小説の書き方講座①【時制】勝手に過去に行くんじゃない
中学生の頃までは、文字を読むことがそれほど好きではなかったのだが、文字を書くようになってから気が付くことが増えたので、それを少し言葉にしようと思う。
ありがたいことに思った以上の人に小説を読んでいただけて、個人的にはとてもうれしいのだが、こと小説を書くということにおいては、誰もができそうで、なかなか引き込むような書き方は難しい。とくに面白そうな言い回しは慣れるとできてきたりするものだが、その世界に没入させるという表現はなかなか簡単ではなかった。
そんな僕は小説を書くときに、どう書いていいかわからなかったためネットの海に漕ぎ出すと、天の文と地の文というものがあるという情報に出会った。
そこには天の文とは会話文。
地の文とはそれ以外。
そんな感じでざっくりとした説明があったのを覚えている。
そして多分多くの人が、天の文が得意であり、地の文で苦戦するのだと思う。もちろん、自分もそうだった。
特に自分が書いた小説が、旅小説ということもあり、異国の情景を文字で表現することには、かなりの意識を使った。そもそも日本の城とヨーロッパの城はイメージができても、インドの城なんて、普通ぱっと浮かぶものではない。
しかし人の心に残る場所はほとんどが天の文だというのだから、小説というのはまた複雑だ。そんな答えのないような芸術に、小説の書き方を学んでいない僕が、あえてメスを入れて説明してみる。だから、他の場所やサイトで説明されているものとは違っているかもしれないので、その点はご了承いただきたい。
天の文について
最初に小説を書いていてぶつかった点の一つが、「会話がただ連続する」ということだった。
「そうなんだ。それで美砂はどう思うの?」
「ウチ?ウチはそこまで嫌いじゃないけど。ダイキは?」
「俺も別に避けてるってわけではない。でもさ・・」
とにかく会話が続いていくだけで、だんだん自分でも、そろそろ会話文続きすぎじゃないかな。と焦ってしまう。
そんな時に知ったことが、間に地の文を入れるということだった。
「そうなんだ。それで美砂はどう思うの?」
僕はそう言って、彼女の方に視線を向けた。
「ウチ?ウチはそこまで嫌いじゃないけど。ダイキは?」
美砂がこちらを向いた瞬間に目が合うと、僕は小さな声で言った。
「俺も別に避けてるってわけではない。でもさ・・」
この文章を見ると、なるほど、それっぽくなってきたな。と思う方も増えるだろう。
ただ、この書き方には没入感を妨げる要素が存在している。
それが、時制。
僕が小説を書くときに一番意識したことの一つになる。
「そうなんだ。それで美砂はどう思うの?」
僕はそう言って、彼女の方に視線を向けた。
「ウチ?ウチはそこまで嫌いじゃないけど。ダイキは?」
美砂がこちらを向いた瞬間に目が合うと、僕は小さな声で言った。
「俺も別に避けてるってわけではない。でもさ・・」
「言った」という表現は過去形。
これはきっと人に対する話し方や説明の仕方としては適切なのだと思う。
山田のヤツさ、さりげなく小さい声でもうやめろって言ってたんだよ。
みたいにね。
この書き方だと、確かに状況は理解できるのに、時制が邪魔をしてなぜかあまり引き込まれない。
これは、漫画のコマ割りで言うと、空白のセリフがあるような感じにも似ている気がする。
この書き方は色んな小説を参考にして読んでいるとき、とてもよく見たもので、とてつもなく書きやすいから流行っている表現なのだとも思っている。でも実際に読むと、意味はわかるけどあまり文字の世界に閉じ込められることはない。
「そうなんだ。それで美砂はどう思うの?」
僕はそう言って、彼女の方に視線を向けた。
「ウチ?ウチはそこまで嫌いじゃないけど。ダイキは?」
美砂がこちらを向いた瞬間に目が合うと、僕は音を立てずに小さく息を吸いこんだ。
「俺も別に避けてるってわけではない。でもさ・・」
この表現が完璧だとは思ないけど、この書き方だと時制に違和感がないから没入感の邪魔にはならない。
これが僕が一番最初に、小説を書きながら気が付いた違和感だった。
言ったって書くけど、まだ言ってないよね?みたいな。だからわざわざ、読者の脳内では「何て言ったんだろう」という意識が生まれてしまう。
これは書き手がいつの間にか、描写から説明へと文章を変えてしまってるんだよね。
それは読み手の違和感につながっていく。
だって小さな声を出す前に、小さな声が出ることがわかるなんて、現実では絶対に起こらない現象なのだから。
だから、天の文の間に書く地の文。それはどんな表現でもいいが、なるべく時制から外れないように心掛ける。
これが天の文。俗にいう会話の中で読者を上手に没入感に閉じ込める書き方の一つになるんだなと、気が付いたというお話でした。
次回は時制を意識した文章の書き方についてもう少し詳しく書こうかな。
小説の書き方として正しいかわからないけど、文字の中に閉じ込めてしまう没入感のある文章の書き方についてもう少し別の記事で書いてみようと思う。
一応、千夜特急っていう旅小説を書いてるんだけど、現在だれでも無料で読めるから興味があれば読んでみてね!(Kindleunlimitedじゃなくていいよ)
ではではb
へぇ~、ちょっとおもろいやんって思った方は②もどうぞ!