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ちゃんと面白かったし、充分ふさわしいと思った ~キャプテンアメリカ : ブレイブ・ニュー・ワールド~

 ハリソン・フォードがサディアス・ロス役で出ると知って驚いた。
 初めて観た「スターウォーズ」で、「なにこのニヤけた若い兄ちゃんは!」と5歳くらいの私にあまり良くない印象を持たれてしまった彼が、もう82歳。ハリウッドから完全引退を宣言しているではないか。
 映画人生最後となる作品だと言う。
 サディアス・ロスは、ずっと演じてきたウィリアム・ハートが3年前に亡くなってしまった。惜しまれるが、ハリソン・フォードが、長官から大統領になったその役を演じてくれるのならそれはそれで楽しみだ。
 主役だけじゃない周りの俳優や、演じるキャラクターの個性は、映画を楽しむ大事な要素の一つ。

 「キャプテンアメリカ」の名前は、マーベルを知らない人でも聞いたことくらいはあるのではないかしら。

 このシリーズは、初代キャップのスティーブ・ロジャースが「エンドゲーム」で引退している。
 二代目キャップは超人血清を打ったわけでもない、「スーパー」ではないヒーロー。

 二代目となったサム・ウィルソンが盾を引き継いでからのドラマ「ファルコン&ウィンターソルジャー」では、自分が「キャプテンアメリカ」にふさわしいのか、その辺りの葛藤が描かれている。
 人種問題を含めて、人々に受けいれられるのか。自分自身に問う自覚や責任。それはスクリーン越しに、演じるアンソニー・マッキーが観客に問いかけているようでもあった。

 ドラマの中で彼は、スティーブの親友でもあるバッキーと友情を育みながら、その覚悟を決めていく。
 ドラマは面白かったけど、さて映画はどうだろう。

 本当はちょっとだけ心配していた。
 「アベンジャーズ / エンドゲーム」が終わってからのMCU(マーベルシネマティックユニバース)作品は、期待値が高すぎるのか評価が分かれてしまっている。
 私は楽しんでいるんだけどなあ~! 


 キャプテンアメリカを引き継いだサム・ウィルソン。
 シリーズ二作目「キャプテンアメリカ ウィンターソルジャー」抜きには語れない。



 「On your left (左から失礼)」

 ジョギングでその場所を周回している時に、スティーブ・ロジャースが後ろから声をかけ、くり返しその人を追い抜かした。
 スティーブ・ロジャースは血清を打たれて強靭な体になってしまったから、人間にしては走るのが速い。なかなか疲れない。ダメージがあっても回復しやすい。

 その彼にあまりにくり返し追い抜かれるので「On your leftってもう言うなよ!」うるさーい! とばかりに言い返したのがサム・ウィルソン。
 走り終えた後に二人は声を交わす。

 そんな風に自分を対等に扱い、「昔がなつかしい?」「氷漬けだった感想は?」なんて率直に聞いてくるその人柄を、スティーブはあっという間に気に入ったのだろう。大親友を失い、氷漬けになった70年のために愛おしい女性との恋愛もかなわず、孤独感におしつぶされそうだったから。

 その後、あらゆる戦いや葛藤を経て、「アベンジャーズ / インフィニティウォー」がある。

 そこで人類の(宇宙じゅうの)半数が、サノスに消される。

 あの絶望感は忘れられない。
 そして私たちの生活で一年。
 MCU(マーベルシネマティックユニバース)の世界では5年。
 消された半数を取り戻すべく残った人たちで力を合わせて戦うのが「アベンジャーズ / エンドゲーム」。キャプテンアメリカがサノスと戦う様子に「どうしたら良いの」と、観ている側も再び絶望感におそわれた時。


 「On your left (左から失礼)」

 の声が聞こえた瞬間、熱狂しなかったMCUファンはいないだろう。

 サムは翼を与えられていて、ファルコンとして戦ってきた。スティーブと出会ってからはずっとその横で。
 消えてから復活の最初。空間に与えられたポータルからシュンと飛んでくる姿に、胸も頭も熱くなった。

 それからスティーブは、サムに盾を託す。これからのキャプテンアメリカとして。

 ドラマ「ファルコン&ウィンターソルジャー」ではその後の葛藤を経て、終盤に素晴らしいスピーチがある。サムの考え方、人柄を示すもので、キャプテンアメリカにふさわしいと思わせた言葉だった。

※ネタバレはありませんが、内容に少し触れています。


 今回もサムらしいスピーチがあって良かった。
 彼からは知性と気品が、態度や表情そして言葉からあふれている。

 サムは、スティーブとちがって、人間の力を超える腕力も治癒力もない。飛ぶ装置やドローンがあるのは特殊だけど。今回は小さなドローンが2機あったし、ワカンダの協力も得てスーツ全体がめっちゃ強くなっていた。
 最初のシーンで、どれくらい強いかを見せつけられ、ヒーローものの映画だなあーMCUらしいなあと思い知らされる。

 でもそこからは、「キャプテンアメリカ」シリーズらしく、クライムサスペンスものの要素があってハラハラさせられる。
 サムがすっかり葛藤を乗り越えているわけではないのもリアルだった。

 あと、ドラマ「ファルコン&ウィンターソルジャー」で登場したホアキンが可愛らしく、バディ感も楽しめる。

 他には「エターナルズ」のティアマットの存在、ブラックウィドウたちのその後など、ちゃんとMCUの世界はつながっているところも楽しめる。ちっちゃく声が出るほど息をのむ、うれしいシーンもあった。
 ハリソン・フォードは「ヒゲをそって別人みたい」といじられるも、その熱演は素晴らしかった。

 想像していたよりずっと面白くて、今後のMCUがどうなっていくか楽しみに思えた映画だった。


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かわせみ かせみ
読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。

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