6curry& まちづくりにつなぐこれからのコミュニティの育み方
こんにちは!加和太建設 広報担当の村上です。今年1月、事業譲渡を経て加和太建設に仲間入りした新しい出会いを楽しむ、会員制のスパイス酒場「6curry」。
4月に「6curry&」というブランドに進化するかたちで、「6curry&sauna」(三島店)、「6curry&bar」(八重洲店)がオープンし、新たなチャレンジがスタートしたことを受けて、事業責任者である新井一平さんにインタビューを行いました。
「なぜ、建設会社がカレー店を?」と驚かれた方も中に入るかもしれませんが、一平さんのお話から見えてきたのは、加和太建設が取り組むまちづくりを一層加速させてくれそうな「コミュニティの育み方」のこれまでと、これからでした。
少し長いインタビューですが、多くの方にご覧いただけたら嬉しいです。
6curryとは? - 「Experience the Mix.」という合言葉とこれまで育んできたコト -
今回お話をお聞きした方
新井 一平さん
静岡県三島市出身。2017年 東京で6curryの立ち上げに参画。コロナ禍や自身のライフステージの変化を経て加和太建設の一員となり、2023年4月に「6curry&」として新たなスタート。
-- はじめに、6curryがどんな場所なのかを教えてください。
6curryは2017年頃に「カレー好き同士で集まって何かしよう!」という声かけから集まったメンバーで、カップカレーを開発し、Uber Eats専門店としてスタートしました。当時、いち早く「ゴーストレストラン」*という在り方をキャッチアップし実現したことで、多くのメディアにも取り上げていただきました。
* ゴーストレストランとは:実店舗を持たず、デリバリー販売を中心とする業態のこと
一方で、僕自身はオープン後にひたすらカレーをつくって配達員に渡すという体験を2ヶ月くらい続けていたら、人生で一度も出たことがなかった蕁麻疹が出るほどストレスを感じてしまい…。というのも、僕の中には「カレーが単なる消費財になってしまう」ことへの違和感があったんです。この事業をつくる過程そのものが、エンターテインメントみたいだと感じていたことと、大きな乖離ができてしまって。
この体験をきっかけに、僕らは6curryの在り方を大きく転換して、会員制の店舗を構え、仲間や来店してくださる方々と、一緒に場の在り方を創ることに舵を切りました。
カレーだけでなく「つながり、混ざり合う楽しさ」を提供する。試行錯誤しながらさまざまな仕掛けを導入し、「Experience the Mix.」というコンセプトも取り組みを追いかけるかたちで生まれました。
-- コミュニティをつくることが当初から目的にあった訳でなかったのは意外です。その後どんな風にお店をつくってきたのですか。
方向転換をし、会員制の実店舗を設けたのが2018年9月です。そこから運営をする中で、コミュニティを育む仕掛けを1つひとつ、つくっていきました。
最初は会員になっているメンバーが無制限にゲストを連れてくることができましたが、貸切に近い状態になってしまいコミュニティが育まれないことから、ゲストの人数制限を設けたり。
スタッフが飲食オペレーションだけに追われず、積極的に来店するメンバーとコミュニケーションを取り、みんなをつなげる役割として機能するように「MIX STAFF」と位置づけたり。
そうした環境を整えると、次第にメンバーが主体となる仕組みも増えましたね。
例えば1日店長の仕組みは、僕が地方を回ってイベントをしていた頃に出会った人とのコラボレーションがきっかけです。
長崎県で味噌づくりをしている方で、ちょうど東京に来るタイミングで味噌を届けてくれるという話から、味噌を使ったカレーをつくろうという話に発展して。せっかくなら、その人に主役になってもらう場をつくりたいと思って、1日店長をしてもらったんです。その味噌の話や、その人自身の話をしながらの交流は、メンバーにも本当に楽しんでもらうことができました。
「振る舞う側に立つ」という越境的な体験が、新しい出会いや楽しさを生むことを実感し、その後6curryの特徴的な仕組みとして定着しました。
-- メンバー主体の取り組みというと、他にも部活動がありますよね。
1日店長制度をスタートして1年後ぐらい、コミュニティも徐々に育っていって、メンバーが自ら部活動を立ち上げてくれたんです。
メンバー同士が、本当に仲が良くて。当時、毎日6curry来る人たちもいて、定休日にお互いに会えないことが寂しいというところから、「みんなで集まってご飯を食べに行く」みたいな緩やかなかたちで部活動が立ち上がったんですよ。
その後は6curryとして正式に部活動と銘打ち、入口を設計しました。そうすることで、入りたい人が入りやすく、部活を立ち上げた人たちももっといろんな人たち関わってもらうことができます。
結果として、思い思いにメンバーのみんながたくさんの部活動を立ち上げてくれました。こうやって、楽しいことや6curryらしさは、メンバーのみんなのおかげで育まれ、定着して行きました。
コロナ禍を経て、三島へやってきた理由
-- ここまでお聞きしたメンバーの関わり方があったからこそ、6curryがコミュニティとして醸成されてきたことを感じます。一方で、この数年間はコロナ禍で色々な運営の難しさもあったことと思います。
コロナ禍の期間は、6curryが本当に大切にしたいことを見つめ直す時間でもありました。
「6curry Zoom店」と名付けてオンラインの場を作ったり、デリバリーの事業を再び行なったり…。いろいろと模索しましたが、そうした取り組みは6curryの良さや在り方を補強するものだったり、新たにきてもらうきっかけとしての側面が強くて。6curryというコミュニティの価値は、会社でも、自宅でもなく、リアルなその場に行くことによってメンバーが「自分らしくなれる居場所」であることだったんだと再認識しました。
