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まだ桜の咲いていない地域だけど、コートを出しながら春を感じ
3月半ばに、カウカウカウカウと白鳥が北に向かって行った鳴き声が聞こえた。
桜はまだだけど道路も庭も雪がすっかり消えて、ホッとする。雪が消えると今度は雑草にストレスを感じ始めるんだけどね。ちょっとため息をつきたくなる気持ちと、暖かくなってきて外を歩きやすく軽くなる気持ちとが入り混じる。
春のコートをそろそろ出そうと、取り外しできるキルティングの裏地をつけながら思い出していた。
昨年の春は五十肩が全盛期で、コートの脱ぎ着が今以上に辛く、今は当たり前にできているカバンを肩にかけたり下ろしたりする行為も苦労した。痛くて右腕を左肩に回せないのだ。
ステンカラーコートの方が私は好きなのだけど、トレンチコートも昔から持っていて、無難だし着ることが多い。トレンチコートの両肩には短く小さなベルトがついていて、カバンを肩にかけると引っかかる。
その日。
財布を出そうとした時にカバンの持ち手が、肩のベルトにしっかりと引っかかっているようで、左肩にかけていたカバンが全然下りてきてくれない。普段なら左肩をちょっと下げたらすとんとカバンが左の肘辺りまでずり落ちて、中を探れる。
でも左肩をどんなに下げてもカバンが動かないので、右腕を左肩に伸ばそうとするも痛くて届かない。左腕もまだ痛い頃でやっぱり届かない。
下りないし届かない。
どどどうしよう!
もう他に手段はなかった。
仕方なく私はコートを脱ぎ始めた。でも五十肩が痛くてさっさとスマートに脱げない。
もがく!
んああ~~早くこの時間、過ぎてくれ!!
セルフレジの前でいきなりコートを脱ぎ始める私はどんな姿だっただろうか。
それまで左肩をグーンと下げてみたり、右手を左肩に伸ばそうとしてみたり、挙句コートを脱ぎ始めて挙動不審だったに違いない。
あんなに苦労していた頃から一年ほど経った。
運転もカバンの上げ下ろしも特に引っかかりなくできている。まだまだ動かない範囲はあるけど、「ここが届く!」と感じる幸せをいちいち実感。
トレンチコートにカバンが引っかかったって今年は大丈夫だもんね。
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