よの22 じゃんけんで負けた方が
普段苦もなくやっていることが突然めんどうくさくなってしまうことがある。
なぜだか理由はわからない。
でも一度めんどうくさいと思ってしまうと、なかなかエンジンがかからないものだ。
ただただ、めんどうくさいだけなのだ。
そんな時でも、一度エンジンが掛かりさえすれば、あとは案外スムーズにいく。
何かスターターの役目さえあればいいのだ。
我が家(といっても妻と2人暮らしだが)では、そんな時、こう相手に持ちかける。
「ねぇ、じゃんけんで負けたほうがやらない?」
めんどうくさくて、どうしてもやりたくない時というのは、(例えば食器の後片付けだったり、ゴミ出しだったり)ほぼほぼ相手もめんどうだと思っているので、相手に押しつけようとすると大抵はケンカになる。
だから、じゃんけんなのだ。
勝てば堂々と相手を動かせるし、負けても自分が潔く動くまでだ。
公平かつ潔い方法なのだ。
ただ。
困ったことに、我が家の奥さんはじゃんけんがめっぽう強い。正直じゃんけんで私が勝った記憶を思い出せない。記憶では、ほぼ私が食器洗いをしたり、ゴミ出しをしたり、コーヒーを入れたり、インスタントラーメンを作ったりしている。洗濯物の取込み、空気の入れ換え、布団引きもやった。隣の部屋のティッシュボックスを取りに行ったり、電気のスイッチを消しに行ったりもした。
最近は、これってなにか不公平なんじゃないかと感じはじめてきている。
本日も夜の食事を終え、食後のケーキが冷蔵庫に控えていた。
「ねぇ。じゃんけんで負けたほうがコーヒー入れない?」と妻が目を輝かせながら持ちかけてきた。
しかし私は、なぜか今日はめんどうくささを感じなかったので、
「いいよ。オレが入れるよ」と言うと、
「え~。やろうよ、じゃんけん」と妻が言う。
仕方なく自信満々の妻とじゃんけんをすると、
なんと珍しく妻が負けた。
だが、
「うそ~」となかなか負けを認めたがらない妻は、ね、もう一回やらない?と私に再度持ちかけてきた。
「いいよ、いいよ。今日はオレが作るから」というと、
「だめだめだめ。お願い、もう一回だけ。泣きの一回、お願い」としつこいので、もう一回だけじゃんけんをした。
すると今度は私が負けた。
これであいこ。
そして勝負。
「じゃ〜んけん ぽん!」
負けた・・。
まあ。
もともと私が作るつもりだったし。
私は台所でドリップコーヒーを作りながら、
なんだか無駄な負けを味わわされて、コーヒーも作って、本当にじゃんけんが公平な手段なのか、いっそう疑わしく思えてならなかった。
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kawawano
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