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ゆっくりでも自分のペースで、よく頑張ってきたね

 ちょっと前に、息子が大学対抗の競技プログラミング、アジア大会に出た。
 競技プログラミング、普通は個人でのぞむものだけど、この大会は3人1組になって挑戦する。

 詳しいことは私にはよくわからない。とにかく夏に一度、国内予選を突破した者プラスαたちの合宿もあって、全国の大学生たちが集まったみたいだ。
 楽しかったと言うその様子を聞いて、とてもうれしかった。
 彼らの中には、日常生活とのバランスがうまく取れない人もいるし、何でもうまくこなせるオールラウンダータイプもいるそうだ。息子はやっぱりちょっと偏っているから、様々なタイプの人がいることを楽しんでいるようだった。

 今回の大会順位はふるわなかったみたい。でも初めて参加できただけで、きっとすごく豊かな経験になったと思うのよ。

 夫が大会を追いながら「うわあ。1位や2位の人たちのスピード、別格!」と楽しそうに驚いていた。夫は若い人たちが育つ様子がとても好き。
 例えば夫が50分くらいかかって解く問題を息子は10分くらいで解くそう。「上位の人たちは5分くらいで解くんだよ」夫が嬉しそうに話してくれる。

 皆が同じ部屋に集まっている様子がSNSで見れた。
 同じ大学生でも、もうおじさんみたいな人たちからまだ子供みたいな人たちがいて、その様々な個性の集まりに、眺めているだけで笑顔になる。

 その日の晩、普段まったくメールなど送ってこない息子から「無事に終わった」と連絡が来た。何時間も集中するなんて、私の生活にはほとんどないから、それだけですごいなーと思う。
 メールに写真がつけてあった。毎週参加するプログラミング大会の社長さんと写っている。
 なんて良い笑顔。
 とっても嬉しそうだ。

 あら楽しそうにしていて可愛いね。横にいる夫に思わず言う。スマホの写真を広げてその笑顔を確認すると嬉しくなっちゃう。

 息子が先輩たちと交流している様子は時々聞いていてわかる。良い成績が出ないとガッカリしてしまうのも想像できる。それでクサっちゃう時もあるだろう。でもほんの10年前まで大かんしゃくを起こすタイプだったから。そして5年前まで思春期真っ只中だったから。
 そんな息子が悔しがっても失望しても、ムキ―!! ってならずに、どうにか自分の中で折り合いつけているんだよな。先輩たちと「あーうまくいかなかったあ」「みんなすごいなあ」とか話しているのかな。

 1年生の時は、新型コロナのために授業はほとんどリモート。お互いの顔も知らず、授業にも張り合いがなかった様子。
 2年生になって、対面授業に。ようやくサークル活動にも参加するようになった。競技プログラミングのサークルに入り、でもそこでの集まりも、そこそこの参加ペースだったっぽい。
 でもずっと続けてはいたのだよね。

 他の地域から大学に来て、最初は知り合いもいなくて、情報も回ってこない。友人ができてもすごく気が合うわけでもない。ちょっとイライラしていた。多分当時は大学生の独特のムードみたいなものも嫌っていたんじゃないかな。夫も私も、大学は地元だったから、息子の視点を知り、そして過去のわが身の立ち位置を知る。
 でも息子は最初は熱心でなくてもサークルに参加するようになって、人と関わるようになって。
 3年生になってようやく少しずつ情報が入るようになったようだ。
 最近は先輩との関わりもできて、全国の大学生たちと交流もできて、楽しんでいる。やらなきゃならないのにためこむ時もあったり、億劫なこともあったりのようだけど、少しは頑張らなきゃと気持ちが前を向いているのかな。そんな風に見えている。

 ひとり暮らしだってよく頑張ってきたよ。遠い土地で知り合いもないのに一人で大学に行かなくちゃならなくなって、急に自分の生活に責任ができて。この前は目覚ましで何とか起きて大学に行ったのに、祝日だって気づいて帰ってきたんだよね。

 「よくやってるなあ」の思いが強くなり、その笑顔が愛おしくなる。親ってどうしてもバカになってしまうよなあと写真を広げて頬をゆるめる。
 ふと視界の端に、同じくスマホに写る息子を、もっと全力で広げている夫をとらえた。ムフフ。


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かわせみ かせみ
読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。

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