キャラクターに裏の顔はいらない
人間には表と裏がある。そう言われる。それはたとえば、偽物の顔と本物の顔だ。あるいは建前と本音、善と悪など色々な言い方がある。なんにせよ人間にはどうしても表と裏が出てくる。なぜならば生き物とは変化するからだ。様々な経験や出来事、関係などによって性格は変わっていく。
しかしいちど形成された性格はなくなりはしない。それは蓄積してその人の中に残る。その層になった性格の歴史が、ある時点でのその人の表や裏と呼ばれる部分になるのである。
一方で、キャラクターにはそんな蓄積などはない。確かに設定として、何年生きてその間にどんなことがあって誰との関係があって……そういうものはある。でも本当に、それを経験しているわけではない。言うなれば(というより文字通り)それは空想だ。だからそれはキャラクターの血肉になっているわけではない。
それゆえに、キャラクターには表や裏といったものの元になる経験がない。設定はできるが、それを作り出すのは作者である。けしてそのキャラクターには繋がっていない。中身になどあるはずがない。
そんな純然たる、もしくは残酷な事実がある以上、キャラクターに裏の顔など求めることは無理だ。そんなものはない。設定はできるが、実際にはない。というより、いらない。
大切なのは、そのキャラクターの意志だ。表と裏とは、あけっぴろげにしてもいいことと、そうではなく隠したいことと同じである。キャラクター自身の持っている情報の中で、何がそれなのか、そしてどうして公開してもいいあるいは隠したいのか。そういうことがきちんと設定されていることの方がよっぽど大事なのである。
それこそが、キャラクターに厚みをもたらす。より魅力的にさせる。表と裏の顔なんかよりも。
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