見出し画像

小説#4-2 さすらい猫の旅


いや。慰めてもオレにはわからないことだからな


「…オレ、雷が苦手なんだ。」

「?」

ひよは突然始まった話に首をかしげながらも
耳を傾けていた。

「小さい頃、母猫や兄弟とはぐれた時に雷が鳴って、カラスに追われてそれは怖い思いをしたんだ。
 それからずっと雷が苦手で。」


暗くて雨に打たれてボロボロになりながらも逃げきって、やっと落ち着いたと思ったらじーさんにつかまった。

「人間につかまった、と思ったときはもうだめだと思ったよ。

 でもそれからは、あたたかくしてくれて、ふわふわのやつでくるまれて。
 いつの間にか雷の音も消えていた。
 それにミルクまで出してくれたんだ。こんなにいいところはないと、おなか一杯になって、安心していつの間にか寝てしまったんだ。

それからずっとじーさんのところにいた飼い猫だったのさ。」

「じーさんは雷が鳴るときは、怖がるからってオレ専用の毛布をかけてくれて。それがこの持ち歩いてるやつなんだけど。

 克服したわけじゃないし、苦手だけど、誰しもそういうものはある。
 ひよもきっとまだ慣れてないだけだよ。そんなに落ち込まなくていいさ。」


「ゆっくりやればいいよ。」



伝わったかどうか、分からないけれど

一緒に青い空を見上げて同じ時を過ごした。




この記事が参加している募集

おつかれとジュースを奢るような気持ちで頂けると、大変私が喜びます😌✨とても励みになります。