新しい出会い、新しい気付きや発見はリアルな場だからこそ、ライブ感があるからこそ、生まれる。改めて、6curryはこの部分を大事にしようと思いました。
-- 東京で再認識した価値提供を、再び東京でチャレンジしていくという選択肢もあったと思います。そんな中でも、どのような経緯で加和太建設の仲間になり、三島という場所でリスタートするという意思決定をされたのでしょうか。
僕自身のライフステージの変化もきっかけの1つで、もともと地元である静岡県・三島市での6curryの展開を検討していました。
それに加えて、6curryの在り方を大切にするために、改めて事業収支の在り方とコミュニティをつくることのバランスを見つめ直したかったというのも、大きいですね。
6curryの良さの根源には、「ハレの日」と「ケの日」のバランスがあると思っているんです。
コロナ禍でより厳しい環境下になり、経営を続けていくためには、現実的には来店人数や単価も気にしなければいけないことに改めて直面して。毎日1日店長がいて、その店長が声をかけてくれたゲストがたくさんいて…と、気付いたら毎日が「ハレの日」のような状況になってしまった時期があったんです。
6curryが「自分らしくなれる居場所」だとしたら、やっぱり「ケの日」がちゃんとあって、たまに「ハレの日」があるから、それが成立するんですよね。
常に売上のトップラインを伸ばすというアプローチが求められる構造にしてしまうと、コミュニティは崩壊してしまう。だから、コミュニティをつくることで、さらにその先に提供できる価値を増やせるような場所にお店を持つことが理想だと考えていました。
そんな風に考えていたところに加和太建設とご縁があり、LtG Startup Studioの一角に店舗を構えることになりました。
この場所には元々創業を目指すひとが地域内外から往来がありますし、6curryが介在して地域と地域の外側とが混ざり合うようなコミュニティづくりを後押しし、加和太建設の取り組むまちづくりに貢献できるような相乗効果が生み出せたら、6curryもまた1歩進めるんじゃないかなと思っています。
「帰ることができる場所」が複数ある豊かさを目指し、「6curry&」へブランドリニューアル
-- このリスタートにあたり「6curry&」という新しいブランドにリニューアルしました。この意図について教えていただけますか。
「&○○」の余白部分に、その地域や場らしいコト・モノが入ることで、その店舗でしかできないひとのつながりを生み出していきたいと思い、ブランドリニューアルを行いました。
カレーという食事体験にもう1つ+α、その地域や店舗の場所ならではのモノやコトが入ると、つながりを生み出せるコンテンツが増えるだけでなく、一緒に場をつくるひととの取り組みも設計がしやすくなるんじゃないかと思っています。
-- 2023年4月から「6curry&sauna」(三島店)と「6curry&bar」(八重洲店)の2店舗をスタートしましたが、ゆくゆくは他の地域にも、というイメージでしょうか。
そうですね。全国に広げて行けたらと思っています。
僕がこの「6curry&」で実現したいことは、「帰ることができる場所(居場所)」が複数ある豊かさです。
ここまでにお話しした東京で育まれてきた「6curryらしさ」は、「自分らしくなれる居場所」でした。この良さを引き継いでいくことはもちろんですが、もう1つこの「帰ることができる場所」に対して想いには背景があります。
自分の話になりますが、6curryに参画する前の数年間 ECコンサルの仕事で全国各地を飛び回る傍ら、スパイスカレー好きをきっかけに全国を回って 8,000人以上の人とカレーを作る取り組みをしていました。この取り組みを通じて、僕自身がさまざまな地域の人とつながって、「帰ることのできる場所」ができたんです。
ここ数年はコロナでなかなか行けなくなってしまいましたが、それでもその場所が心の中にある状態って、すごく豊かなんですよね。そんな場所に6curry&がなっていけたらと思っています。
-- 東京の6curryを通じて知り合った方たちも、三島に来てくださるきっかけになったら嬉しいですし、三島でリスタートした6curryをきっかけに全国の皆さんと新たなコミュニティを育んでつながっていけたらとても楽しそうですね。
三島の人たちが、三島の中にある所属の場所だけじゃなく、ちょっと三島を出た先にも自分の居場所だと思える場所が複数あるみたいな状態をつくれたら、場所同士で多様なひとたちが循環して、何かおもしろいことが起きるんじゃないかなと期待しています。
それともう1つ、必ずしも頻繁に来店し続けてもらうことだけがゴールじゃないと思っているんですよ。
東京の6curryで実感したのは、メンバー同士がつながるとそれをきっかけに6curryの外側にも新しいコミュニティができていくこと。例えば、メンバー同士が自主的に集まって、「#6curry○○店」みたいに、○○に誰かの家の場所とかが入ったりするSNSの投稿をしてくれることも多くて。6curryはつながりのきっかけというか、インフラみたいな側面があると思っています。
今回のリスタートから「OB」という制度をつくったのも、6curryの店舗にくる頻度が減っても所属し続けられる仕組みがあることが、豊かさにつながるのではと思ったから。少しずつ、6curry&が「帰ることのできる場所」に近づいて行けたらと思っています。
この場所らしい、コミュニティの磨き方を目指して
-- 2023年4月に店舗運営をスタートしましたが、どのような所感をお持ちでしょうか?
