伝説のおとな ゆうさん 過敏な彼氏
心療内科が近くにあったので、なぜかそこから流れてくる人が何人かいました。
わたしは、外来で相談とかしてるわけではないのに、ちょっとドアを開けて
「すみません、ちょっとお話をおききしてもいいですか?」「はい、どんな話ですか?」
「いや僕は発達障害なのではないかとおもうんですよね」「なぜ、そう思うの?」とか、聞きはじめると深みにはまって もうすでに動けなくなるんです。
その日もそうでした。30代かなと思われるカップルがやってきました。
彼女が話します。「この人、水にこだわりがあってそのために もう何度も引越ししてるんです。また引っ越すっていうから…」(あ、はまりそうな私)「水?」
彼氏「水が、痛いんです。シャワーとか浴びると痛くてはじけるんです。」「水圧じゃなくて?」
「ええ」「違うのもあるの?」
「いい水は、吸い付くように流れるんです」「それって成分が違うということ?」
「水道管の問題もあるんですが、それだけではないんです」「ミネラルとか、なんかそんな感じ?」
「優しい水と、そうでない水があるんです」「そうなんだ、もっと教えて」と、まあこんな感じで2時間くらい話して帰って行きます。水の問題もあるけど、自分のことをわかってもらいたいってこともあるんだろうなと思います。そして、彼はしょっちゅう訪れるようになりました。当時は、こんな人たちが、よくふらっと寄っていきました。まあ、駅前だったので、立ち寄りやすい環境でしたが、当時は、日中一時支援などもなかったので、無料でしたね。
ある日、死にそうな顔をしてやってきました。
「さっき、香水を買ったんです。その紙袋を自転車に乗せて家に帰り、袋を開けると香水の瓶が割れていました。その欠片と香水が僕の好きな絨毯にこぼれてしまって…(今にも泣きそうな勢いで、話します)
絨毯をクリーニングに出したいので、クリーニング代をだしてくれと薬局に伝えたんですが、それはできないと言われて…香水を替えることはできるけど、クリーニングはできないと、僕は、香水はどうでもいいんです。絨毯が…あの絨毯は、特別なんです、ものすごく触り心地が良くて毛足の長い、真っ白のふわふわで……
絨毯なら家で洗えないよね と私が聞くと 掃除機でガラスを吸ってそのあと、洗濯機で洗ったら触り心地がかわってしまったそうです。それを クリーニングに出したいと、 うーんそれは難しいかも。
そうか、その絨毯、高かったんでしょと聞いたら
「1980円でした。」
そうかぁ、あのね、今度から気に入ったものがあったら2つずつ買うようにしてみたら。
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