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映画「ペルシャン・レッスン 戦場の教室」を見て

映画「ペルシャン・レッスン 戦場の教室」を見てきたので、その感想です。

あらすじ

第二次世界大戦中、数百万のユダヤ人大虐殺(ホロコースト)が行われたナチス・ドイツの強制収容所。この生存不可能といわれた絶望の場所で、信じがたい方法で何度も処刑を免れた男がいた。
それは、ユダヤ人の青年がペルシャ人になりすまし、ナチスの将校に<架空のペルシャ語>を教えるという、驚くべきものだった──。

公式サイトより

感想

なんだか・・・生きた心地がしない作品でした。
生きのびたいために嘘を重ね、いつその嘘がバレないかとドキドキし、いつ本当のペルシャ人が強制収容所に来るかと焦り…。
ずっとドキドキして胃が痛くなってました。
というのも自分が嘘をつくのが下手で、すぐにバレてしまうので嘘をつけないからです。

1.実際にあった話をもとに作られたストーリー
ストーリーとしてはおもしろい。この話、実は実際にあった話をもとに作られています。
(ドイツの映画脚本家であるヴォルフガング・コールハーゼが書いた短編小説「Erfindung einer Sprache(訳:言語の発明)」をもとに作られました)
おなじようなエピソードがいくつもあるらしいのですが、頭がいいといわれているユダヤ人にありがちな話なのかもしれません。
あとは、自分たちが意味もわからず大量虐殺されている状況下にいると、頭の回転がいつも以上に早く回るのかもしれません。

2.偶然の積み重ねな導入部分がちょっと入りづらい
導入の部分はちょっとできすぎな感じがなくはなく、わざとらしいというか偶然の積み重ねな感じが否めません。
ペルシャ語の本を手に入れたあとに殺害されそうになる、ちょうど自分だけ弾が外れて生き延びる、親衛隊の大尉がペルシャ語を学びたがってる、テヘランにレストランを開きたい…ちょっと無理やり感があった気がします。
とはいえ、そのあとはぐいぐい吸い込まれていきました。

3.ドイツ側の人間模様がおもしろい
他のホロコーストを題材にした映画と違って、親衛隊(ナチス側)の人間関係の描写が面白かったです。
女性のメンバーと男性のメンバーで恋愛のかけひきがあったり、その個人的な嫉妬が事件に発展したり。戦争中はいつ死ぬかわからないけど、そんな中でも恋愛はあるんだな、と変な感心をしてしまいました。

4.シーンの切り替わりが多い冒頭
一方、映像としては、特に冒頭では短時間でシーンが変わることが結構多く、「あれ?あれ?」という感じでちょっと追いつけない部分があったことも事実。
あとで「あーそういうことなのか」と回収はできるものの、ちょっと置いていかれる感がありました。
ストーリーに引き込まれたら、そこまで気にならなかったかな。

5.嘘ついたもん勝ちかよっていう結末
※ネタバレあり
最後はペルシャ人と偽った男と大尉が2人で強制収容所が逃れ、それぞれ別々に歩いていきます。
大尉はベルギー人になりすましてテヘランへ渡り、空港で堂々と偽のペルシャ語を話して「この男はおかしい」と事情聴取を受けることになります。
対して、男は連合軍に保護され、偽のペルシャ語を作るのに使ったユダヤ人の名前をすらすらと言い始め、周囲にいるみんなが驚きの眼差しを向けます。(ここで作品が終了)
大尉はいくらナチス側の人間とはいえ、勉強熱心で真面目、最初は疑った男でも信用したら誠意を尽くして命を助ける…そんな人が結局は空港で捕まるっていうのがなんとも不条理というか・・。
この2人の男の行く末が正反対に終わり、なんともやりきれない気持ちでした。

まとめ

おもしろいけど・・・おもしろいけど、ずっと胃が痛いし、不条理だし・・・面白くなくはないけど、もやもやが消えない作品でした。
ちなみにこの作品の監督、ヴァディム・パールマンはウクライナ出身。
まさにいま国を乗っ取られようとしている側の国で生まれ育った人です。
彼はいまカナダに住んでいるようですが、この作品と今の故郷を心の中でリンクさせて胸が痛むのかな?とか想像してしまいます。



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