クラウドファンディングを通じて約180名、さらに開店してから20人ほどの方がメンバーになってくださり、ありがたいことにたくさんの方にご来店いただいています。一日店長へのチャレンジはもちろん、部活動も少しずつ立ち上がり、これまで培ってきた6curryらしさを引き継いで前向きなスタートを切ることができました。
元々6curryはターゲットを絞らずに、本当に世代関係なく集まれる場所にしたいというのがあるんですが、絞らずともその地域らしさが出てきていることを実感しますね。LtG Startup Studio内にあるので、施設を利用してくれる人が活用してくれていることはもちろんですが、東京よりも営業時間をはやめたこともあり、子どもたちがきてくれたりもします。まずは、自然に集まってくれる人たちをこれからも大事にしたいです。
また、この地域だからこそ生まれるコラボレーションの可能性を実感する出来事も起きています。先日グリーンカレーを作った時に、市場に出ないようなお野菜を提供してくれた方がいて。東京では起きなかった「おすそ分け」で作ったカレーが生まれたりしているんですよね。今度僕も畑に行かせてもらう予定なので、新しいチャレンジのきっかけになったらいなと思っています。
今来てくれている人たちや、そこで生まれていることの中に新しいチャレンジを広げていくヒントがあると思っているので、目の前に来てくださっている人たちが求めているものをちゃんと言語化して、発掘して、表現していきたいですね。
-- 既に来店者の姿や出来事から、三島らしい店舗づくりのヒントが見えてきている点はとても面白いですね!コミュニティの在り方についても違いがありますか?
東京はそれぞれ知り合いがいない状態で来ることが殆どで、来店する人同士が必ず新しい出会いを得るというような構造だったのですが、現段階では三島店の場合は完全に個人で来る方はちょっと少なくて。
既にある程度小さくてもコミュニティを持っている人やつながっている人同士が、小集団で来ていることは特徴的だと感じます。
三島店の場合は6curry&自身を磨きつつ、6curryの外側にあるコミュニティに対しても僕ら側からアクションしていく取り組みもできると、まち全体で盛り上がっていくことに貢献できるんじゃないかなとワクワクしています。
もちろん、オープンデーなどを通じて1人で場に来てコミュニティに入っていくという方にも居心地の良い場になるように、より一層工夫していきたいと思います。多くの方にお会いできることを楽しみに、お待ちしています!
おわりに – 加和太建設が「コミュニティ」の仕掛けを探究し続ける理由
いかがでしたか?
建設会社としての使命を「まちの元気をつくる」ことと位置付けて事業を展開している私たち、加和太建設では、建設会社としてハードの部分に関わるまちづくりに携わる一方で、これまでも地域内のコミュニティの在り方を模索し、ソフトの領域でもまちへのアプローチを続けています。
出会い・共創の機会をつくり、まちのひとたちとも仲間となり、ともにまちの魅力を高めるための活動を増やしたいと、これまでにもハレノヒプロジェクト、みしま未来研究所、LtG Startup Studio、社屋の在り方など、コミュニティ醸成を組み込んだ仕掛けにチャレンジしてきました。
今回の「6curry&」での新たな挑戦を通じて、これまでとはまた違った地域へ踏み出すきっかけをつくり、地域内外のつながりを育み、多くのひとと共にまた新しいユニークなコミュニティを育んでいきたいと思っています。
これからの取り組みや思いは、加和太建設のnoteはもちろん、6curry&のnoteでも発信をしていきます。ぜひ、今後もご注目いただけたら嬉しいです。
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