は静かな緊張感が漂い始める。彼の画面には、相場の動きが彼にプレッシャーをかけるかのように、じわじわと下がっていくチャートが映し出されていた。

逃げ場を失う心

昼を過ぎ、タカシの抱いていた不安は現実となる。チャートはさらに急激に下落し始め、含み損が一気に膨らむ。「ま、待て…ちょっと何でこんなに下がるんだ？」彼の心の中で警鐘が鳴り響き、手がキーボードの上で震える。タカシの目は画面に釘付けになり、その目には明らかに焦りが浮かんでいた。「損切りするべきか？いや、今は耐えるべきだ…まだ下がるとは限らない」と、何度も自分に言い聞かせるが、心はすでに混乱していた。

「こんなに待ったんだ、もう少し我慢すれば…」タカシは、チャートに釘付けのまま動けなくなっていた。汗が背中を伝い、指先は冷たく、震えていた。画面の向こうで、彼の未来が削り取られていくかのように感じたが、それでも手は動かない。「もう少し…」そう呟く声は、まるで祈りのようだった。チャートの前で目を閉じて、「神様どうか上がってください」そうお祈りをしたが、目を開けても画面が変わらない。

彼の指は不安そうに震え、何度も損切りをしようと決断をしかけるが、結局そのまま動けなくなっていた。希望的観測と恐怖の狭間で揺れ動くタカシは、冷静さを失いつつあった。

絶望の淵で

そして夕方、彼の予想に反して、チャートは一層急激に下落した。もはや含み損は口座のほとんどを食い尽くしていた。「ここまで来て損切りなんてできない！」タカシは目を閉じ、深呼吸する。「あと少し、あと少しで戻るはずなんだ…」

しかし、運命は彼に容赦なかった。相場は反転することなく、タカシのポジションはついに強制ロスカットの運命を迎える。「ああ、やってしまった…」心が沈み込む瞬間、彼の口座にはほとんど何も残されていなかった。

無言でパソコンを閉じ、頭を抱えるタカシ。「なんで、あの時損切りしなかったんだ？」何度も頭の中でその言葉がリピートされる。失ったのはお金だけではなく、彼の自信と未来への希望だった。「もう終わりだ…」

失敗から学ぶ心構え

いかがでしたでしょうか。これは初心者タカシという相場の世界で消えていった多くの人達の代表です。タカシは一体どうすれば良かったのでしょうか。今回のストーリーでは、３つのポイントがあります。

事前にルールを設定する

エントリー前に損切りラインを設定し、感情に左右されずにそのルールを守ること。どれだけ含み損が膨らんでも、冷静に「損失を最小限に抑える」という視点を忘れないことが大切です。

感情のコントロール

損失を見たときに感情的にならず、「損は避けられない」という冷静な意識を持つことが重要。タカシのように恐怖や欲望に負けて判断を誤ることがないよう、心理的な安定を保つために少額取引やデモトレードを活用して練習をしてみましょう。

資金管理の徹底

資金管理を怠らず、自分のリスク許容範囲を超えない取引を行う必要があります。大きなポジションを持ちすぎると、少しの逆行で大きな損失を抱えるリスクが増えます。１回の取引きで資金が飛んでしまうのはもってのほかです。
一般的には、１回の取引きでの最大損失を５％から１０％に抑えるべきと言われていますが、初心者のうちは３％でいいと思います。

最初は、誰もが初心者です。ただ、タカシのように一回の失敗で戻ってこれなくなるような大きな失敗をしてはいけません。
事前の準備と勉強をしっかりとしていきましょう。

ここまで読んでいただいた皆様に、相場の女神の祝福がありますように。

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