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チンク・チンク・チンク 〜 アバルトさんもたくさん

 我ら夫婦のもとにフィアット500チンクエチェント 1.4 16V ラウンジ(色:英トロピカリア・イエロー/伊ジャッロ・ブリチーノ)がやってきて3年とちょっと。

 そもそも中古でかつ年式が古いこともあり、これまで何度かヘソを曲げて困らされることもあったが、それもまたイタリア車の愉しみ(笑)。日ごろから「チンクちゃん」と呼んでは、主に休日の買い物やドライブに活躍してもらっている。

 また、たまに見かけるよそのコ(我が家では「おともだチンク」と呼んでいる)も可愛くてしょうがなく、すれちがったり並走したりする時のサムズアップは基本中のキホンとして(これがまたチンクな皆さんはノリがいい)、出かける際には毎回「今日最初に出会うチンクは何色かゲーム」をしたり、ウイークデーの夜にもお互いにその日に出会った数を報告し合っては喜んでいる。「2チン、3アバ」とか(笑)。
 なおアバこと「アバルト」は、サソリのエンブレムでお馴染みの、(主に)フィアット車をベースとした(主に)走り屋ヽヽヽさんが好むクルマ。チンクよりほんの少しだけいかついので、我が家では「アバルトさん」と呼んでいる。

 さてウチのチンクちゃんだが、さる11月3日文化の日、12ヶ月点検でドック入りし、同じ1.4ラウンジの、英ボサノバ・ホワイト/伊ビアンコ・ビアンコ色のコを代車として借りたことは「つぶやき」もした。

 今回はその「代車ちゃん」での、翌振替休日の4日に、上記でも予告の遠出した先でのハナシ。

 三連休は数日前より「初日以外は好天に恵まれる」との予報だった。
 なので日帰りで昇仙峡に行こうかということになっていたのだが、前夜になって急遽、同じ山梨県でも道志みちから山中湖へ抜けようということになった。
 理由は以下、

  1. 昇仙峡の紅葉が、まだ真っ盛りではない模様。日本有数の紅葉の名勝を訪うには、ちょっともったいない

  2. 昇仙峡に行くのなら途上にある信玄餅の名店はマストだが、チンクちゃんを預けての帰路に、信玄餅と同じく黄粉と黒蜜で味わう「くず餅」を『船橋屋本店』でいただいてしまった(笑)

  3. 代車であれば、道志みちも心配ないだろう

 このうち、最も大きいのが「3.」。 
 実はウチのチンクちゃん、購入当初からタイミングベルトという駆動系の部品パーツの交換を推奨されてきたのだが、諸般の事情で見送ってきた。だがさすがに限界だろうということで、今回の点検に合わせて交換もすることになっていた。
 そしてこの「道志みち」というのは俺のような山道ワインディングロード好きにはたまらないものの、トラブったらえらいことになってしまう場所。実は3年前にたまたま走ってすこぶる楽しかったのだが、その数日後にバッテリーの交換騒ぎがあり、「あそこでダメにならなくてよかった」と胸を撫でおろした経験がある。
 ようするに万全な状態ではないチンクちゃんで道志みちに行くのは無謀だが、整備充分の代車であれば間違いはなかろうというハナシ。三連休直前の金曜夜に代車が用意できたと連絡があったのも何かの縁。チンクちゃんには治療と静養に専念してもらって、代車ちゃんに頑張ってもらおうというわけだ。

 これが素晴らしかった。

 さて、予報的中な深秋の青空の下A.M.9:30過ぎに家を出て、中央フリーウェイで右に見える競馬場左はビール工場からしばらくの石川PAでブランチ。相模湖東で降りてから休憩を挟みつつ、山道を堪能。
「なんかアバルトさん多いねえ。さすが道志みち、ここまででもう5アバだよ」
「そうねえ……あっ! チンク!!」
 などとワイワイしながら最初の目的地「道の駅 どうし」に到着し、お茶をし終わったのがP.M.1:30頃。

 ところでそのあとの予定。女房お気に入りの山中湖湖畔のアクセサリーショップに行くことは決めていたが、他には特になし。道の駅の物産店に女房を先に行かせ駐車場横の喫煙所でまたぞろ見つけた白のアバルトを眺めつつ「どーすっかなー。山中湖ぐるりヽヽヽはしたいよなあ」と一服しながら逡巡していたのだが、合流した彼女の言葉に色めき立った。
「ちょっと離れてるんだけど、このへんに3年ぐらい前に見つけてずっと行ってみたかった『キノコ王の店』っていうのがあるんだけど……」
 女房はiPadやiPhoneのGoogleマップで面白い場所を探す天才なのだ。
「キノコ王? なんだそりゃ」
「キノコ狩りの名人と呼ばれてた人の直売所。ご本人はもう亡くなっちゃったんだけど、お店はまだあるらしいのよね」
「そんなん、俺が行かなきゃならねえ店じゃん!」
 なにせこちとらキノコといえば食べるのもさることながら、昔取った杵柄で、野生のキノコを採取するのも大好物ときてる。キノコ王のお手並み拝見だぜということでさっそく「マップ」で調べたところ、ものの1時間程度の距離らしい。
 行くべ行くべとなったのだが、この時に少しでも早く着くためにと最短距離を選ばず、アクセサリーショップを外さず、湖畔ぐるりのルートを優先したことが大正解となる。

