春よ来い
川瀬流水です。北但馬の香美(かみ)町村岡から、湯村温泉で有名な新温泉町へとつながる旧国道9号沿いに、「春来峠」(はるきとうげ)があります。
標高400メートル、但馬の原風景と言われる有数の豪雪地帯で、つづら折りの坂道が続き、古代より山陰道の難所として知られていましたが、新しい国道(春来トンネル)ができて、現在は静かな山里となっています。
峠を中心とする集落は、元々「椿村」と呼ばれていましたが、これが「春木村」となり、さらに「春が来るのを待つ」という意味に転化して「春来村」になったといわれています。
私は、この時季、マイカーで但馬を訪れる機会があれば、必ずこの峠を通ることにしています。
峠を越えて、下りにさしかかるとき、「春よ来い」と小さくつぶやきます。
この美しい響きが、言霊(ことだま)となって自分自身の心に染み込み、《この峠を越えられたら、もうちょっとだけ頑張ってみるかな》・・と勇気を与えてくれるような気がします。
春来峠の頂上附近に「そば処 春来 てっぺん」があります。
玄そば100%にこだわった香り高い手打ちの十割そば、をいただくことができます。車が必要ですが、旧国道を通られる際は、峠を越えたご褒美に、是非ご賞味いただければと思います。
神戸裏六甲の私の家の近くにも、少しづつ春がやって来ています。
近くの公園のソメイヨシノは、八分咲きとなり、春の先触れとして、その役目を果たしているようです。
私の家は、標高350メートルくらいで、神戸市立森林植物園の正門からそう遠くない位置にあります。そのせいか、庭には街中とは一味違った草花も姿を見せます。
アケビは、自生を確認してから、もう20年近くたちます。秋には、鈴なりの実がついて、スズメやヒヨドリなどの格好の餌になっています。
先月の終わりごろから、若芽が出始め、春の息吹を感じさせてくれます。
山椒もまた、自生を確認してから、15年近くたちます。樹高も、2メートルくらいになりました。
山椒の芳しい香りは、我々の意識を覚醒させ、爽やかな気分にさせてくれます。現在、若芽がすくすくと伸び始めています。
アジサイは、六甲山によく馴染む植物です。友人からいただいた株が、毎年きれいな花を咲かせてくれます。柔らかい色合いの若芽は、我々の気持ちを穏やかにしてくれる癒しの力をもっているようです。
私の家から歩いて20分くらいのところに、「弓削(ゆげ)牧場」があります。マイカーだと、神戸の都心三宮から新神戸トンネル経由、約30分で、山麓の緑の別世界に足を踏み入れることができます。
弓削牧場を訪れると、裏六甲山麓に春が訪れる気配を感じとることができます。ソメイヨシノや、タンポポ、色鮮やかなスイセンなどが咲き、牛がのどかな鳴き声をあげていました。
ホトケノザは、普通に目にする雑草ですが、牧場内の散策路周辺では、それらの群生した姿を見ることができます。
春の七草の「ほとけのざ」とは異なり、こちらは食べられませんが、丸く広がる葉のうえに咲く紫色の花は、蓮華座と仏さまの姿に似て、眺める私たちの心を穏やかに包んでくれるようです。
私が訪れたときには、牛舎の外でくつろぐ牛の親子を、見ることができました。子牛を気遣う母牛の姿に、しばらく写真を撮るのを忘れて、見とれてしまいました。
牧場では、「ヤルゴイ」と呼ばれるレストランがあり、食事をすることができます。
ヤルゴイは、モンゴルの牧草の花の名前です。極寒の冬を耐え、早春の草原に一面に咲く美しい花で、家畜はそれを食べて、春のパワーを身体いっぱいに蓄えるそうです。残念ながら、日本で咲かせることは困難とお伺いしました。
私は、ヤルゴイで、人気メニュー「地鶏のハーブ焼きとホエイシチュー」に、特製のミルク(Mサイズ)をつけて、いただきました。
メインディッシュ(写真左下)の地鶏は、ハーブの風味が効いたスパイシーな味付けで、それに特製チーズ(白色)が添えられて、とても美味しかったです。
また、チーズ製造時にできるホエイ(乳清)を使ったシチュー(写真右下)は、地鶏と地元野菜が煮込んであり、これまで味わったこのない濃厚な味で、美味しかったです。
今回は、春の訪れをテーマに取り上げました。
春は、新たな生命誕生の息吹が濃密に感じられるときであり、無条件に心が浮き立つときでもあります。
これからもずっと「春よ来い」と願う自分であり続けたいと思っています。
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