音楽と精神医学(2):ニルヴァーナは、なぜ名曲に“リチウム(気分安定薬)”と名付けたのか?
【ニルヴァーナとカート・コバーン】
本日4月5日はロックバンド、“Nirvana(ニルヴァーナ)”のKurt Cobain (カート・コバーン)の命日です。
Nirvanaはオルタナティブロックの代名詞であり、当時は若者文化のアイコンとして“崇拝”されました(いまでも「Nirvanaを聴かずして、ロックを語るなかれ…」と言う熱狂的なファンもいるそうです)。
そして、このNirvanaのボーカル・ギターをしていたのが、カート・コバーンです。
天才ミュージシャンの夭逝から約30年。
今の若い人たちは、Nirvanaやカート・コバーンの名前を聞いたことがないかもしれませが、“Smells Like Teen Spirit”のサビの部分は、おそらく若い方でも聞き覚えがあるのではないでしょうか?
【天才の自死】
カート・コバーンは、1994年の今日(4月5日)、自宅にてショットガンの引き金を引き、自らの人生に幕を下ろしました。
享年27歳。
音楽の世界を変えた天才が、なぜ自死したのか…。
この謎について、当時は他殺説や陰謀説、またはオカルト説まで飛び交ったそうです。
ひとつ確かだったのは、彼は健康面で多くの悩みを抱えていたことです。
重度のうつ病(のちに双極性障害と診断)、ADHD、薬物依存、原因不明の胃痛に悩まされていたそうです。
【なぜ名曲に”リチウム”と名付けたのか】
Nirvanaの名曲にある、“Lithium(リチウム)”は双極性障害の治療薬で、気分安定薬に分類されます。
70年以上前に発見されたこの薬は、今日でも双極性障害の治療において第一選択薬です。
Nirvanaが”Lithium”をリリースししてから2年後にカート・コバーンは自死しため、「生前、コバーンはリチウムを内服していたかも…」、という憶測が生まれました。
しかし、いとこのビバリー・コバーンの証言によると、彼は双極性障害の治療をしっかり受けていなかったようです。
治療を十分受けなかったカート・コバーンですが、曲の題名にこの薬の名前をつけたのは、彼が心の奥底で医療に助けを求めていたため…、と私は勝手に解釈しております。
Lithiumの歌詞の中で繰り返される、
" I’m not gonna crack.”
というフレーズですが、いろいろな和訳があります。
“crack"を”コカイン”と訳しているものが多いのですが、実は”精神的な欠陥”という意味もあるそうです。
後者の解釈であれば、この繰り返しのフレーズは、やはり彼が助けを求めているように思えてなりません。
【まとめ】
【参考文献など】
1.The Kurt Cobain Suicide Crisis: Perspectives from Research, Public Health, and the News Media. Jobes DA et al., Suicide Life Threat Behav, 1996
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8897665/
2.Even in His Youth. Health Day. December 31, 2020
3.Nirvana - Smells Like Teen Spirit (official music video)
https://www.youtube.com/watch?v=hTWKbfoikeg
4.Nirvana - Lithium (official music video)
https://www.youtube.com/watch?v=pkcJEvMcnEg
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