 アクセサリーショップを出て山中湖沿いを走ることしばし。連休中ゆえの渋滞に巻き込まれたのだが、これまでにも輪をかけてアバルトとすれちがう。
 最初のうちは「最近、都心部でもチンクよりアバルトが増えてるよね」とか「この陽気だし走り屋が集まってるんじゃないか」とか「別荘地だしお金持ちはアバルトさんなんじゃね」といった感じの会話をしていたのだが、山中湖から離れてもますますその数が増していくばかり。だんだんと二人して、漫画のようにクエスチョンマークが頭上を踊るようになった。
 なにせこれまでの最高記録は、主に世田谷区を走った際の「8チン、4アバ」。それがすでに「14アバ、5チン」となっており、さらに15、16、17と、私の人生暗かった勢いが止まらない。挙句に3台連なったアバルトとすれ違うに至り、さすがにふたりして、
「何かあるよこれ絶対」
 となった。

 女房がiPadで「何か」を検索をしている間にもその数は増え続け、ちょうど大きな交差点での信号待ちではす向かいヽヽヽヽヽに21台目のアバルトが認められた時。
「今日、フィアットとアバルトの全国オフラインミーティングっていうのがあったらしい」
「マジすかっ!? 会場は?」
「ちょうど今の、この近く」
「くぁwdrftgyふじこlp!!!」
(今気づいたが↑このネットスラングって、末尾に不二子とルパンがいるのね。フィアット500つながり)

「行ってみよう!!!

 冒険好きは二人とも。モテるんだなああくどく!!(声:広川太一郎先生)——というわけで胸の高鳴りを押さえつつ走ること約3分。会場入り口へと左折したとたん、思わず声が出た。
「クラシケチンク!!
 そう、ウチのコをはじめとする現行のチンクのみならず、クラシックなフィアット500(早い話がルパンのアレ)や同時代のアバルトたちが、まずは木立の向こうでお出迎えという驚愕の光景。
 目を見開いて徐行しているところに、駐車誘導担当の方から声がけをされた。
「参加ですか」
「いえ、たまたま近くにきて知ったんで、見学だけでもと。遠巻きに……」
「ですか——」
 一瞬の間のあと、
「もう終わる時間ですし、どうぞ」
「ありがとうございます!!!」
 これがP.M.3時頃。

 いやもうそこからは夢のような世界。いるわいるわ、色とりどりのチンクとアバルトさんたちが。
 あとから参加600台超と知ったが、その時間にはなるほど多数すれ違うわけだでかなりの数がお帰りになっていたものの、それでも今まで見たことのない圧倒的な台数。

手前が代車ちゃん

 唖然、呆然、愕然。いったいぜんたい何が起きているのだ我々にと、そうもなりますいたばしく。勝ってくるぞと板橋区……と思わず知らず広川先生風味になっているが、要はそれだけ混乱したというハナシ。

 なにせ最初ハナからここを目指して来たわけではない。

 この数日前からの「偶然」や「選択」そして「行動」、もっと言えばチンクちゃんが我が家ウチに来てからの「積み重ね」があって、「辿り着いた」のが眼前の風景なのだ。

「なんだかすごいね」
「感謝だね。ますます毎日を真面目に頑張るしかないね」
 30分弱の滞在だったが、新旧さまざまそして色とりどりのフィアットとアバルトを堪能し、キノコ王に向かいながらしみじみと語り合った。

 そして天然のキノコ汁、んまかった!!

 帰路の中央道は大渋滞だったが、その中でなぜか今度はアバルトさんではなく「おともだチンク」ばかりと並走することになり、例によってのサムズアップ&スマイルでノロノロに苛立つこともなく、
「やっぱチンクは最高だよなあ」
 と、あらためて噛み締めた次第だ。

 そして無事帰宅。赤星サッポロラガーでのどを潤しながらあらためてこの「All Japan FIATABARTH500 Meeting」について調べたところ、毎年春と秋に開催されており、春は〝我らが〟横浜との由。
 ぜひ次回は、万全の状態の「ウチのチンクちゃん」で正式に参加しようと思う。

 代車ちゃん、今回はありがとう。そしてドックで応援してくれてたチンクちゃん、これからもよろしくね。


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