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銃と宇宙 GUNS&UNIVERSE

2016年から活動しているセルパブSF雑誌『銃と宇宙 GUNS&UNIVERSE』のnote版です。
明るく楽しく激しい、セルフパブリッシング・エンターテインメント・SFマガジン。気鋭の作家が集まって…
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2020年9月の記事一覧

キャプテン・ラクトの宇宙船 第9話

  九 両親を助けに 「ええっ!」 「ほんとですか!」 「娘はどこに!」  艦長の言葉にみんな騒然となった。  ラクトの心臓がどくんどくんと高鳴った。  この言葉を、どれだけ聞きたかったことか。  この言葉を聞くために、どれだけ歯を食いしばってきたことか。  そんな気持ちが真っ直ぐ顔に出ていたのだろう。艦長はラクトを見つめてうなずいた。 「うむ。ラクト君には早く知らせずにすまないことをした。海賊船拿捕の時には、ある程度の話は上がってきていたのだが、まだ確証がなくてね。先ほど

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2-06. 何故怒っているんだろう?

 コンビニの手提げビニール袋には、宅飲み用の生ハムと、チーズが入っている。あーさんの大好物だ。 (寿命か……寿命が伸ばせたら、あーさんと漫画喫茶行ってゲームしてカラオケ行って旅行して……)  帰宅して、洋室の椅子に2人で座って乾杯した。 「セミナー行ってきてさ」  今日のことをかいつまんで話す。  そしていよいよ、寿命シャンプーの配合物質が、地球外技術なのか? それとも純地球産なのか? という点について語ろうと僕はした。でも、あーさんはそれを遮り、なぜかイラついた口調で

2-05. 寿命を伸ばすシャンプー

 あっという間に金曜日が来た。業務を午前中で終わらせ、僕は山手線に乗った。  向かったのは、東池袋のはずれにある公民館の一室。腐女子の集まる、いわゆる『乙女ロード』の付近だ。ここで、夜中のネットサーフィンで見つけた例の「人生ゲーム」が行われる。  6畳くらいの明るい一室で僕を出迎えたのは、ブルースーツとベストで身なりを決めた男性だった。髪が整髪料でしっかり整えられていた。「青木」と名乗った彼は、偶然、青いスーツに青木なので、(紳士服店か?)と思った。青木さんの他にも、ワン

2-04. コロンブスの卵ではない卵

 例えば接客業だったら、出勤したら「おはようございます」だと思う。でも、僕の職場には挨拶はあまり無かった。  「万里の長城」とあだ名される壁で、各ブースがぶどうの房のように区切られていた。  中国の本家「万里の長城」はそんな形だっけ? とも思うが、その壁は、職員同士のコミュニケーションを絶つためのもの。他の技術知識が交じると、判断に影響が出るから。  チェックすべき製品の情報は、上長から、手持ちのデバイスにデータとして送られてくる。コピーや閲覧には制限がかけられ、デバイ

キャプテン・ラクトの宇宙船 第8話

  八 ぎりぎりのぎりぎり 「ラクト、これほんとに減速足りてるのか? 進入路には速度制限があるんだぞ!」  海賊をふりはらって二日目。地球到着が目前となった〈はやぶさ〉のブリッジで、アライ二尉ははらはらしながら、ラクトの操船を見守っていた。  アライ二尉の目の前のホロウインドウに、これから入港する宇宙港と〈はやぶさ〉が表示されているのだが、航路も〈はやぶさ〉も赤く点滅している。全速力ですっ飛んできた〈はやぶさ〉は、姿勢を変え、メインエンジンを進行方向に向け減速しながら進入路

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