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白川津 中々
2020年6月8日 21:28
香織は部屋で髪を結っていた。 手入れがいきとどき艶やか。烏の濡羽のような純黒には光沢が映りなんとも妖艶な雰囲気が漂っている。「香織ちゃん。天花君、いらしたからね」 扉を挟んで部屋に投げられたのは母親の声である。香織は「はぁい」と返事をして姿見の前で姿勢をただす。 おかしなところはないかしら。 変じゃないかしら。 毎日幾度も見ている自分の制服姿を確認してし、ようやく「うん」と頷
2020年6月8日 21:27
思いがけない出会いに香織は一瞬胸高鳴ったがすぐさま現状を思い出して我に帰りズボラな顔とボロをまとった身体を隠そうとした。しかし居間にはタオルも遮蔽物もなく、小さな掌で必死に隠蔽しようとしてワタワタと珍妙な舞を披露するだけである。完全に混乱している。「すみません。勝手に上がり込んでしまって……」「それはいいのだけれど、いったいどうしたの?」 母が尋ねるのは当然浮かぶであろう疑問。子供と
2020年6月1日 00:14
カクヨム 睨む子の視線から目を逸さず敵意も反抗心も受け止める母という構図は一般家庭においてしばしば見られるありふれた光景であったが漏水家では初の事態であった。 場所は居間へと移った。両者退かぬ気配。一触即発の緊張感が家庭に走る。「何やってたの。椿さんと……!」 相変わらず香織は天花との密会(というわけでもないのだが本人はそう思っている)について追及し目を吊り上げる。今にも掴みかかり